安全編(4) 農作業事故の実態 Ⅳ
事故発生場所の解析
ここでは事故が発生しやすい場所を解説する。
「格納庫及びその周辺」
●格納庫内が暗く、作業機や部品・資材が散乱している。
●格納庫内で点検整備を実施する際、換気が十分でない。
●床面が凸凹だったり、油・水などが溜まっている。
●格納庫周りに作業機や部品が散乱している。
●格納庫前に十分な旋回スペースがない。
●道路への出入口が狭かったり、視認性が悪い。
整理整頓を心がける
「道路」
●交差点や坂道などで雑草等で視認性が悪い。
●一般車の交通量が多い。
●ガードレールが設置されていない。
●路幅に対して作業機の幅が広く、他車との離合時に他車や建造物、歩行者等に接触する。
●下り坂で、牽引している作業機や搭載している作業機の重量が重くて、制御不能となる。
●圃場の基盤整備が進み、広域農道が整備されたため、一般道のバイパス化し、速度の速い一般車両が増えた。
左から上から 雑草の繁茂により路肩・側溝が見えない / 除草後
「農道」
●未舗装道路で、路面が凸凹している。路肩が崩れたり、軟弱になっている。
●雑草が繁茂し、路肩・側溝等が判らない。
●農道へ土砂等が流れ込み、路幅が狭くなったり、段差ができている。
●雑草や雑木により路幅が狭くなり、作業機等が接触する。
農道と側溝、ガードレールがないと(左)、 農道の凸凹や雑草が繁茂し、雑木や竹が道路へ広 がっていると、ハンドル操作を間違えて側溝方向へ・・・(右)
「圃場出入口」
●雑草の繁茂、路面の凸凹、崩れ、軟弱化が見られる。
●傾斜角が大きくなっている。圃場側が耕うんにより軟弱となり、段差が大きくなっている。
●路幅が狭い。
ほ場周辺・畦際に雑草が繁茂していると(左)、 側溝が見えず転倒することも(右)
「圃場内」
●圃場内では、圃場周りの雑草の繁茂により、畦際・圃場端が判らないなどによる圃場からの転落、圃場の凹凸による転倒が多い。
●作業中に作物や雑草等が絡まったりした場合、エンジンを止めずに詰まりを除去した場合、機械による切断や巻き込まれ事故が発生する。
●作業補助者と組作業の際、行動合図や作業手順が不適な場合、補助作業者が機械に巻き込まれたり、ひかれたり、挟まれたり、接触したりする。
●圃場状態の変化、急激な気象の変化、塵埃、寒冷、暑熱等の作業環境の変化による作業者の精神的・肉体的障害に起因するものもある。
ほ場終端部は2~3mの崖だが(左)、ぎりぎりまでトラクタを寄せると、転落の危険性が大きくなる(右)
画像提供 :鹿児島県農作業事故調査個票
事故発生につながりやすい人間の行動
ここでは事故の発生につながる人間の行動を解説する。
「慢心・慣れ」
●昨日と同じ作業、毎年同じ事をしている。
(実際は、環境などが常に変化していて、全く同じ状態はない)
●作業に追われ、点検・確認をおこたる。
(つい、忙しく手順を省いてしまう。ことが起きてから対処すればよいと考える)
●使い慣れた機械だから、調子が悪くなっても大丈夫と誤判断する。
(いつもと同じ不調。点検整備しないで、応急処置で済ませている)
「判断ミス」
●慢心や慣れによる誤判断や確認不足。
(いつもの作業だから、同じ操作で大丈夫。環境も作業者の体調も常に変化している)
●疲労の蓄積、睡眠不足、精神的不安定、服薬による副作用、暑熱寒冷など。
(農繁期の休息不足、夫婦喧嘩、心配ごと、風邪の治療、熱中症、防寒対策など、作業者の体調不良)
●焦りや過緊張。
(休息不足、作業手順、生産物の収量、天候の変化など要因はさまざまである)
「誤操作」
●新しい機械・装置への知識不足。
(取扱説明書は読んだか。購入時の販売店の説明は十分理解したか。作業前の試運転と操作練習は十分行ったか)
●焦りや過緊張。
(休息不足、作業手順の間違い、生産物の収量、天候の変化など要因はさまざまである)
「確認不足」
●集中力の低下。
(単純作業の連続による注意力の低下など生理的現象、心配事など精神の不安定、睡眠不足)
●慣れによる作業手順の欠落。
(いつもと同じ作業、手順通り行っているつもり)
●焦りによる作業手順の省略。
(作業遅れや急激な天候の変化に対するあせり)
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