果樹のジョイント仕立てについて
2013年12月26日
研究の背景とねらい
全国のナシ園は高樹齢化が進み、改植の必要性に迫られていますが、改植による一定期間の収益減少は経営に与える影響が大きく、進んでいません。また、現在の整枝法は高度な技術を必要とし、労働時間短縮に向けての省力・効率化が難しく、このことが規模拡大や新規参入を困難にする要因となっています。
これらの問題を解決するため、神奈川県農業技術センターは、早期成園化と省力化を実現する技術として、ジョイント仕立てを開発しました。
特徴とメリット
(1)早期成園化
樹体ジョイント仕立ては、これまでにない「樹と樹をつなげる」発想を活かした超早期成園化技術です。
従来の仕立て方は骨格枝を伸ばしながら、結実する枝の管理を行なうため、成園化までに定植後10年はかかっていましたが、ジョイント仕立てでは1年間(伸長が悪い品種は2年間の場合もある)専用苗を育苗し、定植時に先端を隣の樹に接木してつなげる(写真2)事により、基本樹形が完成するので、定植5年後には成園となります。
(2)栽培管理の省力・簡易化
直線的な単純樹形で、一定方向に管理できるため、受粉や摘果等の作業時間が短縮されます。
特に高度な熟練技術が必要とされた剪定は、側枝の更新のみとなり、大幅に削減され、栽培経験の浅い方でも可能となります。
(3)樹勢の均一化
樹勢の旺盛な基部と弱い先端部をジョイントすることにより、樹体間を養水分が移動し、側枝は均一な勢力で揃えられます。
(4)ナシ以外の樹種への適用について
各県との共同研究で、ナシ以外の樹種でのジョイント仕立ての適用についても検討を行っています(表)。
この中で、樹形についてはナシのように平棚を利用するタイプのほか、側枝を下方に下垂させるタイプ(写真3)、また、主枝高を低くして側枝を上方に伸ばすタイプ(写真4)での試験も行っています。
リンゴやウメ等の通常立木仕立ての樹種にジョイント仕立てを導入すると、脚立が不要となり、作業の安全性の面からも大きなメリットがあります。
表 共同研究における対象樹種・主要な目的と担当機関
(事業期間 :平成21~25年度 一部機関は24年度まで)
(クリックで拡大します)
今後の課題
これまでに問題となった課題として、スモモのウイロイド病や、キウイフルーツのかいよう病のように、接木等で伝染する病気が接木した樹体間に感染する事例がありました。
健全な苗木を確保することが重要ですが、このような病害が想定される樹種では、ジョイントする1ユニットの樹冠面積を慣行法と同程度にして、被害リスクを同じにする必要があると思われます。
経済寿命については常に話題となりますが、神奈川県の初代ジョイント樹(幸水)は18年目を迎え、目標収量の3t/10aを今年も達成している(写真1)ことから、通常の仕立てと同等程度の寿命は確保できると思われます。
各県との共同研究の中で、多くの樹種での適用を検討し、早期成園化や省力軽労化が実証されていますが、苗木代や育苗労力といった点も課題として残っています。補助金の活用や共同育苗等の事業化での対応による面的普及が急務と思われます。
今後も各樹種のマニュアルの検討や低コスト化の研究などを進めていく予定ですので、ジョイント仕立ての導入について、ご検討をお願いします。
研究成果の活用と実施許諾契約
「樹木の樹体ジョイント仕立て法」は、平成24年1月6日付けで特許(特許第4895249号)を取得しました(特許の対象樹種はナシ、ウメ)。
ナシ、ウメでジョイント仕立て栽培を行うためには、実施の許諾に関する契約が必要です。平成25年11月現在、20団体と実施許諾契約を結んでおり、全国で活用されています。
まず、所属している団体が許諾を受けているかどうかをご確認ください。
許諾を受けている場合は、ジョイント苗数あたりの実施料を団体に支払います。
許諾を希望する場合の質問等は、以下にお問い合わせください。
●神奈川県政策局政策部科学技術・大学連携課科学技術グループ
●電話番号 045-210-3071
●許諾の流れについては以下の図を参照ください
執筆者
神奈川県農業技術センター 生産技術部 果樹花き研究課
北見 丘