ショクガタマバエに住みついてもらう -効率よく野菜のアブラムシを防除する-
2007年06月04日
「ショクガタマバエ」という虫をご存知でしょうか? ショクガタマバエは、野菜の大害虫・アブラムシを食べてくれる「天敵」で、日本全国どこにでもいます。しかも、なんと80種類以上のアブラムシを食べてくれます。
私たちは、ハウスの中にショクガタマバエを放してアブラムシを防除し、野菜の減農薬生産に役立てようと考えています。
左上 :アブラムシを食べるショクガタマバエの幼虫
右下 :ショクガタマバエの成虫"
「ハウスの中にショクガタマバエを放す」といっても、ひと工夫が必要です。
アブラムシが発生したとき、すぐにショクガタマバエを放すことができれば良いのですが、考えてみてください。アブラムシが発生しても、人間は気づかないことがあります。
それならば、いっそのことアブラムシが発生する前から、ショクガタマバエを放しておけば良いのです。
しかし、これには問題があります。なぜなら、ショクガタマバエの食料はアブラムシなのに、その食料が発生する前から放すのは、可愛いペットに餌をあげないのと同じくらい残酷なことです。野菜にアブラムシが発生するまで、ショクガタマバエが食いつなぐための食料になるものはないでしょうか?
実はあるんです。
ショクガタマバエが食べる80種類以上のアブラムシのなかには、野菜に害のないアブラムシがいます。ムギにつくムギクビレアブラムシは、野菜を食べません。なかなかの偏食家です。このムギクビレアブラムシなら良い食料になりそうです。
右 :ショクガタマバエの食料・ムギクビレアブラムシ
ハウスの片隅でムギを栽培して、ムギクビレアブラムシをつけておきます。そこにショクガタマバエを放すと、ムギクビレアブラムシを食べて生活してくれます。
そうすると、野菜に別のアブラムシが発生しても、ショクガタマバエが素早く察知して退治してくれます。もちろん、退治した後もムギの上で生活し続けてくれます。
この方法を「バンカー法」といいます。
バンカー法が成功すれば、ショクガタマバエがハウスの中に住みついて、常にパトロールしている状態になります。しかもショクガタマバエは80種類以上のアブラムシを食べますから、いろいろな野菜で使えます。
バンカー法を生産現場でうまく使えるように開発していますので、ご期待下さい。
左 :ハウスでムギを栽培
(画像をクリックすると大きく表示されます)
【参考資料】
コレマンアブラバチを用いたバンカー法による施設ナス・ピーマン等でのアブラムシ防除(生産者向け)
アブラムシ対策としての「バンカー法」技術マニュアル(技術者用)
※ 技術者用とうたってあるが、「よくある質問Q&A」「写真で見るバンカー法実施上の判断例」など、だれにでも参考になる内容あり。
執筆者(研究担当者)
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 環境保全型野菜研究チーム 安部順一朗