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2015年6月 5日
見た目のおいしさ
山田早織
4月終わりの日曜の夜。
実家でダラダラとテレビを観て過ごしていたら、ちょっとした高さ(25cmくらい)のソファから1歳の娘が落ちた。
高いところが好きで、いつもどこかに上っていた。そのソファから落ちるのは初めてではない。
・・・のに、泣き止まない。普段は泣かないのに(むしろ落ちて喜んでいる)、泣き止まない。おかしい。抱っこしてみると、左腕に違和感が。あやしても歩いても泣き止まない。
服を脱がしてみると、左ひじの上が異常な腫れ方をしている。
痛い場所を教えることができたからか、そこからぱったり泣き止んだ娘。
とにかく、近所の総合病院の救急に連れて行くことにした。
レントゲンを撮ると、しっかりポキっと折れているとのこと。
整形外科の先生を呼んでいただき、処置をしてもらって帰宅した。
翌日も翌々日もレントゲンを撮りに病院へ行くが、2日目にして、腕を動かしてしまったことにより(ギプスは半分しかしていないため腕が動く)、骨がずれてしまったことが判明。
「残念なお知らせがあります。骨がずれちゃったので、手術です」とサクッとドクターに言われ、「えー!!」と思っているうちに、ドクターは手術の手配を目の前でささっと済ませてくれ、「じゃ、今から入院です」と。「今から?!」と、看護士さんと口をそろえて言ってしまいました。
通常は前日入院でいいけど、手術日の前日は祝日。ということで、本日入院、という流れ。
重病人ではないのに、入院前の検査にあちこち回ってぐったりし、気づいたら病室で娘に食事を与えていた。なんだか頭がついていかない。
その日の午後は仕事に出る予定だった。でも、仕事のことなんて、まったく考えられない。「ぼーぜん」って言葉がぴったりだ。
とにかく、左腕以外は元気が有り余っている娘との入院生活が始まった。
いつもは食欲全開の娘なのに、病院ではまったく食が進まない。
ご飯とお茶と、お味噌汁を飲むくらい。
食事は、なぜか乳児食が出て、いろいろな食材がていねいにみじん切りされている。
味はもちろん薄味。
スプーンを持って口に入れようとしても、んっっとなったまま。
どーしてぇぇぇ!!
何度かそんな感じで食事をやり過ごし、ふと、「みじん切りだからか?」と考える。
ご飯は少し柔らかめでも、普通のご飯と変わらない。でも、食材が全部みじん切りされている食事は、もうここ9カ月くらい食べていないかも。
ためしに、普通食に変えてもらえるよう看護士さんに伝えた。
「明日の午後は手術だから、今日の夕飯が最後で、次はあさっての朝食まで食べられないから・・・体力をつけてもらうためにもいっぱい食べさせたい」
その作戦が成功したのか、「調理されたものがそのままの状態」で出てきたら、おかずもきちんと食べるようになった!!
大きいものを小さく割って、フォークにさして。自分でどんどん食べていく。
もしかしたら、みじん切りの食材は赤ちゃんのもので、私は赤ちゃんじゃないし! みたいなプライドがあったのかも。味がどうこう・・・の前に、見た目ですべて拒否してしまっていたから。
ご飯は、見た目も大事なんだなぁ。
おいしそうに見えるのはもちろん、本人のプライドを満たすのも必要なんだ。
目からうろこの出来事でした。
(その後手術は無事に終わり、元気にギプスの手で遊びまわっています。凶器)
静岡県浜松市出身。フランス料理店に勤務後、23歳で起業した(有)しあわせ家族代表取締役、園芸福祉士。培養土、花苗・野菜苗の販売のほか、庭づくりや商店のディスプレー、野菜の宅配など、関心とニーズのある分野に事業とボランティアを展開中。