スマート農業編 ドローン(センシング作業)
- 技術の概要
- 技術導入のメリットとデメリット
- 飛行前の確認事項 「法律など」「申請などの手続き」
- 使用するカメラと機能
- 飛行
- 撮影方法
- 撮影データの整理
- 使用例 「俯瞰」「三次元計測」「マルチスペクトル」
- 留意すべき点
技術の概要
「ドローンとは」
広義では無人で自動または自律動作ができる、もしくは遠隔操作可能な機体全般を指します。したがって、空中とは限らず、地上や水中であってもドローンと呼びます。ここでは、狭義のドローンとして無人マルチコプタをドローンと呼ぶこととします。
「水稲作におけるドローンの利用形態」
○資材散布作業
散布作業(農薬(病害虫防除)、肥料(追肥)、種子(湛水直播)など)は、資材を運搬散布することから、大型(1m超)の機体が用いられるのが普通です。
○センシング作業
センシング作業(生育ムラ、葉色、倒伏状態、草高等を空中写真から把握)では、小型(数10cm)の機体から中型(1m弱)の機体を用いることが多いです。
技術導入のメリットとデメリット
「メリット」
●目視による見回りでは見えなかった圃場全体を俯瞰した姿で把握でき、くまなく圃場全体を歩いて確認するのと比べれば、非常に短時間で観測可能です。
●ドローンに特殊なセンサーを搭載した場合、人間の目では見えないものを計測することもできます。
「デメリット」
●地上で人間が目視するのと全く同じように(例えば、任意の葉の裏まで見る等)観察することはできません。
●ドローンは風雨に弱いため、天候が悪い時には飛行できません。
「導入効果」
●コストに関しては、ドローンが観測可能な精度で見回りの代替が十分可能と判断できる場合は、大幅な労働力削減になります。
●人間の目では把握できなかったような情報を特殊なセンサーを用いて計測する場合は、従来無かったコストがかかることになるため、得られた情報をもとに作業が効率化されることによる経費削減、もしくは生産物の増収等による利益向上で回収できるかどうかが損益分岐となります。
飛行前の確認事項 「法律など」「申請などの手続き」
「法律など」
●ドローンの飛行には、航空法(※1)が適用されます。
●令和2年6月にドローンの機体登録制度(※2)が公布され、令和4年6月20日から施行されたことにより、100g以上のドローンに機体登録義務が発生しました。機体登録の義務を怠ると、50万円以下の罰金または1年以下の懲役が課されます。なお、登録記号は機体重量に応じた大きさ以上で本体に表示しておく必要があります。バッテリーやアームなど本体から分離する部分(しやすいパーツも含む)では認められません。
●さらにリモートID装置の取り付けが義務となりました。ただし、令和4年6月19日までに事前登録を行っていれば、3年間の取り付け猶予があります。
※1 航空法では、100g以上の無人飛行機に下記の飛行ルールがあります。
●飛行禁止区域(空港周辺、150m以上の上空、DID(人口集中地区)、緊急用務空域)では、国土交通大臣による許可が必要です。
●国の重要な施設等の周辺、外国公館の周辺、防衛関係施設の周辺、原子力事業所の周辺も、小型無人機等飛行禁止法により飛行禁止区域に追加されました
●規制緩和などにより、点検等を行う施設から30m以内を飛行する場合は、150m以上の上空での許可申請が不要になるなどの変更が行われました。
●飛行空域を問わず順守する必要があるルールとして、以下のものが決められており、⑤~⑩の方法によらずに飛行させたい場合は、国土交通大臣による承認が必要です。
①アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
②飛行前確認を行うこと
③航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
④他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
⑤日中(日出から日没まで)に飛行させること
⑥目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
⑦人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
⑧祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
⑨爆発物など危険物を輸送しないこと
⑩無人航空機から物を投下しないこと
ただし、十分な強度を有する紐等(30m以下)で係留し、第三者の立ち入り管理等の措置を講じた場合、⑤⑥⑦⑩およびDIDでの飛行に許可・承認を得る必要がなくなりました。
(以下、筆者註)
●民有地の上空を飛行する場合には民法が関係し、河川の場合は河川法、離発着に公道を使用する場合は道路交通法なども関係します。
●たとえば、土地の所有権は、民法の規定上は土地の上空にも及ぶとされているため、ドローンが無断で第三者の所有地上空を飛行すると、権利を侵害したと判断される可能性があります(所有権を侵害された人が具体的にどのような損害が発生したか明示するのは難しいため裁判になる可能性は低いですが、トラブルを回避するためには事前の承諾を得ておくことが好ましいといえます)。
●その他にも、電波法、プライバシー関連法、廃棄物処理法、海岸法、港湾法など多くの関連する法律があります。地方ごとに条例などが制定されている場合もあるので、注意が必要です。
●また、義務ではありませんが、万が一のことを考え、事故発生時の連絡先なども、事前に調べておくことが大切です。
※2 機体登録制度の内容は、以下の通りです。
●所有者は、氏名・住所等や機体の情報を国土交通大臣に申請
●国土交通大臣は安全が損なわれるおそれがある無人航空機の登録を拒否可能
登録した機体については登録番号を通知
●無人航空機は登録を受け、かつ、登録番号を表示等しなければ飛行禁止
●安全上の問題が生じた無人航空機に対し、国土交通大臣が是正命令
●登録事項変更時の変更届出、登録の更新、不正時の取消等の制度を整備
登録される内容は、現時点(2022年10月)では以下の通りです。
●無人航空機の種類、型式、製造者、製造番号
●所有者/使用者の氏名又は名称及び住所
●登録年月日
●その他
「申請などの手続き」
●夜間や目視外、第三者物件(電柱や電線なども第三者物件に該当)から30m確保できない飛行を行う場合は、許可・承認が必要です。
●これらの許可・承認手続きは、申請書の郵送や持参でも可能ですが、現在はDIPS(ドローン情報基盤システム)によるオンライン申請が可能です(2022年10月現在)。
●項目によっては、最大1年間の包括申請が可能となっています。
●以前必要であった許可・承認を受けた場合の3カ月ごとの飛行実績の報告は、2021年4月1日以降、不要となりました。
●ただし、飛行実績の作成・管理は、飛行マニュアルに従い、今後も継続して実施する必要があります。
●航空法以外の関係法律のチェックや、地権者の事前の承認、緊急連絡先の確認なども行います。
使用するカメラと機能
●センシングに用いられるドローンは、センサーやカメラが搭載されているものを用いるのが一般的ですが、他のメーカーのセンサー等を搭載して行うこともあります。
●ドローンによるセンシングは、センサーを用いて次のような計測を行います。
1.標準的なカメラ(可視光センサー)による観測(対象:生育ムラ、葉色など)
●可視光情報のみで希望の情報が得られる場合、多くのドローン本体に搭載されたカメラを使います。
●上空から俯瞰するだけでも、今までに見えなかったものが見えてくることがあります。特に、大区画圃場の中央部を人が圃場内に入らずに確認するのは難しいですが、ドローンであれば侵入せずに確認できます。
2.標準的なカメラ(可視光センサー)による三次元計測(対象:草高、倒伏など)・3.特殊なセンサー(非可視領域)による観測(対象:生育ムラ、病害虫など)
●三次元計測に、特殊なカメラやセンサーは必要ありません。ふつうの(可視光のみを撮影する)カメラの画像で、三次元計測が可能です。
●ただし、後述する撮影方法や、基準点の利用が必要です。また、カメラの焦点距離などのパラメータ情報があると、処理速度が上がります(なくても処理は可能)。
<撮影方法>
高い精度で位置を測位可能なRTK(リアルタイムキネマティック)-GNSS(Global Navigation Satellite System、全地球測位システム)受信装置がついたドローンであれば、GCP(Ground Control Point:地上基準点)を用いなくても高い精度で三次元計測が可能です。
<基準点の利用>
●高い精度で三次元計測を行うためには、GCP、または対空標識の設置が重要です。
●ドローンに搭載された通常のGNSSでは、単独測位のため位置精度が不十分であり、さらに三次元モデルにドーミング(歪み)などが発生し、正しい計測ができないことがあります。
●GCPを用いると、誤差を数cmに抑えることができます。もちろん、GCPも高い精度(誤差数cm)で測量または測位されている必要があります。
対空標識の例
地上基準点を使用した補正の例
3.特殊なセンサー(マルチスペクトルカメラやサーマルカメラを使用した非可視領域)による観測(対象:生育ムラ、病害虫)
●これらのセンサーを標準搭載したドローンが、すでに市販されています。
●市販のこれらセンサーを自分でドローンに搭載することもできます。ただし、自分で取り付ける場合、重心が変化し機体が不安定になりやすいので、注意が必要です。また、メーカー標準オプションでなく、機体の改造にあたるので、飛行の許可申請時に注意が必要になります。
●これ以外に、レーザーセンサー(距離計、LiDAR)やハイパースペクトラルセンサー(マルチより多くの数十から数百の波長バンドを計測可能なセンサー)などがあります。
●衝突防止用の超音波センサーや、位置補正用のビジョンセンサーなどが搭載された機体も、数多くあります。
飛行
「センシング飛行と撮影の機能」
●飛行に関しては、各メーカーが自動飛行用のアプリを提供していることがほとんどですが、第三者団体やフリーのアプリが利用可能な場合もあります。飛行に関する機能については省略しますが、自動帰還などは多くのメーカーがサポートしています。
●撮影に関するアプリの機能としては、三次元計測に対応できるように、一定範囲をくまなく撮影する機能を有しているのが一般的です。アプリで背景の空中写真上に飛行範囲を設定し、オーバーラップ率、飛行高度等の条件を設定すれば、自動的に最適な飛行コースを算出してくれます。
●撮影頻度についても、一定の時間ごとにシャッターを切るインターバル撮影以外にも、設定した位置にドローンが来た時にシャッターを切る設定などがあります。
●カメラにモーター付きジンバル(振動低減装置)がついている場合、直下のみでなく、斜めなど任意の角度から撮影することも可能です。
●空撮用ドローンの多くは、リアルタイムで飛行中にカメラ画像を手元のスマホやタブレットで見ることができます。また、静止画のシャッターや、動画の撮影オン・オフなども手元でコントロールできます。さらに、ズーム機能のあるカメラの場合は、テレとワイド(望遠倍率)のコントロール、複数のカメラを搭載している場合は、カメラの切り替えなども可能です。
撮影用アプリ画面の例
ドローン操作アプリ上でドローンに搭載された可視カメラと熱赤外カメラ画面の切り替え例
「使用機材の選択」
●目的に応じて、どのセンサーでどのように飛行するか、また、撮影範囲や得たい情報(解像度)に応じた飛行高度などを考慮して飛行計画を立てます。
●付属のアプリ等で事前に計画をたてることが可能です(ただしメーカーによる)。飛行高度もしくは地上解像度を決定すれば、自動的に地上解像度もしくは飛行高度を算出してくれます。
「飛行時の天候」
●飛行時の天候は、使用する機体によって許容範囲が異なりますが、基本的には余裕をもった状況で飛行を行う必要があります。たとえば、10m/sの風に耐えられる機体であっても、5m/sを超える場合(耳で風切り音が聞こえ始める)には、細心の注意が必要で、より風が強い場合には、飛ばさない判断も必要です。
●多くの機体は防水・防滴機能がないので、降雨にも注意が必要です。天気予報はもとより、雨雲レーダーおよび予報を確認するようにします。
「飛行前の確認事項」
●飛行前には、バッテリーや受信GNSS衛星の数や位置精度の確認、プロペラ固定の確認、ホームポイントの更新など、基本的な確認を行う必要があります。
撮影方法
●上空から標準搭載の可視光カメラで撮影する場合、何を見たいかにより、飛行高度は変化します。メーカーにもよりますが、付属のアプリ等で確認できるので、必要な高度で空撮を行います。
●水稲の場合、高度を下げすぎると、ドローンの下降気流(ダウンウォッシュ)により稲体が揺さぶられるので、注意が必要です。
ダウンウォッシュによる稲体の揺れ(後半、高度を上げていくと影響が小さくなる)
●高度を上げた撮影であっても、風の強い状況で撮影を行うと、稲体が揺れて波うっている状況を観測している可能性があり、注意が必要です。
●生育のムラを空撮しているつもりでも、画像中にある色ムラが生育ムラではなく、風に煽られているかいないかを観測していることになりかねません。
風がある日に撮影された同じ圃場における2秒後の画像との比較
(圃場内に色のムラが確認できるが、2秒後には全く異なっている。これは風によって稲が揺れているのを観測しているだけであり、生育のムラではない)
●水田を撮影する際に、水稲群落によって下の地面や水面が見えない状態では大きな問題になりませんが、水稲が小さい時期の撮影では、背景となる地面もしくは水面に注意が必要です。特に、湛水状態では、サングリント(太陽光によるギラギラした反射)が入ることがあります。
●これを回避するには、時間をずらす、太陽-地面(水面)-ドローンの相対的な位置を変える、カメラの角度を変えるなどの方法で対処します。
サングリントの例
●三次元計測をする場合は、対象範囲をくまなく、かつ、それぞれの画像が60%以上重なり合うように撮影を行います。この画像をコンピューターで処理することで、三次元計測が可能となります。
●航空写真の場合は60%で問題ありませんが、ドローンの場合、もう少しオーバーラップを大きくとる必要があり、国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」では、80~90%以上(ただしコース間は60%以上)とされています。公共測量ではないとしても、十分な精度を得るための目安として知っておくとよいでしょう。
●アプリによる自動飛行を使うと、オーバーラップを一定に保ちながら確実で容易に撮影できます。その一方、サングリントには注意が必要となります。サングリント発生部分では三次元計測ができなくなるため、撮影時にパラメータを変えて(カメラの角度を変えるなど)回避します。
●マルチスペクトルカメラや熱赤外カメラを用いた撮影でも、アプリを用いた自動撮影は多くの場合で利用されます。これは(主目的ではないとしても)、撮影した画像から三次元計測も可能で、多数の画像を繋ぎ合わせた画像(モザイク画像)を作成できるからです。
●モザイク画像は、途中でオルソ処理と呼ばれる、レンズの周辺で発生する倒れ込みの補正が行われ、どの部分も真上から見た画像(オルソ(正射)画像)になったもののモザイク画像(オルソモザイク画像)を作成できます。地図や筆ポリゴン等とGIS(GeographicInformation System)上で重ねて見たり、解析したりするには、必要となってきます。
●撮影範囲の広さや飛行高度によりますが、撮影に要する時間中の変化に注意する必要があります。特に雲と雲影には注意が必要で、飛行中に雲が動いて影が落ちたり明るくなったりすると、明るい状態と雲影で少し暗い状態で撮影される部分ができて、それを一緒にコンピューターで処理すると、繋ぎ合わせた画像に濃淡のモザイクが発生してしまいます(図参照)。
●この現象を回避するため、天気によっては、あえて空間解像度を犠牲にして高度を上げることで少ない枚数(小さい時間差)で撮影を行うこともあります。
低空の空撮画像(約130枚 撮影時間差5分)から作成したオルソモザイク画像
(中央に圃場を横切り串刺しするような形で直線の筋が見えます)
高高度の空撮画像(20枚程度、撮影時間差2分)から作成したオルソモザイク画像
(低空画像のオルソモザイク画像で見られたような、圃場をまたぐ形で串刺し状の直線の色ムラは見えません)
低空で撮影した際の画像の一覧
(途中で明るさが変化しているのが分かります。このことから、低空のオルソモザイク画像に見られた筋は、明るい画像と暗い画像をモザイクした結果できてしまった、現実にはない色ムラだということになります)
撮影データの整理
●飛行後は(義務ではありませんが)、飛行記録の作成・保管をすることが望ましいです。そして、それぞれの目的に応じた画像処理を行います。
「一般的な画像処理」
●俯瞰画像をそのまま目視判読する場合、そのままでも大丈夫かもしれませんが、地図と重ねたり、色を見比べるためには、いくつか補正が必要です。
●レンズによる歪みや周辺減光の補正、色の補正などは、一般の画像処理ソフトを使って行うことができます。
●色の補正は、撮影時に既知の反射板や色見本などを一緒に撮し込んでおくと、補正の精度を上げることができます。
反射率が既知の反射板による補正用画像の取得
「三次元計測の画像処理」
●三次元計測を行う場合、SfM(Structure from Motion)・MVS(Multi-view stereo)という技術を用いた処理を行います。
●SfM技術とは、画像に映った対象物の幾何学形状とカメラの動きを同時に復元する手法で、結果として画像間における特徴点の3次元座標を疎に得ることができます。
●MVS技術は、多視点ステレオとも呼ばれ、ステレオ画像間のマッチングに基づく三次元形状復元に、3枚以上の画像も同時利用するように拡張した手法です。この処理により、SfMで得られた疎な点群から、密な点群を得ることができます。
MVS技術による画像処理で得られた画像
「その他の画像処理」
●三次元モデル作成と同時に、オルソモザイク処理も行うのが一般的です。いくつかある市販の処理ソフトを用いるのが一般的ですが、フリーソフトなどで処理することも可能です(後述のドローンマニュアル「ドローンを用いたほ場計測マニュアル(不陸(凹凸)編改訂版)+(応用事例編)」では、農研機構が開発したフリーソフトによる方法の解説を載せています)。
●特殊なセンサーを用いた計測の場合、レンズ関係の補正の後、それぞれのセンサーに応じた後処理を行うことになります。
●マルチスペクトルカメラの画像では、太陽からの入射光を計測するセンサーがセットになっている場合はそのデータを用い、さらに、反射率への補正には、同時に撮影した既知の反射板の値を利用します。
●NDVI(正規化植生指数)のような正規化した指数の場合、厳密にはバンド(観測波長帯)間の反射特性の違いはあるものの、使用するバンドは同じ影響を受けていることから、指数算出時に相殺されるため影響は小さくなります。
●熱赤外画像は、使用するセンサーによって、相対値しか記録できないものと、絶対値を記録するものがあります。絶対値を記録できるものには、算出用のツールを使います。
使用例 「俯瞰」「三次元計測」「マルチスペクトル」
「俯瞰」
<例1>
2016年7月15日に高度約70mから水田を撮影した例を示しました。圃場を広域で見ることができるとともに、拡大すると、稲体の一つ一つを区別することもできます。サングリントが発生しているため、その部分は色などわからなくなってしまっています。
2016年7月15日撮影 高度約70m
<例2>
2020年7月20日に高度約140mmから撮影された約1ha(100m×100m)の大区画水田の画像です。このような大きな圃場になると、圃場に入らずに中心付近の状況を見ることは難しくなります。なお、この画像は、あえて未補正の画像を示したため、圃場が四角でなく、樽のような丸みを帯びて歪んでいることがわかります。このように広角なレンズの縁辺部では、歪みと減光が発生します。また、画像左上にサングリントが入ってしまっています。
<例3>
熊本地震により発生した水田圃場の生育ムラを2016年9月26日に撮影したものです。複数の圃場をまたいだ形でムラが見えることから、個々の圃場における作業などで発生するムラ(例えば、施肥ムラなど)ではないことがわかります。
「三次元計測」
2016年に熊本地震で生じた農地の不陸(凹凸)の例を示しました。農研機構では、農地の不陸を迅速に把握するために、ドローンと画像解析ソフトを使う方法の適用を検討し、簡便な手法を用いた場合でも、不陸の状況を精度良く計測できることを明らかにしました。ここで用いた方法は、農研機構HPにてマニュアル「ドローンを用いたほ場計測マニュアル(不陸(凹凸)編改訂版)+(応用事例編))」として公開しています。また、本マニュアルは2021年3月に改訂を行い、農研機構が開発したフリーソフトを用いた方法についても説明しています。
ドローン空撮画像から作成した三次元モデル
ドローンによる圃場ごとの不陸計測結果の例
▼ドローンを用いたほ場計測マニュアル(不陸(凹凸)編改訂版)+(応用事例編)
マニュアルと同様の処理により作成した圃場およびその周辺の三次元モデルの例
「マルチスペクトル」
マルチスペクトルカメラを用いた計測情報をもとに、可変施肥の計画立案および可変追肥を行ったスマート農業実証事例を次の図に示しました。
スマート農業の目としての役割を担うドローン
(農研機構ホームページ「ドローンを利用した効率的な広域リモートセンシング技術」より転載)
(農研機構ホームページ「ドローンを利用した効率的な広域リモートセンシング技術」より転載)
留意すべき点
●ドローンに関係する法令は非常に多岐にわたり、さらに、ほんの数年の間に大きく変化しています。常に最新の情報をチェックするよう心掛ける必要があります。
●ドローンは便利なものではあるものの、空中を飛ぶ以上、何かあれば落下事故につながり、さらには落下地点への被害が発生します。どんなに注意をしていても人為的なミスは発生し、突発的な故障やアクシデントの発生はいつ起こるかわかりません。
●緊急時には被害を最小限にするための判断を、そして発生してしまった場合に適切な対処をとれるよう準備しておくことと、また、条件が悪い場合には無理をせず、飛ばさない勇気を持つことが大切です。
農研機構農業環境研究部門土壌環境管理研究領域 農業環境情報グループ