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●水田の排水性は、圃場整備事業などの「土木技術」と、農家が営農的に行う「営農排水技術」によって、改善されます。
●排水を良くすることで、適期耕うん作業や播種精度を高め、発芽苗立ちを安定させます。
●生育期間中の湿害を抑制することができます。
「排水施設の維持管理」
●適期の農作業や作物の排水管理を正しく、楽に行うため、水田には、排水路や圃場の水尻の落水口、暗渠が作られます。
●排水施設の効果を持続させるには、日頃の維持管理が大切です。
「維持管理のポイント」
<排水路>
●草が伸び、泥がたまると、排水路からの排水の障害になります。
●土地改良区などと協力して、定期的に草刈りや泥上げをします。
●田んぼの水尻の落水口に溜まった泥や草は、取り除きます。
<暗渠>
●暗渠は、田んぼの地表面の残水や過剰な地下水を、排除します。
●暗渠出口が泥に埋まらないよう、定期的に暗渠の掃除をします。
●暗渠管の配置の仕方で、暗渠掃除の方法は異なります。
●1本ずつ真っ直ぐな暗渠の場合、動力噴霧器に逆噴射型ノズルをつけて、暗渠出口から暗渠に挿入し、水で管の中の掃除をします。
●数本の暗渠をまとめて一個所の出口から排水する場合、暗渠排水口の水こうを閉めて暗渠内に水を貯め、水こうを一気に開けることで、管の中を掃除します。
左上から 逆噴射型ノズル/ 動力噴霧器/ 暗渠出口からの掃除
●暗渠の排水効果は、疎水材の状態に大きく左右されます。
●暗渠疎水材籾殻が少ない田んぼでは、籾殻を追加し暗渠からの排水を改善します。
左上から 疎水材籾殻が適切な暗渠/ 籾殻が少ない暗渠/ 籾殻が腐り空洞が陥没の危険
●水稲(麦)大豆のブロックローテーションで効果的な排水改善を進めましょう。
●ブロックローテーションは、水稲と大豆が混在しないので、水田からの浸入水がなく、排水条件が改善されます。
●大豆の排水対策は水稲、麦の栽培時から始まっています。
●土木技術だけでは、田んぼの排水性は良くなりません。
●営農排水技術を上手に使って、田んぼの排水機能を良くすることができます。
左上 :稲・麦・大豆栽培時の排水対策の事例
右下 :水稲中干し時の溝切り
「地表からの排水」
●耕盤が地下への排水を妨げるため、田んぼに降った雨は、地表からすみやかに排水させます。ゲリラ豪雨による湛水を避けるためには、地表からの排水が重要です。
●地表からの排水対策には、排水溝(明渠)、田面・耕盤の傾斜均平と畝立て栽培があります。
田んぼからの排水の多くは地表から排水
<排水溝(明渠)>
●大豆の栽培前に、地表からの排水をスムースに行えるように、畦畔に沿って排水溝(明渠)を掘ります。
●排水溝は20~30cmの深さとし、確実に落水口に繋ぎます。
●落水口が排水溝よりも高い場合には、落水口を掘るなどして低くします。
●区画が大きい場合や、粘土質土壌で排水条件が悪い圃場では、畦畔沿いの排水溝だけでなく、圃場内にも適宜、排水溝を掘ります。
畦畔に沿った排水溝(額縁明渠)の施工
額縁明渠の圃場(左上)と中央にも明渠を施した圃場(右下)
圃場の中央にも明渠を掘ることで排水性は改善されます
<田面・耕盤の傾斜均平>
●田面・耕盤の凹凸を無くし、排水路に向かって傾斜均平し、地表の排水を良くします。
●1000分の1の傾斜でも、排水効果が確認されています。
●レーザーレベラーで高精度の均平作業が行えます。
レーザーレベラーによる田面の傾斜均平作業
<畝立て栽培>
●田面の湛水が発生しやすい圃場では、畝立て栽培で湿害を回避します。
●耕うん同時畝立て・播種は、一回の作業で耕うんから播種まで済ませるため、降雨による作業遅れを回避します。
●畝間と排水溝を確実につなぎ、畝間の湛水を迅速に排除します。
アップカットロータリーによる耕うん畝立て播種作業
「地下からの排水」
●降雨によって地下に浸透した水や地表面の残水は、地下からも排水する必要があります。
●耕盤や心土を破砕して、大きな孔隙を作り水が流れやすくします。
●弾丸暗渠、心土破砕などの方法が一般的です。新しい技術として、穿孔暗渠施工機・カットドレーンが開発されています。
弾丸暗渠、心土破砕及びカットドレーンの断面の模式図
<弾丸暗渠と心土破砕>
●弾丸暗渠は、弾丸の形をしたモールドレーナをトラクタに付け、引っ張ることによって、土中に水が流れる孔を作ります。
●心土破砕は、耕盤などの緻密な層を破壊して、多くの亀裂を作り、排水性や通気性を良くします。心土破砕には、サブソイラが用いられます。
●最近は、サブソイラに弾丸を付けて、心土破砕と弾丸暗渠の施工を同時に行います。
左上 :サブソイラによる弾丸暗渠施工 / 右下 :弾丸を付けたサブソイラ
サブソイラによる心土破砕
●既存の暗渠がない場合、弾丸暗渠は比較的浅く、深さ20~25cmに施工し、地表の排水溝につなぎ、地表から排水します。
●このとき、地表排水の溝の深さは、弾丸暗渠の位置よりも深く施工します。
●また、排水側出口を深くし放射状に弾丸暗渠やカットドレーンを施工し、地下からの排水を進める方法もあります。
暗渠がない場合の排水方法(地表から排水)(左)と、暗渠がない場合の排水方法(地下からの排水)(右)
●既存の暗渠がある場合、弾丸暗渠や心土破砕の水は、暗渠から排水します。
●このとき、弾丸暗渠や心土破砕の深さは、暗渠の疎水材籾殻層と確実に交わる深さにします。
●一般的には、約30~40cm程度の深さです。
●暗渠疎水材の籾殻が腐ったり、沈下によって、籾殻層の位置が深くなっていることがありますが、その場合、より深く施工して、籾殻層とつなげます。
暗渠断面と弾丸暗渠施工位置
●弾丸暗渠や心土破砕の間隔は、2~5m間隔で行います。
●粘土質土壌で排水が悪い圃場ほど、短い間隔で行います。
●毎年、継続して行うことが大切です。
●籾殻の充填や、振動しながら弾丸暗渠や心土破砕を施工する機械などが、製品化されています。
左上 : パワーソイラー / 右下 :弾丸
●排水性は圃場にできた大きな亀裂に左右されます。水分の多い粘土質の圃場では、亀裂は閉塞しやすく、より大きな割れ目を作る広幅式のサブソイラ(ハーフソイラ)や、籾殻を入れて閉塞を防ぐ機械(モミサブロ、モミタス)を選択します。
暗渠がある場合の地下排水の断面の模式図 (株式会社クボタ「水田輪作技術ガイド 麦大豆800A」より)
左上から、弾丸暗渠 /ハーフソイラ /モミタス
※モミタスは宮城県古川農業試験場、東北農業研究センターで開発
<籾殻簡易暗渠>
●籾殻簡易暗渠も、地下からの排水に利用される技術のひとつです。
●既存の暗渠に直交して、深さ30~40cmで溝切り機やトレンチャーで溝を切り、籾殻を十分踏み固めながら作土直下まで入れます。
●暗渠管は用いません。
●暗渠の疎水材籾殻層と、掘削した直交部分が、繋がるように設置します。
●10~20m間隔で施工し、効果が悪ければ、次回に、その中間に施工します。
●機械的に溝を切りながら籾殻を充填するモミサブローは、サブソイラや弾丸暗渠のように密に施工できます。
左上 :モミサブローによる籾殻簡易暗渠の施工
右下 :深さ20~40cmにもみ殻充填(提供 :千葉県長生農林振興センター振興普及部改良普及課 )
<穿孔暗渠施工機・カットドレーン>
●土層をブロック状に切断し、動かすことで、暗渠と同程度までの深さに約10cm四方の穴を開け、排水のための水みちを作ります。
●暗渠のない田んぼでは、排水路側畦畔の外から施工することによって、本暗渠の役割を果たします。
●暗渠のある田んぼでは、暗渠に交差して施工し、補助暗渠の役割をします。
カットドレーン