疎植栽培法
疎植栽培とは
「手軽な省力・低コスト技術」
●疎植栽培は、株間を広げて栽植密度を下げる栽培法です。明確な定義はありませんが、慣行の株間15~18cmを24~28cmに広げて、栽植密度を㎡当たり12~14株(坪当たり40~45株)以下にする方法を示すことが多いようです。
●この方法で田植えをすると、必要な育苗箱数が40~50%少なくなり、生産コストや労働時間を削減することができます。
●田植機の機種により、株間の調節幅は異なりますが、機械の購入や改造の必要はなく、簡単に実行できる省力・低コスト技術です。
クボタ電農スクエア 「疎植のすすめ」より
「疎植栽培のメリット」
●種籾や育苗培土の購入費用を、半減することができます。
●苗を購入する場合には、苗代金が半減します。
●ハウス育苗では、ハウスの面積が半分で済む上、播種作業や水やりなどの管理作業を、大幅に削減することができます。
●田植えの際の苗運びや苗の充填回数が半減し、作業能率が向上します。
●収量や品質は慣行栽培と変わりません。倒伏や紋枯病などの病害虫の発生は、少なくなる傾向があります。
生育特性と栽培の実際
「生育特性」
●慣行栽培に比べて株は大きくなりますが、単位面積当たりの茎数は少なく、葉色が濃く推移して、秋まさり型のイネになります。最高分げつ期は7~10日程度、出穂、成熟期は1~2日程度遅くなります。
●穂数はやや少なくなりますが、1穂籾数が増加するため、単位面積当たり籾数は、慣行栽培よりわずかに少ない程度です(図1)。収量や玄米の外観品質は同程度で、食味に影響する玄米タンパク質含有率も、慣行と大きな差はありません。
●穂数が少なくなり過ぎると減収することがあり、1穂籾数が過剰に増加したり、穂肥時の葉色がかなり濃くなると、品質低下を招くことがあります。穂数を確保し、1穂籾数を過剰に増加させないことがポイントです。
図1 株間を15cmから25cmに広げた場合の穂数、籾数、収量
(6月20日植 ヒノヒカリ 2005、2007年平均 福岡農総試筑後 石塚ら)
●疎植栽培は、温暖でイネの初期生育が旺盛な西南暖地に適した方法ですが、品種や圃場条件を選べば、その他の地域でも可能です。
●品種は、各地域での中生品種が適しています。普通期栽培の「ヒノヒカリ」や、早期栽培の「コシヒカリ」での面積が拡大しています。
●生育期間が短い早生品種は、穂数不足による減収、晩生品種は、出穂遅延による登熟不良の恐れがあります。
「栽培上の注意」
●茎数や穂数が確保できる、水持ち良く地力が高い水田が適しています。
●穂数確保には、健苗を育成し、浅植えや植え痛み防止を心がけて、初期生育の確保に努めることが重要です。
●田植時期は、慣行と同じで問題ありません。遅植えでは生育期間が短くなり、茎数を確保しにくくなるので、㎡当たり14株程度にします。
●1株植付け本数は、慣行と同じで問題ありません。田植え直後は、株数が少ないので寂しく感じますが、1株植付け本数を増やすと分げつ過剰になり、過繁茂状態になってしまいます。3~4本植えが目標です。
●株間が広く日当たりが良いので、雑草が発生しやすくなります。きめ細かな水管理や除草剤の適期処理により、雑草の発生を抑えましょう。
●施肥法は、慣行と同様でかまいません。肥効調節型肥料を用いた1回全量施肥(一発施肥)や側条施肥栽培も可能です。
●穂肥時の葉色がかなり濃い場合には、1穂籾数が過剰になり、玄米タンパク質含有率が高まって品質が低下する恐れがあります。そのような場合には、穂肥を減量する必要があります。
●茎数が少なく最高分げつ期が遅くなるので、中干しは慣行よりも1週間程度遅く開始し、強く干し過ぎないことが重要です。中干し開始時期の目安は、株当たりの茎数が30本程度(㎡当たり茎数330~350本)です。
田中 浩平
福岡県農林水産部 経営技術支援課
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