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2018年3月16日
固定種にこだわるイタリアンレストラン「イーズパッション」
固定種野菜を多く使ったイタリアンレストランがあると聞き、埼玉県飯能市にある「美肌&健康&美食イタリアン レストラン イーズパッション」を訪ねてきました。
「使っている野菜の8割から9割は飯能産。自然栽培で育った、顔の分かる農家さんから仕入れた、固定種の野菜です」。そう話してくれたのは、シェフの鈴木栄治さん。12年前にこの店をオープンした時は、一般に市販されている野菜を使って料理を作っていましたが、5年ほど経ったある日、同じ飯能にある固定種の種だけを扱う種苗会社「野口のタネ」の畑を訪れ、固定種と出会いました。地域に根ざした特徴ある野菜であること、人工的に作られた種ではないという安心感、そして何よりも力強いその味が、店のコンセプトである『美味しくて、身体に良くて、幸せになる』にマッチしました。
おりしも、ちょうどその頃、飯能で固定種の野菜を育てたいという新規就農者が現れたことも、固定種野菜を取り入れる追い風になりました。
「固定種野菜を作る農家の想いを伝えるアンカー」と自称する鈴木さんは、固定種を多くの人に知ってもらうべく、農家と野菜を食べる人の橋渡しのために、素材の味を最大限に生かした調理を心がけているそうです。
とはいえ、固定種の野菜は個体差が大きく、色や形、生育のスピードが異なるなど栽培が難しい上、固定種を育てている農家の多くが個人(家族)経営のため、安定した供給が得られないこともあります。大量の葉物野菜が、またある時はトマトばかりが届いてしまうということもあります。
しかし、そんな時こそ勉強になると言います。料理人の知恵を働かせ、むだにならないようソースやピューレに加工して、おいしく食べられる工夫を施しているそうです。
この日いただいたランチの料理にも、数多くの固定種の野菜が使われていました。サニーレタス、ホウレンソウ、ワサビ菜、春菊のサラダは、野菜の個性がわかるようシンプルな味のドレッシングで。ポタージュスープのニンジンは甘く、濃厚な香りでした。お魚料理の付け合わせの野菜も、「付け合わせ」というよりは、野菜がメインと言えるほどのボリュームです。
「同じ野菜であっても、葉に近い部分と根では味わいが異なります。そんな違いも知ってほしいので、丸ごとそのままの形がわかるようにお出ししています」という鈴木さんの言葉が表す通り、長い根のついたかわいい小カブ、丸ごと香ばしくローストされとろりとした食感の菊芋、根の部分が甘いホウレンソウ、春らしい黄色い小花をつけた紅菜苔(コウサイタイ)と、一つ一つ味わいながら野菜を食べるのが楽しくなりました。
飯能市では、市民の野菜摂取量を増やし、"野菜摂取量日本一のまち"をめざして「野菜プロジェクト」を行っています。そのプロジェクトの一環として、野菜をたくさん使用したメニューを設定したレストラン・飲食店を「野菜3倍レストラン」として、現在26店のお店が認定・登録されています。イーズパッションもその一店舗であり、店内にはその証として旗が飾られていました。
「地場産の野菜を食べ、地元の農業に関心を持ち、おいしく健康になれる」すばらしい取り組みだと思います。
後日、鈴木さんの話にあった「野口のタネ」を訪れました。
店内には日本全国の固定種野菜の種が並んでいました。初めて見る野菜の種ばかりでしたが、中には昨年で生産をやめてしまったという野菜もあり、種を取り続ける難しさを目の当たりにしました。
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。