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信州発 “農”と言える日本人 【11】

2010年2月24日

「理事の選出」と「農家の生き残り」

         高見澤勇太


 相撲界では、貴乃花親方の理事選立候補が、マスコミをにぎわせた。無謀とも思われる立候補であったが、貴乃花親方はみごと当選した。

 相撲協会の理事選は、5つある各一門内で、候補者を調整するのが慣例である。貴乃花親方は、改革を訴えて一門を離脱し、立候補した。旧態依然の体質が残る相撲協会に、新しい風を吹き込むことができるのか? 見守りたい。


takamizawa11_image1.jpg さて、長野八ヶ岳農協の理事改選も3月にある。偶然、相撲界と同じ5つある支所から、23名の理事が選出される。
 各支所に割り当てられた理事の人数は、組合員数で決められている。選出される候補者は、農家・農協や役場の退職者が一般的である。農業や組合の運営・地域の事情などに、精通している方が多い。
 しかし、現在の世の中の流れを読んでマーケットに仕掛けたり、斬新なアイデアの提案や、野菜を売り込むための戦略的手法を展開することは、苦手としているのが歯がゆい。


 先日、(有)トップリバー(※)代表取締役の嶋崎秀樹氏の講演会に参加した。
 その嶋崎氏の持論である“儲かる農業”を実現する上での考え方を1つ紹介したい。それは、「300点の理論」である。


 農業は300点で評価される。生産が100点で、マネジメントが200点。既存の農家・農協は、生産の段階では100点を取るが、それを売りさばく段階では、200点中70点しか取れない。少なくとも200点以上は欲しいのに、170点しか取れない。これでは野菜を適正価格では売れない。

 トップリバーでは、農業歴1年~5年程の“ど素人”が野菜栽培をするが、地元農家のアドバイスやコンピューターのデータなどを駆使して、70点以上の生産ができる。マネジメントでは、持ち前の営業力で160点以上をかせげるという。足して230点以上は必ず出す。こうして安定した収入を確保できる。


takamizawa11_image2.jpg この200点を占めるマネジメントを高得点にする秘訣は、農業界では軽視されてきたことばかりである。

(1)自動車業界の大企業経営にたとえると、ネジ1本の単価まで考えるコスト計算をする。▼今までの農家はどんぶり勘定である。
(2)契約栽培を多くして、直接スーパーになどに納める。それも前年の12月には次年度の数量を決定して、計画的な販売をする。▼今までの農家はお天道様任せで、細かな出荷の予測はしない。また、契約数量を守れない。
(3)農業のみならず、政治や経済のきめ細かい情報収集を行い、相手の担当に価格を操縦させない。▼今までの農家は市場任せである。


 あきらめる訳にはいかない。こんな状況の中でも、生き残る方法はあるはずだ。先見の明とリーダーシップを持ったカリスマ理事の誕生と、農家は「素直」に「感謝」の気持ちを持って、お客さんの立場に立った野菜作りをすれば、きっと持続可能な農業ができると信じたい。


(有)トップリバー 代表取締役 嶋崎秀樹 
プロフィール
1959年長野県生まれ。サラリーマンで営業をしていたが退社。2000年に農業生産法人トップリバーを設立。9年で年商10億円の企業に育て上げる。
2009年にトップリバー設立から現在に至るまでの経緯と農業経営の基本理念を著した『もうかる農業「ど素人集団」の革命』(嶋崎秀樹著 竹書房)を出版した。

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」

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