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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【119】

2023年12月18日

野菜摂取向上に向けた取組みについて 八丈島「栄養・食生活ネットワーク会議」
~野菜摂取量(1日当たり)350g以上の人の割合を増やすために~


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 先日、東京都島しょ保健所八丈島出張所からの依頼で、「栄養・食生活ネットワーク会議」の座長を務めました。この会議は、野菜摂取量向上の普及啓発のため、八丈島健康福祉課、産業観光課、青ヶ島村総務課、八丈支所産業化、八丈商工会、八丈島食品衛生協会、八丈出張所栄養士会により設置されたもの。
 以前、三宅島で同様の会議に参加しましたが、八丈島の島民も、他の地域に比べて野菜摂取量が少ない傾向にあります。
 今回は、年代別に見て野菜の摂取量が著しく少ない20~30代に対し、どのようなアプローチをすれば野菜の摂取が増えるかという点に絞って、他の地域の事例紹介を含めた提案をしました。


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 前日に八丈島に入り、会議に先駆けて島内のスーパーへ。野菜、カット野菜、惣菜等の販売状況を見学し、価格や品ぞろえが若者世代に野菜を購入しやすい状況かどうかを見て回りました。保健所の担当者に聞くと、「ほかの島に比べれば、生鮮野菜の品揃えは良い方だと思うが、野菜を使った惣菜やカット野菜は数が少なく、仕事帰りには売り切れていることが多い」とのことでした。


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 また、保育園や小中学校給食センターを訪ね、栄養士の方々から、島の子どもたちの食育活動についても話を聞きました。
 保育園では野菜の栽培を行っており、春から夏にかけてはキュウリ、トマト、ミニトマト、ピーマン、ナス、カボチャ、スイカ、メロン、秋から冬にかけてはキャベツ、ブロッコリー、セロリ、ロマネスコなど、数多くの野菜を育てており、子どもたちが収穫した後は、園内の給食室で調理して提供しているとのこと。保育園の子どもたちにとって、野菜は身近な存在のようでした。


 小中学校でも、子どもが野菜に興味を持てるよう、栄養士が生活科で野菜の種類や栄養の授業を行っているようですが、実際に給食に使える野菜の種類が少ないこと、特産である明日葉が子どもにはあまり人気がないことなどの難しさも、聞かせてもらいました。


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 会議では以下の5つの観点から、野菜摂取向上に向けた取り組みの講演を行いました。
 「教育と情報提供」では、食事が親の管理下から外れる青年期の学生たちへの情報提供を行い、意識を高める重要性を話しました。離島では、高校卒業後は進学や就職のために親元を離れて自活する人が多いので、野菜を含むバランスのとれた食事を習慣にしてほしいと思います。
 「簡単な調理法の普及」では、忙しい生活に合った調理法、例えばゆでるだけ、焼くだけ、レンジだけといった調理の簡単なもの、塩だけ、醤油だけといった単一の調味料でできるものなど、「○○だけ」でできる料理の具体例を紹介しました。
 「食事の共有と社交性」では、野菜を使った持ち寄りパーティーや料理イベントなど、楽しみながら野菜をとれる事例を挙げました。
 「価格とアクセシビリティ」では、20~30代が仕事中や仕事帰りに十分野菜を購入できるようなアイデアを提案しました。
 「地場産品をサポート」では、地元農家の収穫体験の様子や、農家さんが企画したイベントの事例紹介を行いました。


 一朝一夕に解決するテーマではありませんが、参加いただいた方々からは、「今まで気づかなかった有効なアイデアや解決の糸口が多々あった」「具体的な内容でわかりやすかった」などの評価をいただきました。時間をかけて準備した甲斐があったと、うれしく思います。


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 また、帰りには、昨年の八丈島訪問時に知り合いになった農家の浅沼さんにお会いすることができ、明日葉をお土産にいただきました。会議で紹介した「明日葉とコーンビーフのペペロンチーノ」のスパゲティで早速、おいしくいただきました。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。

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