薬用植物解説【1】
薬用植物に注目が集まっています
健康に対する意識の高まりなどを背景に、漢方製剤などの市場規模は拡大傾向で推移しています。
原料の生薬は、おもに中国からの輸入に頼っていますが、価格の高騰や生産国の輸出規制などにより、必要量の確保が厳しくなってきています。このため、薬用作物の産地化に向けた会議や栽培講習会が全国各地で開催されるなど、国内生産に向けた動きが活発化しています。
ここでは、おもな生薬を写真とともに紹介します。
シャクヤク(ボタン科)
(生薬名)シャクヤク(芍薬)
(利用部位)根
●効用、用途等
生薬シャクヤクは特異なにおいがあり、初めわずかに甘く、後に渋くてわずかに苦い味がします。
第17改正日本薬局方では、ペオニフロリンを2.0%以上含むことが規定されています。
鎮痛、鎮けい、消炎、排膿作用があり、婦人病や冷え性に処方される漢方薬である当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、四物湯(しもつとう)、七物降下湯(しちもつこうかとう)など多くの漢方処方に使用される他、医薬品原料として利用されています。
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ウスバサイシン(ウマノスズクサ科)
(生薬名)サイシン(細辛)
(利用部位)根及び根茎
提供 :薬用植物総合情報データベース
●効用、用途等
生薬サイシンは特異なにおいがあり、噛むと味は辛く舌をやや麻痺させます。
第17改正日本薬局方では、精油0.6ml/30g以上含むことが規定されています。
葉、花、新芽には腎機能に障害を及ぼすアリストロキア酸を含むため、除去しなければなりません。
鎮咳、去痰、鎮痛作用があり、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などの漢方処方に配合されます。
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ウラルカンゾウ(マメ科)
(生薬名)カンゾウ(甘草)
(利用部位)根、ストロン(匍伏茎)
●効用、用途等
生薬カンゾウは特異な弱いにおいがあり、甘い味がします。
第17改正日本薬局方では、グリチルリチン酸を2.0%以上含むことが規定されています。
消炎、緩和などの作用があり、小柴胡湯(しょうさいことう)、甘草湯(かんぞうとう)、葛根湯(かっこんとう)等、現在日本で使用される漢方処方の70%に配合されるほか、医薬品、グリチルリチン酸原料や、漬物・菓子・タバコ等々の甘味原料として利用されています。
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ゲンノショウコ(フウロソウ科)
(生薬名)ゲンノショウコ
(利用部位)地上部
●効用、用途等
生薬ゲンノショウコは特異なにおいがあり、渋い味がします。
タンニンを多く含み、下痢止め薬、整腸薬として単味で煎じ薬として利用され、漢方処方での使用はありません。民間薬として古くから各家庭で利用されてきました。
収穫は、開花初期の7月下旬~8月中旬に地上部を刈り取り、1~2日畑に広げて日に干した後、束ねて風通しの良い所で吊るして陰干しします。
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オタネニンジン(ウコギ科)
(生薬名)ニンジン(人参)
(利用部位)根(細根を除いたもの、または軽く湯通ししたもの)
●効用、用途等
生薬ニンジンは特異なにおいがあり、初めわずかに甘く、後にやや苦い味がします。
第17改正日本薬局方ではギンセノシドRg1を0.10%以上、ギンセノシドRb1を0.20%以上含むことが規定されています。
健胃、強壮、強精、新陳代謝促進作用があり、小柴胡湯(しょうさいことう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの漢方処方に配合されるほか、医薬品原料および健康食品として利用されています。
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ウイキョウ(セリ科)
(生薬名)ウイキョウ(茴香)
(利用部位)果実(分果)
●効用、用途等
生薬ウイキョウは、特異なにおいおよび味があります。
第17改正日本薬局方では、アネトールを主成分とする芳香性の精油を0.7mL/50g以上含むことが規定されています。精油およびアネトール含量は、暖地で栽培するほど高くなる傾向が認められています。緑色を帯び香りが強く、やや甘味のあるものが良品とされています。
芳香性健胃薬として、安中散(あんちゅうさん)、丁香柿蒂湯(ちょうこうしていとう)、などの漢方処方に配合されるほか、胃腸薬などの医薬品原料、香辛料(フェンネル)として利用されています。
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キバナオウギ(マメ科)
(生薬名)オウギ(黄耆)
(利用部位)根
提供 :薬用植物総合情報データベース
●効用、用途等
生薬オウギは第17改正日本薬局方に収載されており、 味は甘く、特異な弱いにおいがあります。
質は緻密で柔軟性があり、香気が高く、主根が良く発達し分枝根の少ないものが良品として市場で好まれます。
強壮、止汗、利尿などの作用があり、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの漢方処方に配合されます。
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ホソバオケラ(キク科)
(生薬名)ソウジュツ(蒼朮)
(利用部位)根茎
●効用、用途等
生薬ソウジュツは特異なにおいがあり、味はわずかに苦く、生薬の表面に白色綿状の結晶を析出するものが良品とされています。
第17改正日本薬局方ではヒネソール、β-オイデスモールを含む精油を0.7mL/50g以上含むことが規定されています。
利尿、発汗、鎮痛などの作用があり、利尿薬、健胃消化薬、止瀉整腸薬として、胃苓湯(いれいとう)、桂枝越婢湯(けいしえっぴとう)、香砂養胃湯(こうしゃよういとう)、二朮湯、(にじゅつとう)など、多くの漢方処方に配合されています。
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トウキ(セリ科)
(生薬名)トウキ(当帰)
(利用部位)根
●効用、用途等
生薬トウキは、第17改正日本薬局方に収載されています。
特異なにおいがあって、わずかに甘く、後にやや辛い味がします。
強壮、鎮静、鎮痛、血液の循環改善などの作用があり、婦人薬として貧血症、腹痛、生理不順、更年期障害等に用いられ、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、七物降下湯(しちもつこうかとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)など多くの漢方処方に配合されるほか、医薬品原料または浴湯剤として利用されます。
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カノコソウ(オミナエシ科)
(生薬名)カノコソウ(吉草根)
(利用部位)根及び根茎
提供 :薬用植物総合情報データベース
●効用、用途等
生薬カノコソウは強い特異なにおいがあり、わずかに苦い味がします。
第17改正日本薬局方に収載され、精油を0.3mL/50g以上含むことが規定されています。
鎮静作用があり、医薬品原料として用いられ、漢方処方には使用されません。
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センキュウ(セリ科)
(生薬名)センキュウ(川芎)
(利用部位)根茎
提供 :薬用植物総合情報データベース
●効用、用途等
生薬センキュウは第17改正日本薬局方に収載されています。
特異なにおいがあり、わずかに苦い味がします。
補血、強壮、鎮静、鎮痛などの作用があり、婦人薬として、冷え症、皮膚疾患および消炎排膿等に用いられ、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、七物降下湯(しちもつこうかとう)、 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)、四物湯(しもつとう)など多くの漢方処方に配合される他、医薬品原料または浴湯剤として利用されます。
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オウレン(キンポウゲ科)
(生薬名)オウレン(黄連)
(利用部位)根茎
●効用、用途等
生薬オウレンは弱いにおいがあり、味は極めて苦く残留性で、唾液を黄色に染めます。
第17改正日本薬局方に収載され、活性成分のベルベリンを4.2%以上含むことが規定されています。
健胃、止瀉、整腸、止血などの作用があり、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)など多くの漢方処方に配合されるほか、止瀉薬、苦味健胃薬として配合剤(胃腸薬)の原料として利用されます。
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