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2007年12月28日
第6回 国際認証取得に走る中国の食品関連企業
森 路未央
2007年は、輸入国およびその消費者が、中国から世界各国に輸出される農水産物・食品の安全性に大きな不安を抱いた1年であった。中国政府がこの不安解消のため対策を講じた結果、中国企業にとっても、2007年は「食品安全問題解決の延長線上としての対応」に追われる年となった。
その「対応」のひとつとして、前回は企業の生産システム再構築を紹介したが、今回は、信頼性の獲得のために関連認証を取得する企業が増えてきた話を紹介する。
各種認証を取得する企業が増えてきた背景には、“中国産”の国際的信頼性の回復と輸出先市場の拡大を目指さなければ、存続が危ぶまれるのではないか? という生産・輸出企業の危機感がある。
国際的信頼性を回復するために認証を取得する企業は、販売取引先からの要望によるところが多い。生産現場に国際認証を取得させることで、販売取引先は消費者に客観的な安全性を提供したいからだ。
輸出先市場の拡大とは、たとえば中国のある企業の日本への輸出量が全体の90%を占めているような場合に考えられる。
従来は、いったん日本に輸出できなくなると、そのほかの輸出先がなく、中国国内に安価で販売するしか方法がなかった。国内向けよりも高く販売するためには、日本以外の海外市場への輸出・販売ルートを開拓しておけばリスクが緩和される、という考えだろう。そこで、その輸出先国・地域の認証を取得する必要が生じてきたということだ。
認証の種類は、1)新たに国際認証を取得する、2)日系企業が日本で取得した認証に基づいて生産・加工する、3)中国の国内認証を取得する、の3つに分けられる。
1)は、EUREP・GAP、米国FDA認証などの国際認証を取得することで、これまで日本への輸出に依存していた企業がヨーロッパ市場への販売を目指すケースである。
たとえば、山東省でショウガの大産地といわれる安丘市の日本向けショウガ生産・輸出企業では、2006年11月にショウガを専門に生産する400ムー(1ムーは約6.67a)でEUREP・GAPを取得した。
EUREP・GAPを取得するのは、なかなか大変なことだ。対象農場での化学肥料の不使用、専属3名の技術者の配置とEUREP・GAPのルールに従った技術訓練の受講、取得後毎年農場が資格を満たしているかの検査など、多くの条件をクリアすることが求められる。
申請から取得までの手続きにも、手間とお金がかかる。北京にある認可事務手続き代理店のオランダ系コンサルタント企業に事務を委託し、費用は100万元(約1500万円)、さらに認可費用として2,500米ドル(約28~29万円)を要した上、2年の歳月をかけて、「有効期限3年」のEUREP・GAPを取得したという。
最近までに中国企業でEUREP・GAPを取得した企業は、10数社とのことだ。
2)は、JAS規格、ISO、HACCPなど日本で取得した生産・工場管理認証に基づいて、進出先の中国で生産・加工を行うケースである。すでにある一定の輸出・販売顧客を有している日系企業の多くがあてはまる。
3)は、中国国内の生産段階では主に3段階の品質安全レベル(有機食品、緑色食品:減農薬にあたる、無公害食品:これも減農薬にあたる)を設定している。ここ数年、中国政府や国内のスーパーは、特に中国国内に販売先を求める企業に対して、このCHINA・GAPの取得を推奨している。
中国の生産・輸出企業にとって、日本向け輸出はこれからも主力であることにかわりはない。が、より高い安全性を求められている中で生じる輸出リスクや企業のさらなる生産規模拡大を念頭に置くと、日本市場一辺倒でなく、欧米・中東など日本以外の市場に輸出できる環境を整備することが、中国企業の新しい動きとして、台頭しているのである。
(※画像をクリックすると大きく表示されます)
【去看説听味】
中国語で「去」は日本語の「行く」、「看」は「見る」、「説」は「話す」、「听」は「聞く」、「味」は「味わう」を表します。
1973年生まれ。東京農業大学大学院博士後期課程修了・博士(農業経済学)。
2001~2004年、日本学術振興会PD特別研究員(この間に1年半、中国農業大学経済管理学院訪問学者として北京市に滞在)。
2004~2006年、在広州日本国総領事館専門調査員(華南地域の経済担当)。
2006年4月から独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)輸出促進・農水産部農水産調査課職員。
専門は中国の農業と農村部の経済問題。