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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【103】

2022年8月16日

八丈島の島野菜とうみかぜ椎茸


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 7月に少し早い夏期休暇を取り、八丈島を訪ねてきました。島内をドライブしたり、スノーケリングを楽しんだり、のんびりした休暇になりました。
 旅行の一番の楽しみといえば、その土地ならではの料理。海に囲まれた島だけあって、鮮度のよい刺身や島寿司(醤油漬けした寿司ネタに、ワサビではなく辛子をのせたもの)など、たくさんの魚料理を堪能しましたが、やはり気になるのはその土地で栽培される野菜たち。インターネットで検索したりスーパーマーケットを物色したりして、是非とも話を聞いてみたいと思う生産者さんにたどり着き、連絡をとってみると、快く会っていただけることになりました。


 訪れたのは、八丈町三根にある浅沼裕子さんの畑で、八丈富士と三原山、2つの山の間にあります。約束の時間に伺うと、作業場で「ロベ」の出荷作業中でした。「ロベ」は「フェニックス・ロベレニー」の略で、ヤシ科の観葉植物。八丈島は花きの栽培が盛んで、ロベを栽培している人がとても多いとのこと。「ロベは歳をとってもできるから、お年寄りでも作っている人が多いんですよ」とのこと。とはいえ、1本1本、茎にあるトゲを鎌でそぎ落とし、葉先が傷ついていないかチェックをするのは、かなり手間のかかる作業です。


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 畑にはサトイモの葉が元気よく育っていました。芋類は雨の多い八丈島の気候に合っていて、おいしいイモが育つのだそうです。
 浅沼さんは、一度は島を出て暮らしていましたが、子育て真っ最中の時に八丈島に戻り、安心して食べられる野菜を子どもに食べさせたいと野菜作りを始めたそうです。最初はキュウリやピーマンなどいろいろな野菜を作ってみましたが、日照不足や雨、害虫の被害などにあい、島には向き不向きの野菜があると身をもって知ったそうです。有機質肥料や良質な堆肥による土作りを行い、化学合成農薬と化学肥料を削減した栽培にこだわり、今では「東京都エコ農産物」として認定を受けています。


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 サトイモの横には、これから旬を迎えるオクラがありました。「昨年はとてもよくできたのだけど、今年はどうかなぁ。農業は毎年気候に左右されるから」と、裕子さん。オクラの畝の間には見慣れない植物が植わっていましたが、これは熱帯植物のストレチア。オクラが大きくなるまでの風よけになるそうです。

tashiro_103_8.jpg 八丈島でオクラは「ねり」と呼ばれ、とても人気のある野菜です。収穫期には2m近くに成長し、品種はふだん見かけない、角がなく丸いオクラです。20cmほどの長さになっても筋がやわらかく、おいしく食べられるのが特徴です。

 「八丈島のような温暖な気候で減農薬栽培を続けていくことは本当に大変で、周囲の人からは止めた方がいいと言われることもあります。コロナやウクライナの戦争の影響でますます厳しいことが多いですが、八丈島のきれいな空気と水、力強い太陽光を浴びてできる、おいしい野菜を家族に、そして島の皆さんに届けたいと思っています」と、素敵な笑顔で話してくれました。


 そして、もう一つ紹介したいのが「うみかぜ椎茸」。島内の飲食店やお土産屋さん、至る所で見かけたその椎茸は、島の南側にある大竜ファームさんで栽培されています。群馬県産の菌床に国産の椎茸菌を植え付け、薬剤防除をせずに育てています。椎茸は同じ菌床、同じ椎茸菌でも、育つ環境で生育や味に大きな違いが出るそうで、八丈島の温暖な気候、椎茸の名前にもなっている「うみかぜ」を受け、肉厚でしっとりやわらかく、えぐみのない椎茸に育つとのことです。


tashiro_103_6.jpg 大竜ファームでは見学や収穫体験も行っているので、栽培の様子を見せてもらいました。椎茸菌を植え付けた菌床をたっぷりの水につけると、ポコポコと小さな椎茸がでてきます。これを「芽かき」して大きな椎茸になるよう育てます。
 収穫が終わった菌床を再度水に浸けると、同じように椎茸が出てきて、3回まで収穫可能とのことでした。
 宿泊先のホテルや訪れた居酒屋で食べた「うみかぜ椎茸」の天ぷらのおいしかったこと!

 八丈島の野菜をこちらで購入するのは難しいですが、ぜひまた八丈島を訪ねて、島の野菜を味わってみたいと思います。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。

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