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ろみお的チャイナ!“去看説听味”!! 【5】

2007年11月 9日

第5回 中国の対日輸出向け食品の安全問題

    森 路未央


 前回のコラムでは、中国産は「未だ問題があるにせよ、・・・安全性は、着実に高まってきている」と述べた。そして、その理由を8つ取り上げた。今回は、そのなかでも重要な「生産企業の現状」をお伝えする。


 8月末に一週間ほど、今や“日本の台所”である山東省へ、半年ぶりに行ってきた。

 山東省は、日本の食品企業や商社が90年代以降に進出し、日本向けの農水産物・食品の生産・製造拠点が設立された地域である。


 半年前に行った時は、主に、青島や煙台を中心とした山東半島の中国食品企業を回った。今回は、もう少し内陸地域の企業を見て回ることが目的だった。


 内陸地域の企業を見ておきたかったのは、今後、コスト削減のために、この地域へ産地や工場が移転する可能性があるからだ。

 青島や煙台などに代表される山東省沿海地域は、食品企業だけでなく、電子など非農水産品の工場なども進出している。そのため地代や労賃が上昇し、労働集約的産業にとって収益が上げられるかどうかが問われる状況にある。


 そうした中で、すでに山東省内の内陸地域で展開されている食品企業の現状を、把握しておきたかったのだ。


大規模な輸出向け農場(筆者提供)


 青島での所用の翌日、まず、青島から2時間ほど北に走った維坊市の野菜生産・加工企業を視察した。その後、維坊駅から“和諧号”と呼ばれる高速鉄道に乗り、済南駅に到着した。(この“和諧号”は、胡錦濤・国家主席が目指す“和諧社会”にちなんで命名された高速列車だが、どこからみても車両は東海道新幹線だった・・・。)


 済南からさらに車で4時間ほど南下し、安徽省と江蘇省に接するところにある済寧市に着く。


 済寧市は中国の“ニンニクの都”と呼ばれる中国最大のニンニク大産地である。ニンニク原料のほか、小粒ニンニク、すりニンニクなどに加工され日本や米国に輸出している。日本のラーメン屋のカウンターにおいてあるすりニンニクも生産しているようだ。

 済寧産ニンニクはトウモロコシを収穫後の9月に苗付けし、翌年の6月に収穫される。この地は小麦→トウモロコシの伝統的な輪作体制で、もともと一部農家でニンニクを作付していた。


 その面積が急速に拡大したのは90年代からで、輸出需要に対応するために多くの農家が地元ニンニク加工・輸出企業と契約した経緯がある。


簡易な害虫駆除を設置(筆者提供)

 ここ山東省の内陸部でも、今や沿海部に位置する企業と同様の生産モデルで、生鮮野菜や冷凍野菜の原料が生産されていた。


 中国の輸出向け生産企業は、省や市ごとに認可制をとっている。そして、輸出認可を受けた企業は、ほぼ同一の生産モデルで生産を管理している。 

 そのモデルはピラミッド型である。頂点は企業のトップ、その下に企業から雇われた生産部門の職、そのまた下にはニンニク生産を管理するリーダー(地元村のニンニク生産技術に詳しい人材の中から企業が面接して任命)、その下が農家である。

 一農家あたり約10ムー(1ムーは6.67a)の農地を管理し、農家10世帯を一つのグループ(例えばA組)にし、A組を地元村の人材が管理する、というしくみである。


 90年代後半から、山東省の日本向け野菜生産基地の現場を見続けてきた。ここ数年、ますます規模が拡大してきている感がある。日本ではなかなか規模拡大をできない状況だが、中国では予想以上に規模が拡大し、量の問題はすでに解決しているといえる。


 また、問題になっている質の問題も徐々に良くなってはいるが、まだまだ十分とはいえない。
 質の問題を検査し安全性を科学的に検証する食品検査ビジネス、最近中国が強化するトレーサビリティシステム、生産資材の供給などにビジネスチャンスがあると感じた。


(※画像をクリックすると大きく表示されます)


【去看説听味】
中国語で「去」は日本語の「行く」、「看」は「見る」、「説」は「話す」、「听」は「聞く」、「味」は「味わう」を表します。

もり ろみお

1973年生まれ。東京農業大学大学院博士後期課程修了・博士(農業経済学)。
2001~2004年、日本学術振興会PD特別研究員(この間に1年半、中国農業大学経済管理学院訪問学者として北京市に滞在)。
2004~2006年、在広州日本国総領事館専門調査員(華南地域の経済担当)。
2006年4月から独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)輸出促進・農水産部農水産調査課職員。
専門は中国の農業と農村部の経済問題。

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