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2007年5月18日
春、到来
農村ライター 長尾道子
1ヵ月ほど前はまだ雪がちらつき、茶褐色だった田畑や庭が、すっかり色鮮やかになりました。近所を歩くと、桜にこぶし、木蓮、チューリップ、水仙、芝桜、つつじ、タンポポ…とまるで咲き競うかのように次から次へと花を開かせています。
生まれも育ちも北海道の私にとって、こんな春の訪れは当たり前のものですが、本州の方に言わせると、「風情のない」「節操のない」ものに感じるようです。
今月の頭に京都を訪れた際、あるお寺で出会った女性に「北海道は梅も桜も一緒に咲くんでしょ?そんなの節操がなくていやだわ」と言われてしまいました。
私はすかさず「道産子の私もそう思った時期もありました。でも北海道の長い冬を経験すると、風情とか節操とか言う前に待ちわびた春が来る喜びで、我先にと咲く花たちの気持ちがわかるような気がしますよ」と話したんです。
思えば2月に梅、3月に桃、桜の花が咲く本州の季節感を子どもの頃から理解できず、季語の勉強をしたときも心の中で「全然違うのに~」と感じていました。「♪さくら、さくら、弥生の空は~」の歌も「北海道は♪五月の空は~なのに」と。
大人になってからしばらくは、そんな故郷があまり好きになれませんでした。やっぱり風情のある本州のほうがいいなぁと。
5年位前でしょうか。九州に少しだけ暮らしたとき、次から次へと顔を出す筍も、じとじとした梅雨も、焼け焦げそうな夏の強い日差しも、ゆっくりと色づく秋の紅葉もみな初めてで「これが九州の四季なのか」と深く感動したことを覚えています。
それと同時に、北海道の長すぎると思っていた冬や節操のない春もいいものだなぁと感じるようになったのです。12ヵ月のうち、6ヵ月近く雪に覆われ、その後に訪れるほんの1ヵ月か1ヵ月半の短い春の間に一生懸命花を咲かそうとする草木たちを、今は逞しく、そして愛おしいと思っています。
こんな勢いのある春が訪れたら、ハウスの中で元気に育ってきた苗たちが畑に移るとき。本格的な農繁期の到来です。
(※画像をクリックすると大きく表示されます)
《今回のおいしいモノ》
先日知人宅ではじめて頂いたこぶしの花のお茶。
花びら数枚に熱いお湯を注ぐだけのこのお茶は、薄い黄金色でふんわりと花の香りが漂います。 こぶしの花ってお茶にもなるんですね。新たな発見です!
異業種の職業を持つメンバーが「食」と「農」のあり方を真剣に考え、行動する「食農わくわくねっとわーく北海道」事務局長。食べることと農は一体。自分たちの生活を楽しくするために、「一緒にわくわくしましょう」という思いを実践する。