土づくり編(7) 土壌消毒 -ガスと粒剤を中心とした消毒方法
土壌消毒法は薬剤の使用の有無、対象となる病害虫、使用する薬剤、処理方法等で異なりますが、ここでは、薬剤消毒の消毒方法を中心に説明します。
土壌注入処理
「全面処理」
30cm間隔(※1)の千鳥状に、約15cmの深さに1穴あたり1.5~5ml(剤、対象作物により異なる)を注入します。
※1キルパー(カーバムナトリウム塩液剤)は25cm以下
注入後、すみやかにポリフィルムで被覆または覆土鎮圧します。
被覆または覆土鎮圧を行わないと、消毒効果が得られないだけでなく、ガスの拡散によって、人や家畜に被害がおよぶので、特に注意が必要です。
クロルピクリンくん蒸剤は、必ず被覆を行います。
D-D剤の覆土鎮圧の防除効果は、被覆の1/3~1/20となります。
土壌消毒後、所定の日数が経過したら、ガス抜き耕うんを行います。
「畦内処理」
30cm間隔の、1穴あたり1.5~5ml(剤、対象作物により異なる)を注入します。
畦立マルチと同時に処理するので、マルチフィルムにより、空気中へのガスの拡散を防止し、防除効果も安定します。
この処理方法は作物が限られており(※2)、ガス抜きの代わりに、処理後に一定の放置期間を必要とします。
放置期間は作物の種類、時期により異なるので(※3)注意が必要です。
※2鹿児島県の場合はエンドウマメ、ソラマメ、サツマイモ、メロンなど
※3気温が低いほど放置期間は長くなります。鹿児島県のサツマイモの場合、4月上旬で15日程度、5月上旬で10日程度となります
歩行型土壌毒機
歩行型土壌消毒機(全面マルチ同時作業)
キルパー剤専用消毒機(歩行型)
注入間隔20cmのキルパー剤専用機
サブソイラ式消毒機
強制駆動ローラで土壌表面を鎮圧し、ガス漏れを防止する
全面マルチャ
畦立同時土壌消毒機(ソラマメ)
畦立作業と同時行程で作業が可能。マルチを展張するため、ガス拡散防止の被覆が不要
サツマイモ用施肥、畦立、土壌消毒一工程作業機
畦立同時消毒機の液だれ防止ノズル
土壌表面処理
所定の薬液を土壌表面に散布し、すみやかに耕うん混和し、ポリフィルムで被覆します。
7~10日後にガス抜きを行い、ガス抜き後7~10日後に播種・植付けを行います。
トラクタに動噴を搭載して、ロータリ前部に散布し、直後に耕うんすることで、効率的な作業が可能となります。
トラクタ前部に薬液タンク、動噴を搭載
粉・粒剤処理
「ガス化粒剤」
所定量を圃場全面に均一に散布し、15~25cmの深さに十分混和し、ポリフィルムで被覆、または鎮圧散水します。
7~14日後に被覆を除去し、ガス抜き耕うんを行います。
土壌中の水分によって分解され、ガスを発生するため、地温10℃以上で、適当な水分を含んだ土壌で使用する必要があります。
「接触型殺センチュウ剤」
所定量を圃場全面に均一に散布し、土壌中に均一に分布するように、十分混和します。
剤とセンチュウが接触することで防除効果が発揮されるので、混和が不十分だと効果が得られません。
接触型殺センチュウ剤には、被覆、ガス抜きが不要という特徴があります。
散布量は、剤や対象作物によって異なりますが、おおむね15~30kg/10aになるので、散粒機や動力散布機を用いると効率的です。
現在、接触型殺センチュウ剤の畦内処理について、検討が行われています。
動力散粉機
使用薬剤について
「土壌注入処理剤」
●クロルピクリンくん蒸剤
●D-D剤
●メチルイソチアシオネート油剤 (トラペックサイド油剤、D-D剤を混合した ディ・トラペックス油剤)
●クロルピクリン・D-Dくん蒸剤 (ソイリーン) 等
消毒の効果を安定させるためには適正な土壌水分、地温の条件下で消毒を行う必要があります。
水分が多すぎると十分にガスが拡散せず、ガス抜きが困難となります。また、水分が少なすぎるとガスが空気中に拡散しやすく、消毒効果が得られません。適当な土壌水分は、土を手で握りしめて放したときに自然にひび割れする程度です。
温度が低すぎるとガスが拡散しにくく、十分な消毒効果が得られません。剤に適した温度で処理する必要があります。
「土壌表面処理剤」
●カーバム剤 (NCS)
●カーバムナトリウム塩液剤 (キルパー) 等
「粉粒剤」
●ダゾメット粉粒剤 (バスアミド、ガスタード)
●ホスチアゼート粒剤 (ネマトリンエース)
●イミシアホス粒剤 (ネマキック) 等
※ ( )内は商品名
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