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青虫の足あと【57】

2012年3月27日

食事で学ぶこと

                                    山田早織


子どもが赤ちゃんだった頃、「もっと赤ちゃん連れに優しいお店が増えるといいな~」とよく思った。たとえば小上がりや座敷があるとか、いすがベンチシートになっているとか、ちょっとしたことなのだけど。
赤ちゃん連れ同士で食事に行くときは、息抜きもしたいし、たまにはオシャレなお店にも行きたい。ガイドブックに載っている店内のようすをじっくり見て研究したり、ネットの情報を頼ってみたりと、けっこう苦労をしたものです。

息子は2歳9カ月。赤ちゃんのときとは違う意味で、行きやすいお店を求めている。
そう・・・反抗期まっただなか。すべてイヤイヤ大魔王で、じっと座って待っているわけがない。


先日、ためしにオーダー製のパスタバイキングのお店にいってみた。いつも車が一杯のそのお店。その日も店内は家族連れでいっぱい。
これだけ子供連れがいるなら気兼ねしなくていいな~! キッズスペースがあって、楽しそうだな! なんて思いながら食事をしていると、息子は「もうご飯いらない。遊びたい!!」と、ほとんど食べずに席を離れ、遊びに夢中。


まわりは、どこも同じような状況。子どもたちは、食べているのか遊んでいるのかわからない。親は子どもに手を焼かずに、のんびり食事ができるのだけど・・・

なんだかむなしい気持ちになってきた。
確かに私も、子どもを連れて行きやすいお店を求めている。
でもこの状況で、子どもたちに「きちんと食事をする」というマナーや、食べることのありがたさなどを教えることができるのだろうか。

いやいや、今日は外食の日。きっとみんな楽しみに来ているんだから、普段とは違うんだし・・・でもでも、遊びと食事とがいっしょくたになって、何を食べたんだか、おいしいのかそうじゃないのかもわからないような感じで、この子達が大きくなって、日本中がこの状態になったら・・・。
パスタを食べながら、胃が痛くなる思いでした。


食事は、人間が生きていくうえで、一番大切な「何か」を教えられる、唯一の毎日の営みなんじゃないかと思う。ある一定の時間は席について、きちんと食べる、それは最低限のマナー。野菜を作ってくれる人に対しても、お肉になる牛や豚、鶏などを育ててくれる人たちに対しても、お米もそう。それ以外のいろいろなものを作ってくれる人たち、加工や調理をしてくれる人たち・・・みんなに対するマナーだと思う。


いつも大変なお母さんたちが、たまには息抜きをしたい! 気楽に食事を楽しみたい!! という気持ちは、私もすごくわかる。
だからこそ私が求めているのは、「子どもたちが自然と食事に集中できる環境」。
子どもたちが食事に集中してくれれば、親だって食事を楽しむことができる。

もちろん、自分の息子を見ていて、それがどんなに難しいかわかるのだけど。
ほかのことで気をそらすのは簡単だけど、ホントは一緒に食事を楽しみたい。
それに、きちんと食事のマナーを身につけることができれば、どんな場面でも自分に自信を持てるんじゃないかな。
今後も息子を使って研究してみようと思う。

やまだ さおり

静岡県浜松市出身。フランス料理店に勤務後、23歳で起業した(有)しあわせ家族代表取締役、園芸福祉士。培養土、花苗・野菜苗の販売のほか、庭づくりや商店のディスプレー、野菜の宅配など、関心とニーズのある分野に事業とボランティアを展開中。

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