ヒゲ親父が語る天敵の話 【12】
2009年06月29日
イチゴでのマルハナバチ利用のポイント
山中 聡
イチゴ栽培でマルハナバチを使うと、受粉がうまくいかない、奇形果がでる、そしてミツバチ不足の解決策がない、と言われています。しかし実際は、セイヨウオオマルハナバチもクロマルハナバチも、イチゴの受粉に非常に適しているのです。
今回は、イチゴでのマルハナバチ利用のポイントを伝授します。
マルハナバチもミツバチも、受粉のために訪花しているわけではありません。幼虫の食料である花粉を花から集めるためで、結果として、訪花した花が受粉されて結実するのです。
よって、餌となる花粉の量により、ハチが訪花する回数は変わります。花粉が潤沢にある場合は花粉集めは少なくなり、不足すれば頻繁に花を回り、花粉を集めるのです。
マルハナバチの行動面積が狭くなると、訪花できる花が限られます。同じ花に行く回数が多くなり、めしべを傷つけることがあります。これが、イチゴで奇形果ができる原因です。マルハナバチの一群に対して面積が十分であれば、問題は起こりません。
ところがイチゴの施設には、小面積のハウスが独立しているものが多くみられます。そのときは、ハウス間をネットでつないで連棟にしたり、餌として必要な花粉を人為的に与えてやります。花粉集めを減らし、働く時間や日数を制限するなどの工夫をするのです。ペットのつもりで対応すると、マルハナバチは、非常に使いやすい受粉昆虫になります。
また、トマトやナスに比べて、イチゴハウスの温度は低めに管理されます。寒さに強いマルハナバチですが、低温に長時間さらされると巣の成長が悪くなり、訪花不良になる可能性があります。
そのため、冬季の利用は、発泡スチロールの箱に入れたり、毛布で包んだり、夜間は電気あんかを利用するなどして、低温対策をおこないます。また、秋口や春の利用は温度が高くなるので、必ず遮光をしましょう。右 :遮光による高温対策
イチゴでのマルハナバチの本格的な利用は、まだ始まったばかりです。
訪花量の調節をしてあげれば、十分にイチゴでも利用できるため、ミツバチ不足の代替技術として、少しでもイチゴ生産者のお手伝いができるよう、今後も利用技術の確立を目指していきます。
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やまなか さとし
東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長