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雑穀・山菜・その他

アイコ(ミヤマイラクサ)

由来と特徴

●和名がミヤマイラクサのイラクサ科ムカゴイラクサ属の宿根草で、全国の山地の谷間や林床に自生します。
●東北地方ではアイコの名称が一般的です。
●形状が似ている植物に、食用にしないイラクサ(和名)がありますが、イラクサはイラクサ属で葉が対生、アイコ(ミヤマイラクサ)はムカゴイラクサ属で互生するため区別できます。同じ属の食用にしないムカゴイラクサ(和名)は葉腋にムカゴが着生すること、葉は互生しますが、葉の形状がやや異なることから区別することができます。
●雌雄同種の植物で、雌花序は株の上部に、雄花序は株のやや下方の葉腋に形成されます。外観からは花序の上部に雌花が、下部に雄花が着生しているように見えます。山形県では8月上旬頃に開花し、10月に種子が稔実します。

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開花中のアイコ(撮影地:最上産地研究室)

●生育が進んだ茎に着生する刺毛に触れると、痛みやかゆみを感じますが、加熱調理すると、ほとんどなくなります。この原因は、刺毛から分泌される蟻酸やヒスタミンなどといわれています。
●種子には休眠があって、一般には、自然の低温に遭遇した後、春になってから発芽を開始します。
●茎は、生育が進むにつれて木質化し、草丈は100cm程度まで伸張し、自生地ではブッシュ状になります。
●自生地による系統の差異はほとんどありません。
●日照条件は、直射日光があたらない木陰などが適しています。
●おひたし、油炒めや和え物などに料理されます。くせのない食味のため、山形県では、とても人気のある山菜です。
●種苗の入手は、既存の栽培者から直接導入する方法のみになります。
●宿根性の山菜ゆえに雑草対策がポイントです。自生地の環境条件を考慮しながら創意工夫してください。

増殖方法と育苗

●増殖は、実生、挿し芽、株分けの3とおりの方法があります。
●大量増殖には実生繁殖が適します。
●実生繁殖では3年、株分けや挿し木繁殖では2年の養成が必要です。

「実生繁殖」
●種子が稔実する時期は、山形県では10月下旬です。
●種子が飛散する直前に採取し、ただちに播種します。種子が過乾燥すると発芽率が極端に低下します。未熟気味の種子(青みが残る種子)でも十分発芽します。
●播種後、自然の低温を受け、地温が上昇する翌年の春に発芽をはじめます。
●種子を保存する場合は、0~5℃の冷蔵庫で乾燥しないように密封します。保存期間が30日以上になると種子の休眠がなくなります。休眠が覚醒すると低温でも発芽しやすくなるので注意が必要です。
●播種床は翌年度の管理作業を考慮し、日陰の圃場を選びましょう。
●播種床には、あらかじめ、堆肥を1a当たり150kg、基肥として、チッソ成分で1.5kgの有機質肥料を施用して準備します。
●播種は条播し、間隔は10cm、ベッド幅は作業性を考慮し、100cmが一般的です。
●本畑1a当たりに必要な苗床の面積は3㎡程度です。
●播種後は種子が隠れる程度に覆土し、軽く鎮圧後、播種床が乾燥しないように日除け資材で被覆します。
●この状態で越冬し、翌年の6月上・中旬に、チッソ成分で1.5kgの有機質肥料を追肥します。
●翌春、発芽後に株間5cmに間引きます。間引いた株は補植用として活用できます。
●育苗圃が日向の場合は、遮光率70%程度の資材で日除けします。夏期に苗圃が乾燥する場合はかん水が必須です。
●定植時期は通常は10月です。翌春になる場合は早春に定植してください。

「株分けの場合」
●株元に多くの芽を形成します。そのため、多くの苗を確保することができます。
●1株に5個程度に芽が着いた状態になるように分割してください。1芽分割も可能ですが、さらに1年間の株養成が必要になります。
●定植時期は10月が基本ですが、翌春になる場合は早春に作業を行ってください。

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萌芽直後のアイコ(撮影地:最上産地研究室)

定植・定植後の管理

●定植圃場は、排水が良いことが前提です。堆肥を1a当たり400kg以上施用して、土づくりを行ないます。
●弱光化でも良く生育します。夏季に高温で乾燥しやすい地域では、遮光率70%程度の資材で日除けを行います。ただし、夏季冷涼な中山間地域では遮光は必要がありません。
●遮光が強すぎると雑草は繁茂しにくくなりますが、茎立ち数の減少など、生育は、逆に不良になる傾向があります。
●施肥は、基肥と追肥を合わせて、窒素成分で1a当たり2kg程度を施します。
●栽植距離は、うね幅100~120cm、株間20~30cm、1~2条植えです。
●定植後は、随時、除草が必要です。

2年目以降の管理

●有機質肥料中心に、窒素成分で1a当たり2kgを施用します。
●収穫後、雑草防止と乾燥防止のために、毎年、切り藁をうねの上に敷きます。切り藁がない場合は、完熟堆肥を代わりに使用することができます。この場合、施肥は必要がありません。
●圃場が乾燥した場合は、かん水が必要です。
●連作の可否についての情報はほとんどありません。

収穫

●定植2年目の春から収穫することができます。
●収穫は、伸びた若芽が20~30cm、本葉2~3枚が適期です。収穫期間は、やや遮光を強くすると葉の展開が遅くなり、充実したものを収穫することができます。

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収穫期のアイコ(撮影地:最上産地研究室)

●充実した株からは、収穫につれ、次々と芽が伸長してきます。株当たり2、3本を残すと、次年度も収穫を継続することができます。
●はさみ等で収穫し、100~300gに結束して出荷します。
●収量は、株養成の程度によって異なりますが、おおむね1a当たりで50kgです。

早熟栽培

●早熟栽培は、秋に掘り上げた株を、プラントバットなどに植え込んで、そのまま露地で管理し、保温、加温を行って早出しする方法です。
●使用する株は、大株(300g以上)を使用します。芽を欠かないよう、ていねいに作業をしてください。
●株間を充填する目土に肥料分は必要ありません。⽔分保持が主な⽬的です。
●保温、加温開始時期は、山形県では1月中旬以降です。
●寒冷地では低温障害を受けやすくなります。パイプハウス等の施設内において、カーテンやトンネルで保温します。保温のめやすは、夜温で5℃以上です。
●昼温は20℃をめやすに温度管理してください。
●約3週間後に収穫が可能です。
●早熟に使用した株は再生(再株養成)が難しいため、最後まで収穫してください。

病害虫防除

●多少病害虫が発生しますが、経済的防除は必要がない水準です。

執筆者
公益財団法人 やまがた農業支援センター
阿部 清

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