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フランスまるかじり生活 【7】

2007年10月26日

 ストラスブールの朝市

    柴田千代


 朝4時半、車のエンジン音に目を覚ます。

 急いで着替え、外がまだ真っ暗な中、朝市の準備のため、野菜・果物・乳製品を大きなワゴンに手早く積み込んだ。高速道路に乗り、片道1時間かけストラスブールへ向かう。


 今日は、週に2回ストラスブールで行われる朝市だ。薄暗い中、元気に店の明かりが点いているのはパン屋さんだけだ。街はまだ目をこすっている。


 ワゴンから野菜や、かご、パラソル、机を出し、店の準備に取りかかる。

綺麗に並べられた商品

 一緒に市場にやってきたピエールは、手早く綺麗に商品を並べてゆく。ピエールが積み上げると、新鮮な野菜たちが生き生きと輝きだす。私の置いた野菜を「こうすると、この野菜が一番綺麗に見えるんだ」と置き変えながら、教えてくれる。

 30分もかからずに完成した店は、素晴らしく美しい。並べ方一つでこんなにも違うものかと感心した。

 農場でみんなが汗水たらし、一生懸命に作った作物や製品を、お客様に届けるのが今日の私たちの大事な仕事。少し緊張しながら店に立った。


 店に並べた商品は、
トマト・きゅうり・ズッキーニ・じゃがいも・レタス・サニーレタス・玉ねぎ・インゲン・ハーブ(バジル・パセリ・コリアンダー・イタリアンパセリ)・サクランボ・プルーン・ラズベリー・チーズ(フレッシュ・ウオッシュ・ハードタイプ)・ヨーグルト・バター・生クリーム・ジャム・生ハム・ソーセージ・ベーコン・りんごジュース・お酢・バジルペースト・トマトの瓶詰め などだ。
 ※農場で育てたホエー豚を使用


 ひと息ついて朝食をつまんでいると、早速、常連のお客さんが現れる。

  「先週買ったサクランボ、とっても美味しかったわ。今日もあるかしら?」
  「ありがとうございます。今日もありますよ。サクランボは今年の最後です」
  「あら本当? じゃ、たくさん買ってゆくわ! 今日はタルトを作るわよ」

 有機農法の作物なので、他の店に比べるとキロあたりの値段はやや高め。それでも、常連のお客さんは、みな買い物かごいっぱいに買ってゆく。

いろいろな種類のチーズ


 野菜や果物同様、乳製品もとてもよく売れる。マンステールA.O.Cはもちろんのこと、ヨーグルトやバターをどっさり買ってゆく。日本では想像できないが、フランス人は「食卓には必ず乳製品がのる」と言われるほど毎日毎日乳製品を食べるので、彼らが買っていく量はとても多い。


 お客さんは言う、「チーズはやはり農家製のものでないと美味しくないわ。そして何より、顔の見える相手から食べ物が買えるのは、幸せなことなのよ」。

 その奥さんの笑顔に大きくうなずき、思わず内からこみ上げるものを抑えるように、私も笑顔になった。

しばた ちよ

東京農業大学 食品理工学研究室(チーズ班) 卒業
新得共働学舎 チーズ工房 2年勤務
フランスワーキングホリデービザにより、現在チーズ製造技術を取得するため、フランスで農家製チーズの技術をじかに学び帰国。

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