MENU
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2021年12月15日
伊豆大島、明日葉の圃場見学
11月に訪れた伊豆大島。前回のコラムで紹介した、野菜の摂取量を増やす工夫や明日葉の料理提案の講座が目的でした。せっかくなので、明日葉の圃場見学ができないかと保健所の担当の方に相談したところ、快く生産者さんに連絡をとってくださり、講座の空き時間を利用して圃場を訪ねることができました。
訪れたのは、島の南側斜面に広がる井村和子さんの畑。あいにくの雨の中でしたが、山の麓からなだらかな斜面を上り、左右に広がる明日葉を見ながら、栽培のお話を聞きました。
明日葉には赤茎と青茎があり、大島に自生しているものは赤茎。でも、調理したときの見ための良さから、井村さんは青茎を中心に市場出荷しているとのことでした。実際に明日葉を見ながら青と赤の違いを説明してもらいました。茎の節にうっすら筋状に赤い線が入っているだけでも赤茎に分類するそうで、素人目には判断がむつかしいと感じました。
旬は3~4月と10~11月の2回。訪ねたときはちょうど最盛期で、本来であれば午前中から14時頃まで収穫、午後は出荷作業を行います。この日は雨のため収穫作業はお休みでしたが、収穫方法を見せてもらいました。
収穫は、手のひらに収まるほどの小さな収穫用のカッターを使います。
明日葉の切り口ににじむ黄色の液体は、明日葉特有の成分「カルコン」です。抗菌作用や抗潰瘍作用などの効果が期待される物質で、このカルコンを含むため、明日葉は健康食品としても注目されています。
きれいな畝に青々とした明日葉が並んでいましたが、猿やきょんによる被害が多いとのこと。たった2日ほどの滞在でも、車で道路を走っている時にきょんを見かけたので、その被害は深刻なのだろうと思います。
また、畑の間には必ずハンノキが植えられていましたが、ハンノキの根にできる「根粒菌」が空気中の窒素を固定して明日葉の肥料となるため、明日葉の畑には欠かせないものだそうです。さらに、夏になるとハンノキの葉が茂り、明日葉を強い日射しから守ってくれるとのこと。
明日葉は自生もしていますが、井村さんの畑では鶏糞などの肥料を施し、必要に応じて植え替えを行うなど、手をかけることで、やわらくおいしい明日葉に育つとのことでした。
畑を離れ、井村さんの作業場とご自宅に伺い、出荷作業の様子や日葉料理を見学させてもらいました。
作業場に掲示してあった「出荷規格」を見ると、
・葉が8割以上きれいに開いて、つやのあるうちに収穫する。
・長さ32cmで茎を切りそろえる。
・虫・病気の被害葉は入れない。
・傷みやすいので葉を切ることは避ける。
と細かな規格があり、赤茎を見落とさないように明るいライトが設置され、長さを揃えるための自作の板などがありました。
井村さんのご自宅の台所で、明日葉のゆで方や手軽に作れる料理を習いました。
明日葉は、まず鍋に湯を沸かして3分ほど下ゆでします。茎の下の方を輪ゴムで留めてからゆでるのがコツ。調理して茎と葉を分けるときに、ばらけないようにするためです。
4~5cmほどの長さに切った茎は、昆布つゆと小口切りにした唐辛子に漬け込むと、ごはんやお酒の進む一品に。刻んだ葉は鰹節と島海苔(岩海苔を乾燥させたもの)と一緒に油で炒め、昆布つゆで味付けすると旨みたっぷりの味に。そのまま食べても、炒飯の具にしても、おいしいとのこと。
セリ科特有のさわやかな香りが特徴の野菜なので、私の講座でも、バジルやパセリといったハーブの代わりに明日葉を使う料理を紹介しましたが、下ゆですると香りも苦みも和らぐので、ほかの青菜と同じように、いろいろな料理に使えます。
ビタミン、ミネラル、そして健康効果が期待できるカルコンを含む明日葉。店頭で見かけたら必ず購入したい野菜のひとつになりました。
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。