ヒゲおやじが語る天敵の話【15】
2010年02月15日
有色粘着板~害虫に一番合う色を選ぼう
山中 聡
害虫も含めて昆虫は、種類によって、色調、匂い、光、温度などに対し、特定のものを好むことが分かっています。この性質を利用しているのが粘着板です。施設の外から飛来する成虫の侵入を防ぎ、誘殺できれば、施設内での害虫の増加を抑えることができます。
天敵利用の施設内で、かなり普及が進んでいる粘着板ですが、害虫と粘着板の色の関係を知らない生産者や試験研究機関の方が少なくないようです。
コナジラミ類を含むカメムシ目、ハモグリバエなどを含むハエ・カ目などは、ヒトの目で黄色と認識される波長を好みます。しかし、ヒトにとって「黄色」に見える範囲は、厳密には「濃い山吹色」から「薄いレモン色」まで幅広いため、黄色い有色粘着板として、色合いが異なった黄色の製品があります。
左 :粘着板を利用した施設
ミカンキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマは、青色の波長に誘引されますが、青でも濃い青色の波長に引き寄せられます。チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマは、青色よりも黄色に誘引されます。したがって、発生している種類を確認し、最適な色の粘着板を使うことが大切です。アザミウマ成虫は、特に春先施設に飛び込むと、その後の密度増加が著しいので、粘着板の設置が重要な防除手段となっています。
また、科学的に裏付けられた研究をもとに製品化されているもの(ホリバーや金竜など)と、そうではない製品を比較すると、一定期間におけるコナジラミの誘引数は、5~10倍の差があることもわかっています。天敵利用の目安として、黄色粘着板でコナジラミをモニタリングする方法もありますが、誘引性の低いトラップを用いてしまうと、害虫発生を的確に判断することができません。青色についても、同じような研究がなされています。
最近、有色粘着板にスリットが設けられ、片手でも吊り下げ作業ができるようになりました。
このスリットには工夫があり、風による揺れに対しても、はずれにくい構造となっています。ぜひ一度利用されてみてはいかがでしょうか。
右 :スリットが入った有色粘着板

やまなか さとし
東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長