青ミズ(ヤマ トキホコリ)
由来と特徴
●青ミズは、イラクサ科ウワバミソウ属の「ヤマ トキホコリ」です。植物名の「アオミズ(和名)」もあるので注意してください。
●山間地の日陰の湿地に群生し、春に地下茎から新芽が伸び、斜立して草丈が20~30cmになります。
●夏から秋にかけて、球形花序が葉腋にできます。赤ミズ(ウワバミソウ)のように肉芽はできません。
●晩秋になると地上部の茎葉が枯れ、地下部には新芽を形成して冬季の休眠に入り、他の山菜同様に低温で打破されます。
●食用にする部分は茎で、利用期間は5月から7月までと、他の山菜よりやや長く楽しむことができます。赤ミズは、収穫期後半になると皮をむいて利用されますが、青ミズは7月になっても茎は軟らかく、おひたしや和え物、鍋物、漬物などに利用されています。
●山形県では、赤ミズに比べ自生地が少ないために珍重されますが、直売所以外での販売実績は、ほとんどありません。
●自生地の系統により、生育量や出芽の早晩、分枝の発生、茎葉の色の濃淡等に変異があります。
●栽培に適した特性としては、生育が旺盛で、茎葉の色が濃く、分枝の発生が少ない系統を選ぶようにします。
左 :青ミズ系統 / 右 :青ミズ分枝系統(左右ともに 撮影地:山形県最上産地研究室)
●宿根性の山菜のため、雑草対策が重要です。自生地の環境条件を考慮しながら、創意工夫してください。
繁殖方法
●青ミズは茎伏せで繁殖します。茎伏せは生育中の茎を地中に埋めることにより、節の部分から発根、出芽する性質を利用した方法です。
青ミズの茎伏せ(撮影地:山形県最上産地研究室)
●母株となる茎は、山形県では6月下旬に栽培圃場や自生地から採取します。採取時期が早すぎると、茎の充実不足から出芽率が低くなります(緑枝挿しと同じ理由)。
●採取する母茎は、茎の長さが12cm、1本の重さは2.5gが目安です。茎伏せでは、翌年の6月まで、1本の母茎から8~10本の苗が得られます。
●採取した母株は、ただちに育苗箱や露地圃場に約5cm間隔で横に並べ、2~3cmの厚さに覆土します。乾燥すると出芽率が低下するので、たっぷりかん水し、敷きわらを行います。高温と乾燥を嫌うので、育苗する露地圃場や育苗箱は、70%程度の遮光資材で日除けを行い、時々かん水をします。
●約1か月で出芽してきます。出芽後は、生育を促すために8月下旬までの間に、薄い液肥を2~3回程度施用します。遮光資材は、山形県の場合は日射が弱まる9月下旬に取り除きます。
●露地圃場で育苗した場合は、茎伏せした当年秋に、茎の長さが40~50cmとなります。雑草が少ない場合は、そのまま栽培を継続することも可能です。
定植
●直射日光と土壌の乾燥を嫌うため、栽培圃場は遮光施設が必要です。使用する遮光資材は遮光率70%程度のものです。そのため、圃場は保水性が高く排水が良好な場所が適します。完熟堆肥や腐葉土を施用して土壌の物理性を改善してください。
●基肥は窒素、リン酸、カリとも成分量で1a当たり1kg程度です。堆肥や基肥の施用は、定植の10日以上前に行い、肥料や堆肥を十分になじませておくことがポイントです。
●定植は、茎伏せを行った翌年の6月に行います。
●定植する苗は、育苗箱や育苗圃場から株を掘り上げ、根を付けて分割したものを用います。
●栽植密度は、株間20~25cm、条間20~25cmです。赤ミズ(ウワバミソウ)と同様の栽植距離になります。
1年目の栽培管理
●定植後は、圃場の表面が乾燥しないようにかん水を行います。ミストタイプのかん水装置を利用して、晴天日の午前中に、茎葉の上から散水します。とくに夏の高温期は、茎葉をぬらすことで植物体の温度を下げ、生育の停滞を防止する効果もあります。
●茎葉が繁茂すると雑草の発生は少なくなりますが、大きな草は手で抜き取るようにします。
●追肥は、定植1か月後と夏の高温期を過ぎて気温が低下し始める8月下旬の2回、それぞれ1a当たり窒素成分で0.2kgを茎葉の上から施用して、ただちに散水を行います。
青ミズの生育状況(撮影地:山形県最上産地研究室)
公益財団法人 やまがた農業支援センター
阿部 清
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