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2007年5月 2日
【 「八十八夜」に思い出す、茶園の微気象 】
全国農業改良普及支援協会会長 大森 昭彦
「夏も近づく八十八夜、・・・」、ご存知の唱歌「茶摘」の歌詞のように、今年も新茶の季節がやってきました。
昭和47年5月2日、私は、静岡県牧の原台地の国営畑地かんがい事業の調査のため島田市に滞在していました。
ところが今日から一番茶の摘み採りが始まろうとするその日の未明、静岡県下全域は強烈な凍霜害に見舞われてしまったのです。
台地を巡回してみると、昨日まで萌黄色に伸びていた新芽が無残にも茶褐色に枯れあがり、防霜ファンが完備している今日では想像もつかないほどのひどい被害でした。
台地の上の方は被害が軽微でした。微風があったのでしょう。なだらかに傾斜した斜面や谷側の茶園は冷気にやられています。数メートルの高低差が被害を分けていました。
この時、私達は台地の中央部で驚くべき光景を目にしました。
なんと、道路沿いにある「電柱」と「作業小屋」の影が萌黄色のキャンバスの上にくっきりと茶褐色に描き出されていたのです。
直径わずか20-30センチ位の電柱の裏側に冷気が溜まっていたことになります。茶褐色の被害の跡は、西日の影と同じに見えたので、微風は西風だったことが分かります。
その後も、改植等で周辺より10-20センチ以上低い畝一列が全滅している様子や小さな障害物による影状の被害を数多く目にしました。
竜巻や降雹が、道一本、家一軒の差で被害を分けることはよく知られています。
しかし、わずか数十センチの差が被害を分ける凍霜害こそまさに「微気象」そのものだと強烈に思い知らされたのでした。
毎年、連休が近づくとこの時のことを思い出しますが、今年は、地元の男声合唱団で「唱歌の四季」の中の「茶摘」を毎週歌っているため、ことさら深く感慨に浸っています。
●微気象
地表面の影響を強く受ける地上10m付近までの気層内の微細な時間・空間スケールの気象現象をいう。(新編農業気象学用語解説集(1997年、農業気象学会編)より)
社団法人全国農業改良普及支援協会 会長