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2013年2月15日
最近気になる、ブレイクしそうな郷土食文化たちI
みんなの農業広場への掲載も3回目になります。今回は、以前の固い内容とは趣向を変えて、きっと皆さんも大好きであろう話題をお送りしましょう。
タイトルに「郷土食」とありますが、「ご当地グルメ」と言い換えてもいいかもしれません。全国津々浦々に、その土地固有の食材や料理文化があります。それらがいま、ものすごいパワーを持って、文化を揺り動かしつつあるのではないか。郷土食・ご当地グルメが地方の第一次産業の活性化につながるのではないか、と私は感じているのです。
■現地の人の日常食は、旅人にはご当地グルメ
私は、少ない年でも年間150日くらいは出張に出ています。ほとんどが農畜産の現場なので、都市部よりは地方を訪れることが多い。そうすると、必ずその地域の郷土の味に出会うことになります。それはまさに異文化の味!
「えっ このたべものは、いったいなに?」
「ええっ ●●に△△をかけて食べるの!?(絶句)」
など、日々面白い体験をしているわけです。でも本当に面白いのは、そうした私を見た時の、地方の人達の反応です。ほとんどの場合「え? これが普通なんじゃないの?」とキョトンとするのです。そう、彼らにとってはそれが日常食であり、当たり前の味。それどころか、これが全国で食べられている普通の味だ、と思っているケースが非常に多いのです。
高知県の出身者はたいがい、幼い頃に「リープル」という乳酸菌飲料を飲んでいます。地元の乳業メーカーであるひまわり乳業の大ヒット商品で、子供から大人まで親しまれている紙パック飲料ですが、もちろん四国以外では、あまりみかけることがありません。高知県の子供たちは、高校を卒業して、大学進学や就職で四国を離れた瞬間にショックを受けるのです。「あれっリープルが売ってない、、、」と(笑)。
青森県の、主に津軽地方では、地元の工藤パンが作る「イギリストースト」が大人気です。上部が盛り上がったイギリスパン二枚の間に、マーガリンとたっぷりのグラニュー糖がはさまれた、シンプルな菓子パン。青森では、だいたいどの商店、コンビニでもこれを売っていて、その偏愛ぶりにおどろかされます。
こんな、「ある範囲の中で熱狂的に愛されているが、その範囲外ではまったく知られていないもの」というのが今、面白いことになっています。むかしから関西出身の人が初めて関東でうどんを食べる時、汁が黒いのに驚いくという話を耳にしますが、こうしてみると、東と西という分け方では、まだざっくりとしすぎていると思うわけです。本当は、日本全国津々浦々に、ご当地ものが潜んでいるわけですから。
■中央から地方へと向かう食ビジネスシーン
そうしたご当地グルメは、なにもいま初めて発見されたわけではありません。これまでずーっとあり続けてきたし、愛好家もいました(私もその一人です)。けれども、それがここ5年ほどの間、大きなマーケットになっているように思います。
例えば、2006年から各地で開催されている、ご当地グルメの本家本元イベントである「B-1グランプリ」は、毎回20万人以上の客を集め、経済効果も数十億円に上っています。昨年の10月に開催された北九州大会では、とうとう60万人を超える入場者が集まりました。当該のご当地のみならず、その冠をしたお店や加工食品にも人気が集まっています。先日、とある食品企業の展示会を観に行くと、B-1グランプリの人気ご当地グルメの公式な冷凍食品コーナーがありました。B-1グランプリの事務局と正式にライセンス契約をして取り扱っているその商品シリーズは、かなりの人気を呼んでいるそうです。
メディアでも、ここのところ「地方」は大きなテーマとなっています。テレビ番組でも、全国各地の面白い食べ物や風習をネタとする「秘密のケンミンSHOW」が大ヒットしたのは、記憶に新しいです。食に関わる業界では、雑誌で地方の食材や料理特集が組まれることが非常に多くなってきています。それも、伝統的な食材や料理の記事だけではなく、地方で気を吐く新鋭シェフといった、いままではあまりスポットの当たらなかった人たちが登場する記事を、よく見かけるようになってきました。(つづく)
株式会社グッドテーブルズ代表取締役・農産物流通コンサルタント。
一次産品の商品開発のアドバイザーをする傍ら、全国の郷土食を食べ歩いている。「週刊フライデー」、「きょうの料理」、「やさい畑」などに連載を持ち、著書に「激安食品の落とし穴」(KADOKAWA)「日本の食は安すぎる」(講談社)、「実践農産物トレーサビリティ」(誠文堂新光社)などがある。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」も人気が高い。