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「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【38】

2017年2月20日

丸森野菜まる盛りの旅    

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 先日、宮城県丸森町を訪ねました。県の南端に位置するこの町は、豊かな自然に囲まれる里山です。1泊2日の滞在中、「この辺りは、猪がでるんだよ、猿がでるんだよ」という言葉を何度も聞きました。
 今回の一番の目的は、前回前々回に続き「ダイコン」。この地域に「へそ大根」なる干しダイコンがあると聞き、ぜひ一度見てみたいと思ったのです。


■手間と風土が作る伝統の味「へそ大根」
 「へそ大根」とは、丸森町の筆甫(ひっぽ)地区に昔から伝わる保存食です。へそ大根を作る庄司さんを訪ね、話を伺いました。
 耐病総太りという品種のダイコンの皮をむき、厚さ2.5cmほどの輪切りにしてから固めにゆでたものを、等間隔にすき間を空けて棒に刺し、専用の棚に並べて1カ月ほど寒風にさらしながら乾燥させて作ります。日に当たるところが均一になるよう途中で棒の向きを変え、夜間には凍り付き、日中にはとける、これを繰り返すことで独特の柔らかい食感が生まれます。完成したダイコンの棒の刺してあった穴が、おへそのように飛び出るため、「へそ大根」と呼ばれています。乾燥機を使用せず、古くから伝わる方法でしっかりと乾いたものは飴色に仕上がり、A品として出荷できるとのことでした。


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 現地で何種類かのへそ大根を使ったお料理をいただきましたが、定番の仙台麩との炊き合わせのほか、洋風にキャベツと煮たものなど、ジャンルにとらわれずおいしくいただくことができました。干しダイコンは全国各地にあり、それぞれ特徴がありますが、このへそ大根の食感は格別だと感じました。 


■伝統と革新が共存する町、丸森町
 へそ大根と同じく、伝統的な方法で作られる凍み豆腐の加工風景も見学させてもらいました。雪がちらつく軒先に連なる凍み豆腐の風景は、とても美しく牧歌的でした。しかし、凍み豆腐作りは、豆腐を作り脱水し凍らせたものを縄で編む、といった寒さ冷たさが厳しい中での作業ばかり。「凍った豆腐でしもやけになる」と見せてくれた手は真っ赤で、伝統を守る厳しさを垣間見た気がしました。

 また、革新的な野菜作りを行っている方もいます。宮城県がイタリアのローマと友好姉妹都市であることで始まった、イタリア野菜を栽培している宍戸ご夫妻を訪ねました。ハウスには、初めてみる「プンタレッタ」が栽培されていました。イタリアではサラダやフリットで食べるのが一般的とのことですが、個性的な形、ほろ苦い味わい、シャキシャキとした食感は、日本の山菜に通じるものを感じました。


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 ほかにも、自然薯の人工栽培に取り組んでいる方、宮城県産ササニシキ100%の米粉で麺を作る製麺所、タケノコを栽培し採れたてを使った名物のカレーを販売する道の駅など、丸森町をまるまる巡る旅となりました。この季節ならではの風景を存分に堪能しましたが、また違う季節にも訪れてみたくなる町です。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。

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