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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【72】

2019年12月17日

サフランの花を訪ねて山梨県へ


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 山梨県に住む野菜ソムリエの友人から「サフランの花を見たことがありますか」と尋ねられ、サフランと山梨が結びつかずに驚きました。
 サフランといえば、スペイン料理のパエリアやフランス料理のブイヤベースの色付けに使われるスパイス、花のめしべのみを利用するためとても高価なもの、そんな知識しか持ちあわせていませんでした。そのサフランが山梨で栽培されており、まさにこの時期が開花の季節だと聞き、サフランの花を見に山梨を訪ねてきました。


tashiro_72_1.jpg サフランを栽培する甲府市の「Kitsune Farm(キツネファーム)」代表の峰岸一郎さんによると、ヨーロッパでは露地栽培が一般的ですが、Kitsune Farmでは室内で開花させる室内栽培を行っています。1900年ころから大分県竹田市が栽培に取り組み、日本の気候に合わせて室内栽培をはじめたもので、峰岸さんはその方法を学んで事業を始めました。


 サフランは、11月から12月にかけて、色鮮やかな紫色の花を咲かせます。今年は秋から気温の高い日が多く、例年より3週間ほど開花が遅かったとのことで、私が訪ねた12月1日は収穫の真っ只中でした。
 サフランの収穫は花の中心にある3本の真っ赤なめしべだけを摘み取ります。それを乾燥させたものが市販されているスパイスの「サフラン」。手作業で摘み取る上、1つの花からほんの少ししか取れないので、高価になるのも納得できます。


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 1つの球根から1シーズンに3回ほど花が咲きます。花が終わった球根は、すぐに芽欠き作業をして畑に植え付けます。土の中で大きく育ち分球した球根を5月に掘り起こして乾燥させ、木箱に並べて倉庫内の棚に並べます。その後、光も水も与えずに5ヵ月ほど経つと花を咲かせるのです。


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 サフランが日本で栽培されていることは初めて知りましたが、江戸時代から栽培が始まっていたということにも驚きました。当時は食用ではなく、もっぱら「血のめぐりをよくする」生薬として利用されていたとのこと。資料として保存されている薬の袋の中には、私が昔飲んだことのある「実母散」もありました。
 サフランは料理の香りや色付けとして利用されますが、香り成分、色素成分に抗腫瘍作用や脳神経保護作用などがあるという研究も進んでいるそうです。


 また、サフランには品質を定める国際規格「ISO(ISO3632-2)」があり、Kitsune Farmでは3段階ある基準の最高位「Category Ⅰ」の品質認証を受けています。さらに、日本初のサフランの「有機JAS認証」と「ASIA GAP認証」も取得しており、消費者への安心感、他の産地との差別化を図っています。


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 峰岸さんは、近隣の障がい者施設の作業の一環としてサフラン栽培の指導や、お茶やキャンディーなどサフラン加工品の商品開発なども行っていて、さまざまな取り組みについて、話を聞かせてもらいました。
 今まで高価なものだからと敬遠しがちだったサフランですが、機会があれば使ってみようと思います。

 分けていただいたサフランを使ってブイヤベースを作りました。魚介の旨味とサフランの香りが豊かな、ちょっとぜいたくなスープです。


【ブイヤベース】
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【材料】(2人分)
真鯛切り身     2切れ
有頭エビ      2尾
アサリ       50g
イカ        1杯
セロリ       30g
ニンニク      1片
オリーブオイル   小さじ2
カブ        2個
サフラン      ひとつまみ
水         500cc
トマトペースト   大さじ1
塩         小さじ2分の1
ブロッコリー    4房


【作り方】
① 水にサフランを入れる。
② 真鯛切り身に塩(分量外)を少々ふり、しばらく置いて水気をふきとる。有頭エビは背ワタを取る。アサリは砂を出してよく洗う。イカは輪切りにする。
③ セロリ、ニンニクはみじん切りにする。
④ オリーブオイルをひいたフライパンに③を入れて炒め、①、トマトペースト、塩を入れて沸かす。
⑤ ④に②、半分に切ったカブ、ブロッコリーを入れて蓋をし、アサリの口が開くまで加熱する。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。

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