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●大豆は地域ごとに適応する品種が異なるので、初めて栽培する際には、品種や栽培の情報を、地域の農業改良普及センターなどから十分得ておきます。
●また、大豆は稲麦など他の作物との輪作で作付けられるため、作付け体系の中での位置づけを考慮して、早晩性を選択する必要があります。
●在来品種や特殊な品種などでは、助成を十分受けることができない場合もありますので注意してください。
●より詳細な品種の特性は、以下のページで調べることができます。
▼「国産大豆品種の事典」 (農林水産省)
▼「品種・特許」 (国立研究開発法人農業食品産業技術総合研究機構)
大豆の花と栽培風景
「北海道」
●主力品種は「ユキホマレ」ですが、多くの奨励品種がありますので、地域や目的にあった品種を選択します。
ユキホマレ 早生で耐冷性に優れ、倒伏性にも強い北海道の基幹品種
●播種適期は5月の中下旬ですが、播種が遅れた場合は早生品種を選び、播種密度を高めて栽培します。また、降雪害を回避するため、成熟後は速やかに収穫します。
●最近の品種の多くは耐冷性を備えていますが、冷害の多い地域では、耐冷性の強い「とよみづき」「トヨハルカ」などの品種を選びます。
新品種「とよみづき」の草姿 (提供 :道総研 十勝農業試験場 三好智明)
●全道的にシストセンチュウが多発しているので、適切な輪作を行うとともに「ユキホマレR」などの抵抗性品種を選びます。
●南部では比較的冷害が少なく、降雪もやや遅いので、黒大豆の「いわいくろ」「つぶらくろ」、極大粒の「ツルムスメ」「ゆめのつる」などの晩生品種も栽培できます。
●中南部では、わい化病が発生しますが、防除が不要な抵抗性品種はまだ育成されていないので、多発地域では、媒介虫のアブラムシ防除が必要です。
「東北」
●南北に長い地域のため、県ごとに主力品種が異なります。
●播種時期は北部で5月上中旬、中南部で5月下旬~6月上旬になります。
●播種期が6月下旬以降の晩播となる麦後大豆では、早生品種を選定するとともに、播種密度を高くします。
●北部では早生の「おおすず」や豆腐加工適性が高い「ナンブシロメ」が主力品種ですが、近年新品種「シュウリュウ」が育成されて普及が始まっています。
●「シュウリュウ」は生育期除草剤(ベンタゾン)に感受性が高いので注意が必要ですが、モザイク病や紫斑病に抵抗性で倒伏に強いことから、コンバイン収穫に適します。
●中南部では、機械化適性の高い「リュウホウ」「タンレイ」「タチナガハ」、白目大粒の「ミヤギシロメ」などが栽培されていますが、近年倒伏に強い「あきみやび」や「里のほほえみ」が育成されて普及が始まっています。
左上 :おおすず 大粒で豆腐・煮豆に適し、やや早生で倒伏に強いコンバイン収穫に適した品種
右下 :リュウホウ シストセンチュウに強く、倒伏や裂莢も少ないコンバイン収穫に適した品種
倒伏に強い新品種「あきみやび」
●地域によってシストセンチュウやモザイク病などの病虫害が多発しますので、病虫害抵抗性にも留意して品種を選択するとともに、適切な輪作や薬剤防除などを行います。
「北陸」
●高タンパクで豆腐に適する「エンレイ」が主力品種ですが、地域によっては青立ちが多く発生します。
エンレイ タンパク含量が高く、豆腐や味噌に適した北陸地域の基幹品種
●青立ちが目立つ地域では、干ばつ時の灌水、カメムシ等莢実害虫の防除を徹底します。
●「エンレイ」の収穫時期は、比較的降雨が多いので、しわ粒の発生などの品質低下を避けるため、成熟後は速やかに収穫します。
●「エンレイ」の小粒化や低収化が目立つ地域では、有機物の投入や深耕などのほか、農業改良普及センター等と相談して新品種「里のほほえみ」や「シュウレイ」への置き換えも検討します。
新品種「シュウレイ」
●台風や秋の長雨によって、紫斑粒や腐敗粒の被害が出やすい地域なので注意します。
●殺菌剤散布、播種時期の分散、熟期の異なる品種の作付け、などの対策を取り、気象災害の危険分散を図ります。
大豆の湿害(左)と、台風後の長雨による莢内発芽(右)
「関東・東山」
●播種適期は6月中下旬ですが、「納豆小粒」や晩生の「フクユタカ」を栽培する場合は、やや遅く7月上中旬に播種します。
左上 :納豆小粒 極小粒で、晩播適性が高い、関東地域の代表的な納豆用の品種
右下 :フクユタカ へそ色が淡褐だが、タンパク含量が高く、豆腐に適した西日本の代表的品種
●関東地域の主力品種は倒伏性に強い「タチナガハ」でしたが、近年「タチナガハ」の青立ちや低収化が目立つようになり、新品種「里のほほえみ」との置き換えが進んでいます。
大粒で倒れにくい「里のほほえみ」。
「里のほほえみ」は「エンレイ」に比べて大粒で倒伏に強い
(提供 :農研機構 東北農業研究センター 菊池彰夫)
●青立ちの発生を避けるために、莢実害虫の防除を徹底するとともに、コンバイン収穫時には、青立ち個体を除去して汚粒の発生を防ぎます。
●一部地域ではシストセンチュウの発生が見られますが、十分な抵抗性を持つ品種は育成されていないので、適切な輪作を行うとともに、多発圃場では作付けを避けます。
●東山地域で多く作付けされている「ナカセンナリ」はシストセンチュウに抵抗性を持ちますが、モザイク病に弱いので、発生地域ではアブラムシの防除を行います。
ナカセンナリ シストセンチュウに強く、倒伏も少ない、豆腐・味噌に適した品種
●豆腐加工適性に優れる新品種「すずほまれ」は、倒伏が少なく作りやすい品種ですが、シストセンチュウや黒根腐病に弱いので、連作を避けるとともに、多発した圃場では作付けを行わないようにします。
大粒で外観品質に優れる「すずほまれ」 (タチナガハ(左)とすずほまれ(右))。
(提供 :長野県野菜花き試験場 山田直弘)
●9月下旬に長雨が続く場合は、紫斑病が発生するので、殺菌剤散布などの対策が必要です。
「近畿・中国」
●主力品種の「サチユタカ」は倒伏に強く、高タンパクで、豆腐に適しています。
●温暖な地域のため、播種可能時期が6月上旬から7月上旬までと長いですが、晩播となる場合は播種密度を高めます。
●梅雨明け後に高温・干ばつが生じやすいので、晴天が続くときは暗渠を閉じるとともに、必要に応じて畦間潅漑等で灌水を行います。
●「サチユタカ」は褐斑が出やすい品種なので、モザイク病の多発地帯では作付けを避け、アブラムシ防除を徹底します。
●大規模化による刈り遅れが生じやすい地域では、「サチユタカ」を難裂莢化した「サチユタカA1号」を用いることで、自然裂莢や収穫ロスを抑えることができます。
莢がはじけにくい「サチユタカA1号」。「サチユタカA1号」は刈り遅れても裂莢が少ない
(サチユタカ(左)とサチユタカA1号(右))
●価格が高い極大粒の「丹波黒」は、倒伏や病虫害に弱いので、倒伏防止の支柱設置や病虫害防除の徹底などの対策が必要です。
丹波黒(在来種) 極大粒の黒大豆で、煮豆や枝豆の食味評価が高い品種(「丹波黒」はいくつかの系統の総称)
「東海・四国南部・九州」
●主力品種の「フクユタカ」は、豆腐用として評価が高く、日本で最も多く作付けされている品種です。
●「フクユタカ」は晩生品種で倒伏しやすいので、極端な早播は避けて7月上中旬に播種します。
●降雨が多く湿害が生じやすい地域なので、地域ごとにブロックローテーションを行うとともに、明渠や弾丸暗渠などで十分な排水対策を行い、不耕起播種機や小明渠浅耕播種機などを利用して適期播種に努めます。
摘心処理により倒伏を抑えて栽培した「フクユタカ」
●早播きして生育量が過大になりそうなときは、摘心処理を行って倒伏防止に努めます。
●播種遅れが生じたときには、半日でも早く播種する、播種密度を高くするなどの方法をとります。
●カメムシやハスモンヨトウなどの虫害が激しい地域のため、適切な虫害防除を行います。
●一般に黒大豆などの有色大豆は黄大豆に比べて単収が低く、補助金の水準も低くなっています。
●用途も限られることから、作付けにあたっては、契約栽培などであらかじめ経済性の検討や販路の確保を行うことが重要です。
「有色大豆栽培の注意点」
●在来品種は一般に病虫害や倒伏に弱いので、栽培時には病虫害防除などの対策をしっかり行います。
●「丹波黒」などの極大粒品種は、割れ粒を防ぐために収穫・脱粒時に過大な衝撃を与えないようにするとともに、過乾燥を避けます。
●「青丸くん」「キヨミドリ」などの緑大豆は、成熟後の退色を防ぐため、すみやかに収穫するとともに、暗所に保管します。
左上 :青丸くん 種皮・子葉が緑で、倒伏や裂莢が少ない品種
右下 :キヨミドリ 種皮・子葉色がきれいな緑で、風味のある豆腐が作れる品種
●小粒黒大豆品種の「くろこじろう」や中粒黒大豆「くろさやか」などは用途が限られますので、実需者ニーズに応じた生産が必要です。
左上 :草姿に優れ倒伏しにくい小粒黒大豆「くろこじろう」(左から 納豆小粒、くろこじろう、黒大豆小粒)
右下 :丹波黒との比較(丹波黒(左)とくろこじろう(右))
●有色大豆と普通大豆の混種を避けるために、コンバインを共用する場合には、機械内部を十分にクリーニングします。