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ろみお的チャイナ!“去看説听味”!! 【4】

2007年9月25日

第4回 中国の輸入農水産物・食品の安全問題

    森 路未央


 ここ数カ月、中国から輸入される農水産物・食品に対する、安全性を巡るさまざまな報道をよく目にする。

 「またか!中国の輸入食品から●●が検出!」などフレーズはさまざまで、正直今に始まったことではないが、中国の農村、輸出農水産物・食品の生産現場を少しばかり見てきた者の一人として、最近の報道は少しやりすぎの感がする。


 反日デモの反動などによって、“チャイナ・アレルギー”が湧出してきたのか、確かに100%安全とは言い切れない状況であるため、報道すること自体は良いことだと思うが・・・。


 輸出国を批判する前に、まず、我が国が置かれている状況を振り返ってみよう。


 我が国の食料自給率は、今や39%(カロリーベース)にまで低落してしまった。しかも低経済成長が続き、食費に多くを支出できない状況である。

 輸入農水産物・食品への依存が高いのは中食、外食部門だが、そのおかげで、我々はラーメンを一杯200円台で食べられ、300円台の「のり弁」にはたくさんのおかずが盛り付けられているともいえる。しかも、季節を問わず一年中なのである。

 なぜそれが可能なのか、この安価な農水産物・食品を、どこで、誰が、どうやって作っているのかと、皆さんは考えたことがあるだろうか。

 答えは「中国」なのだが、それでは、中国の生産・輸出現場では、どのようにその工程は管理されているのだろうか?


 中国の対日輸出生産は、90年代、日系企業による開発輸入(※1)によって始まったことはよく知られている。

 中国の生産現場では、02年の冷凍ホウレンソウ問題、長ネギ・シイタケ・い草に対する暫定セーフガード措置など、日本から提起されたさまざまな問題を、その都度乗り越えてきた。

 06年のポジティブリスト制度は施行直後に大きく混乱したが、中国の対日輸出量は05年より増加した結果となった。未だ問題があるにせよ、中国の対日輸出農水産物・食品の安全性は、着実に高まってきていると考えている。


 その理由は、主に以下の現象から理解できるのではなかろうか。


 1.ここ数年、中国国内でも食品安全問題が話題になり、人民の関心が高まることで、生産者の意識も同時に高まっている
 2.政府輸出検査部門(国家質検総局をはじめとした省・市・県レベルの同部門)の検査レベルと意識が向上してきた
 3.輸出できる企業の絞り込みがますます厳しくなっている
 4.生産モデルが収斂してきた
 5.生産企業が現地化してきた
 6.各種認証を取得する企業が増えてきた
 7.日本の検査機関も現地に進出するようになってきた
 8.流通レベルが上がってきた


 しかし、未だ十分な状況が整ったとは言えない。課題が多く残されていることも確かだ。
 次回以降で、上記項目の現状をお伝えしたいと思う。

※1 先進国が発展途上国に資金・技術を投入し、そこで一次産品などを開発・生産して輸入すること。

(画像提供:独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)

(※画像をクリックすると大きく表示されます)


【去看説听味】
中国語で「去」は日本語の「行く」、「看」は「見る」、「説」は「話す」、「听」は「聞く」、「味」は「味わう」を表します。

もり ろみお

1973年生まれ。東京農業大学大学院博士後期課程修了・博士(農業経済学)。
2001~2004年、日本学術振興会PD特別研究員(この間に1年半、中国農業大学経済管理学院訪問学者として北京市に滞在)。
2004~2006年、在広州日本国総領事館専門調査員(華南地域の経済担当)。
2006年4月から独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)輸出促進・農水産部農水産調査課職員。
専門は中国の農業と農村部の経済問題。

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