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農家の相続を考える【2】

2018年6月20日

農地の納税猶予の特例


ランドマーク税理士法人 代表税理士 清田幸弘   


 農業を営んでいた父親が亡くなり、農地については長男が相続することになった場合、一定の要件の下、納税猶予の特例を受けることができます。


◆農地の納税猶予の特例
 納税猶予の特例とは、農業を営んでいた被相続人から、農業の用に供されていた農地等を取得した農業相続人が、その農地等において引続き農業を営む場合には、一定の要件の下に相続税額の納税を猶予するというものです。
 この特例は、農業経営を継続するための猶予制度ですから、農業相続人が死亡した場合など、一定の事由に該当しない限り免除されません。
 譲渡や農地以外への転用、または農業経営の廃止等、農業を営まなくなった場合には、利子税とともに相続税を納付しなければならないため、農業を続けていく心構えが大切です。

 納税猶予の金額は、相続税評価額から農業投資価格を差引いた金額に基づいて算出されます。


<相続税の納税猶予の特例>

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<特例の対象となる農地等>


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注)『全部確定』『一部確定』とは、納税猶予を受けている相続税額の全部、または一部を利子税とともに納付しなければならないことをいいます。


農業投資価格(平成29年分)                 10a当たり:千円
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※農業投資価格とは、農業の用に供すべく農地として取引きされる場合に通常認められる価格のこと


<納税猶予の特例を受けるための手続きおよび必要書類>
(1)相続税の納税猶予に関する適格者証明書
 農業委員会による、被相続人が死亡の日まで農業を営んでいた証明書(相続税の納税猶予に関する適格者証明書)が必要です。
 また、農業相続人は、被相続人の相続人でなければなりません。農業経営を行うと認められる人で、同じく適格者証明書が必要です。
(2)相続税の申告・納付の期限
 被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内です。期限までに申告するとともに、納税猶予税額および、利子税の額に見合う担保の提供が必要です。
(3)納税猶予の特例適用の農地等該当証明書
 特定市の区域内に農地を所有している場合には、市長が証明する「納税猶予の特例適用の農地等該当証明書」が必要です。特定市とは、三大都市圏(首都圏・中部圏・近畿圏)で指定されています。
(4)引続き農業経営を行っている旨の証明書
 農業委員会で「引続き農業経営を行っている旨の証明書」を発行してもらい、「相続税の納税猶予の継続届出書」に添付し、3年ごとに税務署に提出する必要があります。


 納税猶予税額の免除は、農業相続人の死亡や農業を20年間継続した場合(市街化区域内の対象農地で都市営農農地がない場合)等の条件がありますので、十分考慮してください。
 書類によっては、日数を要するものがありますので注意が必要です。


〔平成21年改正事項 比較表〕
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(出所)「相続税等納税猶予制度改正の概要について」全国農業会議所 平成20年12月
※1 改正の特例は、農地関連法案施行後からの適用
※2 一時的に営農困難な場合では、家族による耕作又は第三者へ農作業の委託(作業料の支払)等し、耕作放棄としないことが必要(農地法3条第1項の使用収益権が設定された状態となれば確定となる)
※3 利子税の引き下げは、新制度適用後の年から適用。現行適用されている農地はその年々の利率で計算することになる。
※4 平成29年分の利子税は0.8%(平成26年4月1日から平成33年3月31日までの間に、特例農地等について収用交換等による 譲渡をした場合には、利子税の額が0(ゼロ)に軽減される)

せいた ゆきひろ

神奈川県横浜市に農家の長男として生まれる。明治大学出身。横浜農協に9年間勤務した後、税理士に転身、1997年に清田幸弘税理士事務所を設立。ランドマーク税理士法人に組織変更し現在では、東京・丸の内の無料相談窓口『丸の内相続プラザ』、横浜ランドマークタワーを始め、首都圏に12の本支店を展開している。

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