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2007年6月12日
明治大学客員教授 村田 泰夫
農業法人にも中小企業経営のノウハウを提供する――こんなねらいの提携事業が、農林水産省と中小企業庁の協力でスタートする。「農業経営支援と中小企業支援の連携のあり方についての研究会」が5月16日に公表した中間報告で明らかになった。
農業法人の中には、農畜産物の生産にとどまらず、加工、販売にも乗り出しているところが増えている。多角的な事業を展開している農業法人には、一般の製造業や小売流通業を営む中小企業と変らない経営の戦略やノウハウが求められている。そんな中小企業の経営ノウハウを農業法人に伝える仕組みを導入することにしたもの。
具体的には、中小企業庁所管の中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が全国9ヵ所にもつ、相談窓口(中小企業・ベンチャー総合支援センター)を活用する。
企業的な農業経営を目指す農業法人の経営者がまず、日本農業法人協会に相談したいことを伝えると、法人協会が中小機構の窓口に対応を依頼。中小機構に登録している経営アドバイザーや企業OBなどの専門家が、農業法人にアドバイスや情報を提供する。
相談は無料だが、専門家らの派遣は有料。
高度な農業経営体をめざす農業法人の抱える課題は多岐にわたる。販売先の確保。同業者である農業法人とのリレー出荷。生産物の加工委託先の確保。ネット販売など販売ツールの整備。資金の調達。株式の公開準備や上場。
経営の革新や異分野連携による新事業の開拓、そのための支援策やノウハウをもっている中小企業政策部局と、農業の企業的経営に取り組む「担い手」育成をめざす農政部局との連携は、高度な農業経営体をめざす農業法人にとって、大きな励ましとなる。
すでに、地方では経済産業省の九州経済産業局と農水省の九州農政局とが連携して「農工連携推進会議」を設置し、農業と工業との垣根を取り払った協力関係構築の事例がある。こうした試みを応援したい。
しかし、地方によっては、なお役所の縄張り争いや主導権争いが影響してか、行政の連携がスムースに進まないところもあるようだ。
農業を旧来の第一次産業の枠に押し込める政策そのものが破綻している。加工という第二次産業、販売という第三次産業の経験とノウハウを取り組み生かす農政へ、農政のさらなる飛躍を期待したい。
朝日新聞記者として経済政策や農業問題を担当後、論説委員、編集委員。定年退職後、農林漁業金融公庫理事、明治大学客員教授(農学部食料環境政策学科)を歴任。現在は「農」と「食」と「環境」問題に取り組むジャーナリスト。