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2007年10月22日
【山の恵み アケビとムベ】
全国農業改良普及支援協会副会長 関 康洋
ほんの数十年前まで、田舎の子供の遊びは、「遊びと食い物」が一緒になっていたように思う。
山での遊びは、春は「ヤマモモ」、初夏は自生の「ビワ」、秋は「栗拾い・・・ではなく栗採り」、「アケビ採り」、「山芋掘り」などなど・・。
近所のガキ同士つるんで栗採りに行った。
「落ち栗だけを拾う」なんてことは効率が悪く、間尺に合わない。まだ弾けきらずにイガの中に収まった栗をとるため、木に登り、枝を折って下に落とす。下では、落とした栗をむく係が待ちかまえ、分業で収穫作業にあたる。
収穫物は参加者全員で均等に分けるのが決まりでもあった。
我が家では、その年一番の栗は必ず「栗ご飯」になって夕食を飾ったものだ。今でも子供の頃からの習慣で、初物の栗は必ず「栗ご飯」にしてもらう。「栗ご飯」を食べるとなぜか田舎の秋を思い出す。
この栗採りのオマケとして「アケビ」がある。今アケビを食べても、それほど「甘い」とも、「美味しい」とも思わないが、子供の頃には、この食べるところが少ない、種ばかりの果実が非常に甘く、しかもとても美味しかった。
アケビは、ハゼているものか、ハゼかかっているものしか食べられないが、少しくらい青くても、米びつの中に2~3日入れておくと食べ頃になる。
私の生まれ故郷では、中のゼリー状の果肉しか食べないが、東北地方の一部地域では果肉を捨て、あの苦い皮を食すところがある。果肉を取り去った果皮内に味噌、ネギ、キノコ、挽肉等を合わせて詰め込み、焼いて食べたり、揚げて食べたりする。
何とも言えないほろ苦い味だが、ゴーヤーの苦い味に慣れた方には、意外と「いける味」かもしれない。
新芽は高級山菜として、蔓は高級民芸品のアケビ細工の素材として利用される。
また、種からは高級油が取れる。茎は木通(もくつう)という生薬で、利尿作用、抗炎症作用などがあり、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などの漢方薬の原料として利用される。
アケビによく似た植物として「むべなるかな -いかにももっともなこと-」の語源になった「ムベ」がある。関西地方に多く自生する。
ムベはアケビ科の植物であるが、アケビと異なり常緑で落葉しない。果実はアケビが青紫色なのに比べ、少し小ぶりで赤紫色、しかも熟れてもハゼない。
味はそれほど変わらないが、アケビより少しねっとりしている。アケビのように新芽を食べたり、漢方薬の原料・民芸品の材料に利用されているとは聞かない。
(※画像をクリックすると大きく表示されます)
社団法人全国農業改良普及支援協会