提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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雑穀・山菜・その他

雑穀の栽培(直播、移植)について


 雑穀類の栽培は、従来、手作業を中心とした作業体系であり、大変手間がかかりました。
 最近は、農業機械を活用した作業体系により、今までよりも省力的で比較的規模の大きい雑穀栽培が可能になっています。
 ここでは、岩手県における雑穀類(ヒエ、アワ、キビ)の栽培・作業体系のうち、特に「移植栽培」を中心に紹介します。
畑に直に播種する「直播栽培」については、共通的な事項のみを記載し、作目ごとの詳細については、各作目の「栽培」の項目を参照してください。

畑地や水田転換畑での直播栽培体系【ヒエ、アワ、キビ】

「圃場選定および排水対策」
 ヒエは比較的土壌を選びませんが、アワやキビは多湿条件を嫌います。
 出芽率の向上や、梅雨時の除草作業が行いやすいよう排水のよい畑を選びましょう。
 特に、水田転換畑では、明きょや暗きょを施工するほか、心土破砕や弾丸暗渠なども組み合わせることで排水がよくなります。

「耕起」
 種子が小さい雑穀は、砕土率が低いと安定した苗立ちが確保できません。
 砕土率の向上は、播種精度の向上、安定した苗立ち確保(出芽率向上)、機械除草を行う際の除草精度の向上にもつながります。アップカットロータリ等の使用や、耕起から播種までの日数を置かないこと等にも留意しましょう。

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アップカットロータリー

畑地や水田転換畑での移植栽培体系【アワ、キビ】

 雑穀栽培においては、労働作業時間の大半を「除草」が占めます。雑穀の生産性を高めるためには除草作業の軽減が必要です。
 畑に直に播種する「直播栽培」では、耕起とともに雑草生育もスタートするので注意が必要です。
 雑穀は、イネ科植物であり、生育初期はノビエ等の同じイネ科の雑草と見分けがつきにくく、除草作業の際に判断に苦慮します。
 一方、「移植栽培」は、育苗管理する期間が必要になりますが、園芸用の移植機(半自動、全自動)が利用でき、間引き作業も必要なく、何より雑草との生育差を利用して、機械除草を効率的に行うことができ、除草労力の大幅な軽減が期待できます。

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レーキ式条間・株間除草機(左)とロータリーカルチ(右)

「育苗」
 園芸用育苗培土を入れた200穴セルトレイに1穴あたり3~4粒程度播種し、ビニールハウス内で約20日間程度育苗すると移植機で移植できる苗が得られます。

「移植作業」
 畦間は作業機に応じて60~70cmに、株間は15~20cm程度とします。移植には園芸用の半自動移植機などが使用できるほか、岩手県では水稲用のポット苗田植機を利用した移植栽培にも取り組んでいます。
 ポット苗田植機を利用するには、移植爪や苗の押出し座等の部品の改良が必要ですが、水稲で使用している田植機を畑でも使用することができるので、移植機械の導入コストが低減できます。
(岩手県農業研究センター平成28年度試験研究成果:「乗用型ポット苗田植機を用いた雑穀の機械移植技術」)
 詳細は、岩手県農業研究センターHPをご覧ください。

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乗用型ポット苗田植機

「移植後の管理」
 中耕培土等の中間管理作業や収穫作業、乾燥調製作業などは「直播栽培体系」に準じて行います(各作目の「栽培」の項目を参照してください)。

水田における湛水移植栽培体系【ヒエ】

 ヒエは、水田転換畑など畑地で栽培されるほか、岩手県では水稲と同様に「水田移植栽培」も行われています。

「育苗」
 水稲用育苗箱に水稲用人工培土を入れ、灌水後、風選済みの充実した種子(種子消毒、浸種、催芽は不要)を育苗箱1箱あたり20g(乾燥種子)を厚播きにならないよう播種して覆土します。育苗はビニールハウス内で行いますが、ヒエは水稲に比べて茎葉が伸びやすい一方、マット形成が不十分になりやすいので、水稲よりやや低めの温度管理とします。
 概ね25日程度でマット形成の良い苗になります。

「移植」
 水稲と同様に田植え機で移植します。徒長苗(草丈20cm以上)や老化苗(黄化苗)は植痛みが多くなりますので注意しましょう。

「雑草管理」
 動力付き歩行型(乗用型)除草機を用いて、移植後3~6週間後頃にガス抜きを兼ねて1~2回程度、除草作業を行います。
 除草剤を使用する場合は、「ヒエ(水田移植栽培)」に登録のある薬剤をラベルの記載内容にしたがって正しく使用しましょう。

「収穫」
 短稈品種は自脱型コンバインが利用できますが、稈長が130cmを超える品種では、普通型コンバインやバインダー等を使用します。

執筆者
岩手県農業研究センター県北農業研究所(作物研究室)
長谷川 聡

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