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2007年6月11日
田植え、終了
農村ライター 長尾道子
6月に入り、北海道内の田植えも一段落。ついこの間まで土が見えていた田んぼには水が入り、若草色の小さな稲が風にそよそよと揺れています。
この光景、私が大好きな北海道の晩春の風物詩です。
苗がまだ小さい頃の田んぼは、鏡のようになって様々な自然を美しく映し出します。朝は陽の光を輝かせ、周りの草木を映し出し、夕暮れを今までよりも大きく魅せる。
毎年同じ景色なのだけれど、この光景を目にするたびに北海道の春の終わりを知り、そして無事に田植えが終わった安堵感が生まれます。
私が「農村の姿を多くの人に伝えていこう」と思い立ったのは、この光景の異変に気付いたからでした。
数年前のこの時季、同じようにこの景色を見ていたら、昨年までは確かに一面に水の入った田んぼが広がっていたのですが、その年には虫食いのようにぽつぽつと水の入らない田んぼが何箇所もあり、その不自然さに目に留まったのです。
そして夏の観光シーズンには青々とした稲の中に、そこだけ雑草が生え、景観を壊していました。
そんな場所がいろんなマチに、何箇所も見られるようになりました。
それまでに「離農」 「後継者不足」 「低価格」などの言葉を仕事でも使い、新聞や雑誌でも目にしていましたが、このとき初めてその意味をきちんと理解したような気がします。
それ以来、毎年この季節になると田んぼに水が入るかどうかがとても気になるようになりました。
「うちには跡継ぎがいねぇし、来年で65になるから農家辞めるんだ」
「ウチは小さいから続けられねぇ」
「今は米作っても金になんねぇ」
取材でよく耳にした言葉です。
こうやって辞めていく人たちを見るたびに「私が口にするお米が無くなる日が来るかもしれない」という不安に駆られました。
それから「私ができることは何だろう?」と自問自答し、現在に至ります。
食べ物が作られる現場にいつも足を踏み入れ、他人事ではなく自分のこととして考えていく…その気持ちを忘れずにいようと思わせてくれたのは、この季節の田んぼの姿だったのです。
《今回のおいしいモノ》
玉ねぎ農家の友人から苗をいただき、家の前の小さな小さな庭に植えました。あまった苗は「おひたしにすると甘くてうまいよ」とのことだったので、夕飯の一品に。
ふんわり玉ねぎの香りがして、ほのかに甘くておいしかったです!
北海道は5月の頭に玉ねぎの苗を定植、7月末から8月頭くらいから収穫です。
異業種の職業を持つメンバーが「食」と「農」のあり方を真剣に考え、行動する「食農わくわくねっとわーく北海道」事務局長。食べることと農は一体。自分たちの生活を楽しくするために、「一緒にわくわくしましょう」という思いを実践する。