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EZOからのおいしい便り 【14】

2008年7月23日

 食卓が見える家庭菜園

    農村ライター 長尾道子


  小麦の穂が黄金色に色づき、もうすぐ収穫を迎える季節になりました。稲穂や大豆、小豆やてんさい(砂糖大根)は一段と濃い緑になり、じゃがいもは白や薄紫の可憐な花を満開に咲かせています。

 農業が作り出すこの景色は、我が家から少し車を走らせると目の前にどーんと広がります。特に、私が育った十勝地方では、その畑の大きさや広さは半端じゃないほど大きい! 子供のころから見慣れた景色とはいえ、その美しさとダイナミックさにはいつも感動を覚えます。

田んぼの風景 広さは2ha!


北海道ならではの広大な景色も大好きなものの1つですが、それとは対照的な、小さな場所で様々なものを植えている家庭菜園の風景もまた、私の大好きな景色の1つです。


 農家の大きな畑もそうですが、家庭菜園には、一目見てその家庭の食卓の様子がわかったり、管理している人の人柄が見えてきたりする楽しみがありますよね。私自身も小さな庭に幾つかの野菜を植えていますが、どれもよく料理に使うものばかり。母も義父も植えるものが少しずつ違うので、畑の表情も当然、違ってきます。それがまた、面白いのです。


自分で畑をやるようになってから、買い物の途中で野菜畑を発見すると立ち止まり、しばらく佇んで眺めてしまうように。そして、「もう水菜が食べごろだ」「あ、追い蒔きしている。何を蒔いたんだろう?」「ここは去年もかぼちゃがあったなぁ」「トウが立ってる。気候のせいかな? それとも蒔きすぎたのかな?」「トマトばっかりだ。トマトが好きなんだなぁ」と勝手に妄想しているのです。


 JRに乗ると、線路沿いに野菜畑が続くところを眺めるのも癖になってしまいました。十数年前だったでしょうか、通学だったか、通勤だったか忘れてしまいましたが、ある日、なんとなく窓の外を眺めていると、せっせと土を起こしている人を見かけたのです。


 そのときは「朝からこんなところを耕しているんだ」くらいにしか感じませんでした。ところが、毎日見ていくうちに、ビニールシートがはずされ、苗が大きくなり、夏には緑一色だった畑が、赤や黄色、紫色などの実を実らせ…たまに作業している人がいると、妙に見入ってしまったりして。


 近所のホームセンターの菜園コーナーは、年々苗や肥料などが充実し、購入する人も増えているようです。本州でも家庭菜園は秘かなブームなのだとか。

 ただ食べるだけでなく、徐々に育っていく姿を眺めながら新鮮な野菜を家族でいただく…当たり前のことかもしれませんが、今の時代、こんな贅沢はありませんよね。


 ガソリンをはじめ、食料品や公共料金、生活必需品、外食など、すべてにおいて値上げのご時勢ですが、そんな中でも少しでも楽しみを見つけて、心豊かに暮らしていきたい。そのためにも、庭やプランターに、食べたい野菜の種を蒔き、育てる喜びをあらゆる面から楽しんでみたいと思っています。


実家の畑のハスカップ

《今回のおいしいモノ》

 実家の畑のハスカップ(=北海道の自生している果実。アイヌの人々が、不老長寿の妙薬として珍重したと言われている)やラズベリーが色づき始め、朝からせっせと摘んではそのまま食べたり、ジャムにしています。もうすぐブルーベリーも色づくかしら?

 身の周りで採れる果実で作るジャムはとってもおいしいし、それを作るひとときは幸せな時間なのです。

ながお みちこ

異業種の職業を持つメンバーが「食」と「農」のあり方を真剣に考え、行動する「食農わくわくねっとわーく北海道」事務局長。食べることと農は一体。自分たちの生活を楽しくするために、「一緒にわくわくしましょう」という思いを実践する。

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