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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【61】

2019年1月16日

「食べる花」を楽しむ旅 ~ホーチミン旅行~


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 近年、「エディブルフラワー」と呼ばれる食べられる花が話題です。スウィートピーやパンジー、キンギョソウなど、色とりどりの鮮やかな花を、ケーキなどのスウィーツやサラダ、料理の付け合わせとして楽しみます。レストランなどの飲食店だけでなく、一般の家庭でも、写真映えする料理を作る人が増えているので、需要の増えてきた食材のひとつなのではないでしょうか。
 これらは、「見て」楽しむ食べられる花ですが、よその国では立派な「食材」のひとつとして食べられている花があることを知りました。


 今回訪ねたのはベトナム南部のホーチミン、かつてサイゴンと呼ばれた都市です。街の中心部はおびただしい数のオートバイがところ狭しと走っており、その座席は2人乗りどころではなく3人、4人乗りが当たりまえ。活気あふれる街に圧倒されます。しかし、郊外では依然として農業に従事する人が多く、農業の近代化・規模拡大も進んでいるようです。


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 米やコーヒー、コショウなどのスパイス類が多く栽培されているイメージを持っていましたが、市場やマーケットの売り場にある野菜の種類の多さにも驚きました。日本でもおなじみの野菜、南国特有の葉物野菜やハーブ類、中でも目に留まったのが「花」です。日本のエディブルフラワーとは異なり、「野菜」として調理するための食材です。1年を通して暖かいホーチミンなどのベトナム南部では、植物の花を使った料理がいろいろあるようです。四季のある日本では1年に1度しか咲かない花も、ベトナムのような南国では生育期間がとても短く、1年に何度も花や実をつけるので、このような食習慣が生まれたのでしょう。レストランだけでなく家庭でも、花を使った料理は人気のようです。


 一般的なものは、カボチャなどのウリ科の花。大きな黄色い花で、炒め物や鍋の具材として食べられます。茎の部分は独特の食感で、濃くて深みのある味です。白く大きな花はマメ科の花。スープや鍋などによく使われ、見かけと異なりほんのり苦みがあります。
 今回の一番のお気に入りは「ティエンリー」、日本名で夜来香(イエライシャン)のつぼみです。緑色の小さなつぼみが集まって、コリコリとした食感でクセのない味です。ホーチミンではニンニクを利かせた炒め物で多く目にしました。日本でも中華料理でよく目にする金針菜やニラのつぼみ(花ニラ)などもポピュラーなようです。


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左 :デパートで売られていたカボチャの花
右 :夜来香のつぼみ、「ティエンリー」のニンニク炒め


 そんな花を一度に楽しめる鍋料理「花鍋」(ラウホア/Lau Hoa Lau=鍋料理、Hoa=花)を食べさせるレストランがあると聞き、訪ねてきました。トマト味でほんのり辛みのあるスープの火鍋です。数種類の花と大きなエビを煮て食べますが、大皿に盛られた花々は見た目にも豪華で、ボリュームもたっぷり、花だけでも満腹になる量です。日本人の感覚だと、1種類ずつ花を鍋に入れて、火の入り具合を気にしながら味わいたいところでしたが、お店のスタッフが一度にすべての花を鍋に入れてしまったのが、唯一残念なところでした。次回があるなら、鍋奉行をかって出たいと思います。


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花を一度に楽しめる鍋料理「花鍋」

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。

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