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2011年9月12日
知らないということ
山田早織
震災以来、原発の話が毎日のように報道されて不安になり、さらには食への不安へと発展しています。私たち消費者にとって、どの情報を信じればいいのか、さっぱりわかりません。
たとえば、私が毎日のように接している「精神障害者」。彼らと接したことがない人や精神障害についての知識がない人にとって、彼らは、「怖い」存在。だって、わからないんだもん。
それと同じように、多くの消費者はどんなことが危険で、どんなことは大丈夫なのか、知識がない。風評被害とは、わからない恐怖心からくるものだと思う。
スーパーで並んでいる野菜をみて、しばし考える。
私が住んでいる静岡県浜松市のスーパーは、被災地域の野菜がよく並んでいる。それが以前からなのか、震災後意識をしているからなのかはわからないが、消費することが復興への道! と、購入している。
でも、報道番組などをみて、不安にもなる。
野菜だけではなく、牛肉も。え? もしかして豚肉や鶏肉にもいずれ発展するのでは?? 魚はどうなの??
大人だけなら、あまり気にしないけど、子どもに食べさせるものは、いろいろ気になる。自分のせいで、子どもの健康を害してしまうことは、絶対にしたくない。毎日モヤモヤしたまま過ごしていたある日・・・
「静岡産の腐葉土や堆肥の販売自粛」とのニュース。
実家は木質系の堆肥を製造している。私はそれを使った土を販売している。そのニュースについて詳しく調べようと思い、インターネットで検索をしてみたところ、記事よりも、はるかに多い数の「書き込み」件数が。
ちょっと書き込みを読んでみた。
「静岡産の腐葉土、販売自粛だって。っていうか、今ごろ?! やっとって感じ。遅すぎ!」
「とにかく危険です! 家庭菜園用の土も気をつけて!! 知らない人がいたら、買わないように教えてあげて!」などなど、読んでいて涙がでそうだった。
うちはまじめに堆肥を作っている。もちろん、他のところもそうだと思う。まじめにやっているから安全だという問題ではないけれど、放射線物質の測定器具を購入し、検査もしている。測定できないものは、さらに外部検査に出している。
なのに、「静岡産は全部危険」「販売なんてしなきゃいいのに。自粛なんて弱すぎ。販売停止だよ!」などの意見を見ると、つらくなる。思わずコメントを書こうとしたが、やめた。その先が見えてしまった。それに耐える自信がない。
ああ。風評被害に苦しんでいる農家さんは、「売れない」という事実とともに、まじめにやっているのに、その作物に対する「全否定」的なコメント、考えに傷ついてしまっているんだ・・・ということを、恥ずかしながら、初めて、本当に実感した。
もちろん、「危険」といっている人たちは、子どもを持つ親だったりする。必死なその気持ちも、痛いほどわかる。
だからこそ、だからこそ、もっといろいろなことを「知らなきゃ」いけないんだと思う。
「知らないこと」に対する、得体が知れない恐怖心で、判断するのは避けよう。そして、供給する側の立場にあるときは、できるだけ「知ってもらう」ための情報を出そう。
「安全」だから「安心」ではない。「安全」は事実、「安心」は精神的なものだから。
子どもをもつ一母親として、そして多少なりとも農業に関わる中で感じたことを、書きました。
静岡県浜松市出身。フランス料理店に勤務後、23歳で起業した(有)しあわせ家族代表取締役、園芸福祉士。培養土、花苗・野菜苗の販売のほか、庭づくりや商店のディスプレー、野菜の宅配など、関心とニーズのある分野に事業とボランティアを展開中。