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2017年8月17日
伝統野菜プロジェクト主催「在来きゅうりフェスタ」
夏野菜の代表ともいえるキュウリ。日々何気なく食べていましたが、キュウリの品種はこの50年ほどの間に大きく変わっていたようです。時代とともに品種改良が進み、苦みのないキュウリ、色鮮やかなキュウリ、衛生面への配慮からイボのないキュウリなど、さまざまなキュウリが生まれています。
そんなキュウリの変遷と、今でも各地に残る在来種のキュウリを学び、味わえるイベント「在来きゅうりフェスタ」に参加しました。
■キュウリの歴史と変遷
イベントの講師は、キュウリ栽培の第一人者である稲山光男先生。キュウリの歴史と変遷についてお話を伺いました。
「キュウリの原産地はインドのヒマラヤあたりだと言われています。日本には10世紀ごろ中国を経て伝わりました。中国でキュウリは『黄瓜』と記すのが一般的。胡瓜の『胡』は『西』を表す言葉で、かつて西方と紛争が絶えなかった中国ではそれを嫌って『黄瓜』となった、もしくはキュウリは熟すと黄色く色づくので『黄瓜』と書くようになったなど諸説あるようです」
「苦みの強いキュウリは江戸時代初期のころまでは見向きもされず、瓜といえばマクワウリなどが主流でしたが、低温に強く早くに栽培できるため、初物好きの江戸っ子気質も相まって多く栽培されるようになりました。現在に至るまでキュウリが定着したのは、日本人の『ごはん』という食文化があったからでしょう。ごはんに漬物は欠かせないもので、夏の漬物といえばキュウリだったのだと思います」
「在来のキュウリは色が白であったり、黄色い筋や斑点が入ったりしていたことから、市場の求めるグリーンが強く肩が張ってつやつやしたキュウリへと、品種改良が進みました。さらにはブルームレス台木にすることで『顔のいい』キュウリが生まれ、店頭にはほぼこのキュウリが並ぶようになりました。見た目はよいのですが、皮が固く果肉とのバランスが悪く香りが感じられない。この頃から日本の漬物業者は、昔ながらの味や食感が味わえる中国産のキュウリを使うようになりました。また、キュウリのイボに雑菌が繁殖しやすいことから、業務用としてイボのないキュウリ『フリーダム』といキュウリも生まれました。その一方、その土地の地域環境や食文化・神事に根ざした、昔ながらの在来キュウリも数多く残っています」
稲山先生の話を聞き、キュウリの品種改良が「味」を優先したものではなく、流通上の事情や見た目で選ぶ消費者によって進んでいると知り、とても残念に感じました。
■在来キュウリの食べ比べとキュウリ料理
きゅうりフェスタで用意されたキュウリは、全国各地から集められた20種類以上の在来キュウリ。ずっしりと重たそうな大きなキュウリ、親指ほどの大きさの小さなキュウリ、全体が白っぽいキュウリなど、色や形もさまざま。食べ比べてみると香りや味、皮や果肉の食感やみずみずしさがそれぞれ異なりました。きっとその地域ならではの伝統的な調理法があるのでしょう。それらもあわせて知ってみたいと、ますますキュウリに興味がわきました。
在来キュウリを使ったキュウリ料理には、アイデアいっぱいの料理が並びました。大阪の毛馬きゅうりを使った「きゅうりと焼きえびのいためもの」、山形・庄内の鵜渡川原きゅうりを使った「きゅうりのアヒージョ」、長野の八町きゅうりを使った「きゅうりのトルコ風ディップ、キュウリの薄切りを巻いた鹿児島・奄美大島の島きゅうりをつかった「きゅうりの巻き寿司」など、どれも自宅で応用できそうなものばかり。漬物やサラダだけでなく、キュウリの新しい食べ方を楽しめそうです。
▼伝統野菜プロジェクトはこちら
野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。