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2007年8月 9日
ビオマルシェでつながる生産者と食卓
柴田千代
麦の穂が実り、風にゆられ良い香がする。私は今まで麦の穂の匂いを知らなかった。畑一面の麦の前に立つと自然と匂いをかぐことができる。
牧場主のディディエさんが以前、私に言っていたことがやっとわかった。ここに居ると雨や鳥の歌声、風の声、花や植物たちの香りや声が自然と聞こえてくる。
週末ともなれば、この自然を求めキャンピングカーやテントを持ち様々な国からキャンプにやってくる。
ヤギチーズを作ると必ずホエー(乳清)が出る。それらは子ブタに与える。ホエーを飲ませて育てると、油のノリがよくなり肉質が向上する。ホエーを無駄なく利用するには最適な方法だと思った。
実際にホエーブタで作ったサラミやハムを頂いたが味は絶品だった。
噛めば噛むほど味わいがあり、脂身があるにもかかわらず、舌の上ですっと溶けてゆく。「これが本来の豚肉の味なのだ」と思えるくらい美味しかった。
牧場で飼われているブタは生後10ヵ月後に出荷され、ハム・サラミ・ソーソージ・パテなどに変わり帰ってくる。
生肉で売るよりも加工した方が1kg当たりの単価が上がるためだという。ちなみに生肉で売ると、1kg=3ユーロだが、加工品にすると1kg=8ユーロになる。(現在1ユーロ=164円)
委託加工された加工品は、ディディエさん達が経営する農家製品の直売所や、週末ブサンソンの中心地で行われる「Bio Marche(ビオ・マルシェ=有機農業市場)」で売られる。
お客様にもこの豚肉の味は愛され、直売所でも市場でも飛ぶように売れる。小さな農家が生き残るには確かな味や質を持つことが大切であると実感した。
ディディエさんは私に言う。
「小さな農家が作っている良いものを知ってもらうには、時間がかかる。しかし根気強く続けることが大事なのだよ。良い物は必ず求められる時が来るからね。お客さんに食べてもらい、作り手と直接話して買ってもらうこのシステムを大事にしたいのだ」
確かに、お客さんたちは買い物かごを持ち、真っ先にこちらにやってくる。ディディエさんと話をしながら楽しそうに買い物をしてゆく。品質の良さが直接お客様に伝わり、地元の人に求められるこの形が一番理想的だと思った。
日本でも増えつつあるが、生産者による市場はまだ少ない。特に都会では難しい。商品棚にある物を選びカゴに入れ、レジの人とは少し話しをするかどうかだ。極端な話、会話をしなくても物が買える。
誰が生産したのか伝わってくるのは、せいぜい「どこ産」と書かれているネームプレートだけである。非常に残念である。
フランスは農業大国。パリ(フランス首都)でも毎週朝市を見ることができ、生産者(土)と消費者(食卓)が繋がっている。生産者と話し、旬の物を味わう・・・これぞ本当の贅沢ではないだろうか。
(※画像をクリックすると大きく表示されます)
東京農業大学 食品理工学研究室(チーズ班) 卒業
新得共働学舎 チーズ工房 2年勤務
フランスワーキングホリデービザにより、現在チーズ製造技術を取得するため、フランスで農家製チーズの技術をじかに学び帰国。