安全編(8) 事故防止対策 Ⅳ
農作業事故を防止するためには、身近で発生した事故について、その原因を分析して、同じような原因や要因で事故が発生しないように対策をとることが重要です。ここでは事故のいくつかの事例を取り上げ、その原因と対策について紹介します。
(1)ほ場周辺の側溝が判らず、車輪が落ちて横転(作業環境)
●状況
ほ場内で牧草の刈り取り作業中に、ほ場脇の側溝に気づかず、落ちてしまった。
作業速度が遅かったこと、草が生い茂っていたこと、また、キャビン型トラクタであったことにより、けがはなかった。
●要因
ほ場は牧草があり、側溝の周辺も雑草でおおわれていた。
オペレーターは、ほ場の状態や側溝の位置を把握していなかった。
●対策
・作業前に、ほ場及び周辺の確認を行う。
・危険箇所には、目印を立てておく。
・収穫前に、ほ場周辺の除草作業を行う。
・作業環境マップ(※)を活用する。
・リスクの見える化。
※ 作業環境マップ :農業機械の移動する経路中やほ場およびその周辺等の危険個所を確認して作成する地図。狭い幅員、急カーブ、下り坂、側溝、走行を阻害する石・木等の危険な作業環境における場所の種類を区分して記載し、危険な作業環境における種類と場所を明らかにする。
作業環境マップの例
(クリックで拡大します)
(2)農道走行中、障害物を避けたため、道路横の川に転落(作業環境)
●状況
雨で私道横の木の枝が垂れ下がったことで見通しが悪くなり、枝を避けようとしてトラクタのハンドル操作を誤り、市道横の川に転落した。安全フレームがあったため、頭部縫合と右膝下足打撲で1カ月の入院で済んだ。
●要因
いつも通る道が、降雨により変化していた。
にもかかわらず、あわててハンドル操作を行ったため、川へ転落してしまった。
●対策
・日頃通り慣れた場所でも、降雨等により状況が変わることを想定する。
・異常があったら降りて確認し、安全な状態にするか、回避する。
・作業環境マップを活用する。
・シートベルトを着用する。
(3)農作業終了後、駐車中のトラクタにひかれた(人的要因)
●状況
トラクタに水田ハローを装着して代かき作業をおこなった後、道路にあがりトラクタを降りたが、動き出したトラクタにひかれた。
●要因
少しの間だからと駐車ブレーキをかけず、PTO駆動を入れたまま降車した。水田ハローが駆動輪となり、トラクタが動き出してひかれた。
●対策
・トラクタから降車する場合はエンジンを切る。
・作業機のPTO駆動は必ず切る。
・駐車ブレーキは確実にかける。
・駐車する場合は、ギアをニュートラル以外に入れる。
(4)作業補助者が雑草を除去しようとして、作業機に手を引き込まれた(機械要因)
●状況
ばれいしょ収穫作業中、トラクタアタッチの掘取機に詰まりそうになった雑草を取り除こうとして、搬送チェーンと雑草除去ロールの間に手を引き込まれ、そのまま腕まで巻き込まれた。
●要因
作業中の回転する部分に接触した。つい手を出してしまった。
●対策
・作動中の機械に接近しすぎないこと。
・リスクの見える化。
(5)オペレーターが雑草を除去しようとして作業機に引き込まれた(人的要因)
●状況
ばれいしょ収穫中トラクタを自走させている際に、掘取機に詰まりそうになった雑草を取り除こうとして、引き込まれた。
●要因
作業中の回転する部分に接触した。一人で作業をしていたため、トラクタを止める事ができなかった。
●対策
・自走作業は行わない。
・トラクタから降りるときはエンジンを止める。
(6)さつまいも収穫作業終了後、自走式ハーベスタで作業補助者をひいた(人的要因)
自走式ハーベスタでの収穫作業(イメージ写真)(提供:鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室)
●状況
さつまいも収穫作業終了後、フレコンバック収納部に残っていた土を取り除いていた補助作業者に気づかず、ハーベスタを動かしたため、補助者をひいた。頭部を挟む重傷事故となった。
●要因
補助作業者は、フレコンバックを降ろすたびに収納台の土を落とす作業を行っていたが、オペレーターは、作業終了時にフレコンバックを降ろし終えたことで気を抜いていた。オペレーターと補助作業者の合図不足と確認不足。
●対策
・組み作業の場合は、機械を動かす際の合図を決めておく。
・お互いの位置関係を常に把握しておく。
・機械作業では、エンジンを止めるまでは気を抜かない。
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