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大豆編 病害防除

(2015年6月 一部改訂) 

はじめに

●大豆にはさまざまな病気があります。
●病気の区別はなかなか困難ですが、防除には正しい診断が必要です。
●株全体が枯れ上がる立枯性病害の中で重要な病気には、「茎疫病」「黒根腐病」「白絹病」があります。
●種子の品質低下を引き起こす重要な病気には、「紫斑病」と「べと病」があります。

立枯れをおこす病気

「茎疫病」
●発生は水田転換畑にほぼ限られます。
●発芽前からさや肥大期まで、生育期間を通じて発生します。
●若い株ほどかかりやすく、茎の褐変が、地際部から上方に広がり、やがて枯死します。

出芽直後の茎疫病生育後期の茎疫病
 :出芽直後の茎疫病 /  :生育後期の茎疫病

水中に泳ぎ出す茎疫病菌の遊走子
水中に泳ぎ出す茎疫病菌の遊走子

●土の中に残った卵胞子が、伝染源となります。
●茎疫病菌は、水を介して感染します。遊走子が水中を泳いでダイズの根や地際部の茎にとりつきます。

<対策>
●暗渠、弾丸暗渠、明渠などを設置し、畑の排水性を良くします。
●畦立て栽培も、効果的です。
●品種によって抵抗性に差がありますが、抵抗性品種でも茎疫病に感染するものもあります。
●地域や圃場に合った抵抗性品種を選んで栽培します。
●土壌pHが低いとかかりやすいので、石灰でpH6.5程度に酸度を矯正します。
●殺菌剤で種子処理して播種すると、特に弱い初期の発病が減り、苗立ちが向上します。

「黒根腐病」
●開花期以降に葉が早期に黄変したり、葉脈の間に黄色~灰褐色の斑紋が形成され、正常な株よりも早く落葉します。
●地際部には、赤褐色の子のう殻と呼ばれる小さい粒が、形成されることがあります。
●病気がひどくなると、株は簡単に引き抜けるようになり、支根が腐って直根だけ黒く残ります。
●土の中に残った微小菌核が伝染源です。
●播種直後から感染しますが、通常、開花期以降に葉に症状がでます。

黒根腐病の病斑
黒根腐病の病斑

<対策>
●中耕や培土をしないと発病が少なくなります。ただし、うね間を狭くしたり生育期除草剤を使ったりするなど、中耕以外の除草対策が必要です。
●遅播きすると発病が少なくなります。
●3年程度水田に戻し、湛水すると、菌の密度が下がります。
●大豆を3年程度栽培した後、また水田に戻します。
●抵抗性に品種間差異があります。しかし、どの品種が強いか、はっきりわかっていません。

「白絹病」
●発芽前から莢肥大期まで、生育期間を通じて発生します。
●淡褐色の褐変が茎の地際部から上方に広がり、枯死します。
●罹病した株の地際部から、白い菌糸が上方に向かって伸びます。
●すべすべした褐色の丸い菌核を作ります。

 白絹病の白い菌糸と茶色の菌核
白絹病の白い菌糸と茶色の菌核

<対策>
●麦稈などの粗大有機物が多いところで増殖し、大豆へ感染するので、可能ならば麦稈を焼却処理します。
●中耕培土は白絹病の発生を増やすので、発生圃場ではしすぎないようにします。
●播種時から耕さない不耕起栽培で発生が減少します。
●殺菌剤の潅注と株元散布は、発生防止に効果があります。
●水田に戻し、湛水すると、病気の発生が減ります。

種子の品質を低下させる病気

「紫斑病」
●さやが伸長するころから葉に紫色がかった赤褐色の病斑を形成しますが、特徴のある病斑ではないので、はっきり診断するのは困難です。
●子実に紫色の斑紋が現れ、品質が低下します。

2015benri_daizu06_image1.jpg  紫斑病に罹った種子  
紫斑病にかかった葉の病斑(左)と子実の病斑(右)

<対策>
●種子伝染を防ぐため、健全な種子を使います。
●種子が紫色になっていなくても感染していることがあるため、発病のない圃場から採取した種子を播種します。
●殺菌剤を種子処理すると、初期生育が良くなるとともに、初期の伝染源が減ります。
●子実への感染につながる開花後2~6週間後に殺菌剤を1、2回散布します。
●ベンズイミダゾール系殺菌剤(チオファネートメチル剤やベノミル剤)に対する耐性菌が発生している地域では、ベンズイミダゾール系以外の殺菌剤を散布します。

「べと病」

●生育期に、葉表に黄色の斑点が形成され、大きくなると病斑の中央部は灰色になり周縁部は褐色に縁どられます。病斑の裏面に汚れた白いかびが見られます。

葉裏のべと病白大豆に付着したべと病菌
 :葉裏のべと病 /  :白大豆に付着したべと病菌

●種子に白い紙状のもの(菌糸と卵胞子が絡まったもの)が付き、品質を著しく低下させるとともに、伝染源になります。白大豆ではあまり目立ちませんが、黒大豆ではよく目立ちます。
●収量への影響は少ないものの、小粒化と品質低下をもたらします。

<対策>
●種子に殺菌剤を処理します。
●殺菌剤は、開花期前後に1回から2回散布します。

●それぞれの病気に対して、使用できる殺菌剤が違います。
●詳しくは、独立行政法人農林水産消費安全技術センターのウェブサイトで確認するか、もよりの農業改良普及センターや農協にお問い合わせください。

執筆者 
加藤雅康
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター 

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