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2008年6月16日
いろいろな種類があるBT剤
山中 聡
BT剤という言葉をご存知でしょうか?
BTとは、昆虫に病気を引き起こすバチルス チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)菌の頭文字をとったものです。
写真 :バチルスチューリンゲンシス菌の殺虫性結晶蛋白 (1μmは1mmの1000分の1)
このBT剤はチョウ・ガ類の幼虫に対して病原性を示し生物的防除資材として利用されています。いろいろな商品名が存在しますが、利用現場では、“BT剤”としてひとくくりで扱われています。
しかし、全ての剤が同じ菌ではありません。
BT菌には幾つもの亜種があり、菌が産生する昆虫病原性の毒性たんぱく質の種類により、大型のハスモンヨトウやオオタバコガに有効な「アイザワイ系統」と、コナガやアオムシに有効な「クルスタキ系統」とがあります。
また、系統は一緒でも、菌株が異なると、その活性の強さも違います。
キャベツ、はくさい等アブラナ科作物では、コナガ、アオムシが主要害虫となり、クルスタキ系統を中心とした体系が組まれていますが、レタス等オオタバコガやハスモンヨトウが主要害虫の場合には、アイザワイ系統のBT剤を利用すると効果的です。
写真 左:ハスモンヨトウ幼虫 / 右:オオタバコガ成虫(雌)
毒性たんぱく質が活性を示すには、条件があります。
まず、毒性たんぱく質が、塩基性(pH10付近)の消化液の中で溶解・部分分解されて、活性化します。この活性化されたたんぱく質が害虫の中腸細胞に結合し、細胞を破壊して害虫を殺します。
活性化の程度、結合する活性化たんぱく質の量などは、BT剤の種類と相手となる昆虫の種類によって異なります。ですから、BT剤の種類を的確に選択することと、作物に発生するガの幼虫の種類を知っておくことが、体系作りの基本となります。
BT菌の活性たんぱく質は4つの立体構造からなり、昆虫の細胞に結合する部分と、細胞に孔をあける役割をする部分があります。昆虫は、孔をあけられると中腸内に体液が逆流して正常機能が損なわれ、摂食停止から死に到ります。
最近、昆虫の細胞には全く細胞毒性を示さず、ガン細胞に特異的に活性を示すBT菌も見つかっています。このように、BT剤の研究は、応用昆虫学から医学まで、広い応用性が出てきているようです。
(※画像をクリックすると大きく表示されます)
東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長