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2020年7月17日
蓮の葉香るレンコンハウスを訪ねて
お正月の縁起物食材として欠かせないレンコン。秋から冬にかけて多く収穫される野菜ですが、新レンコンと呼ばれる早掘りのレンコンが間もなく収穫期を迎えます。
今回は夏の食卓にふさわしいレンコン料理のレシピ作成の依頼を受けた、茨城県霞ケ浦にあるレンコン農園「野口農園」を訪ねました。
テレビなどのメディアで見るレンコンの圃場風景といえば、胸まであるゴムの胴長靴を身に着け、沼地の底からレンコンを掘り出すというもの。「せっかくならば映像では体感できない『蓮の葉の香り』を嗅いでみませんか?」という野口農園でマーケティングを担当する野口憲一さんの提案で、収穫直前のレンコンハウスを見学させてもらいました。
梅雨の晴れ間で外気温の高い日ということもあり、昼前というのにハウスの中は温度も湿度も高く、一歩足を踏み入れただけで額から汗が噴き出るほど。ところがハウスの中は、青々として清々しい蓮の葉の香りが充満していて心地よいのです。ハウスならではの、この香り。露地栽培が一般的なレンコンの圃場では味わえない貴重な体験ができました。
●野口農園のレンコン
霞ケ浦周辺は、減反政策以降、豊富な水と肥沃な土地柄から多くの農家がレンコンに転作したことにより、この40年ほどで日本一の生産量を誇る有数のレンコン生産地になったといいます。
左 :見渡す限りのレンコン圃場
右 :市内の直売所には「日本一」のポスター
そんなレンコン農家が多い中、野口農園は大正15年から霞ケ浦でレンコン栽培を行ってきた老舗のレンコン農家。ハウス栽培を茨城県で一早く取り入れるなど、レンコンの品質向上に力を注いでいます。
野口農園では、食感がよく甘みがあり「味」がよいとされる品種「あじよし」を栽培しています。この甘みのせいで、鴨などの水鳥やイノシシなどによる被害が多いといいます。また、ほかの品種に比べて折れやすく収穫に手間がかかるため、「あじよし」を栽培する農家は少ないといいます。
量より質にこだわった野口農園のレンコンは、その味に惚れこんだ星付きの高級和食店のオーナーや、パリ・ニューヨークなど海外の高級デパートから注文が入るという特別なレンコン。私は数カ月前、レシピ考案のため野口農園から送ってもらったレンコンを食べましたが、みずみずしくシャキシャキとした食感、果物を食べた後のようなほのかな甘みに、思わず笑みがこぼれました。
右 :レンコンの葉の香り
●「1本5000円のレンコン」というブランディング
圃場を案内してくれた野口憲一さんは、レンコンの生産に従事していますが、民俗学・社会学の研究者としても活躍している、農家としては異色の人物です。
レンコンは、大量に栽培されるようになって、価格が大きく下がりました。そこで野口農園では、生産性を高めるのではなく、徹底的に品質の向上に努め、レンコンの価値を高める知恵を駆使して「1本5000円」という超高級レンコンのブランドを確立しました。レンコン農家に生まれてレンコン栽培の苦労をよく知っているからこそ、成功したブランディングではないかと思います。詳細は、野口 憲一著『一本5000円のレンコンがバカ売れする理由』(新潮社)に記されています。
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。