島根県
古瀬 太
古瀬 太
島根県農業技術センター技術普及部畜産技術普及グループで、主に乳用牛を担当しています。 農家に信頼される普及員を目指して、牛群検定成績を活用した飼養管理指導や搾乳機器の点検等の普及活動に日々励んでいます。
2009.10.26
家畜とのふれあい、子ども達の瞳に焼き付いたものは?
10月10日に、私が勤務する畜産技術センターで、【畜産ふれあいまつり2009】を開催しました。
【畜産ふれあいまつり】は、現在の施設完成後の1998年から、毎年この時期に開催しており、今年で12回目となりました。
場内には、一年中動物たちを見ることのできる「ふれあい動物広場」がありますが、乳牛の乳しぼり体験やトラクターバスなどはまつり当日のみのイベントであり、毎年大人気となっています。
また、お昼に地元自治協会が販売する「出雲そば」には、順番を待つ長蛇の列ができます。
乳牛の乳頭を目の当たりにして、何となく固まってしまう子、最初は大きな家畜に恐れていたのに最後には撫でている子、親の「もう帰ろう」との呼びかけに反応せず、うさぎを放さない子・・・。家畜たちとのふれあいを通して、子どもたちが家畜への興味や関心を深めてくれたのではないかと自負しています。来年以降も職員で知恵を出し合い、一層楽しいイベントにしていきたいと思います。
10月は「神無月」と言いますが、出雲地方では、【出雲大社に全国の神が集まって一年の事を話し合う】ため、「神在月(かみありづき)」と呼んでいます。また、「出雲そば」は三大そばの一つとされ、三段の丸い漆器にそばを盛って出す「割子(わりご)そば」として有名です。
「神在月」の当地で、「割子そば」を食べて、新たなご縁を求めてみませんか?
2009.10. 9
畜産農家での飼料(餌)価格高騰対策の第3弾として、今回紹介するものは、日本人の主食である”お米”です。
お米と言っても、利用の仕方は様々です。食べるために栽培した米の副産物である”稲ワラ”に加え、最近では、WCS(ホールクロップサイレージ)用イネや飼料用米の栽培が盛んに行われるようになりました。
現在、日本では米の生産調整が行われています。本来、米を作ってきた水田で、米以外の様々な作物が栽培されていますが、WCS用イネや飼料用米の栽培には、大きなメリットがあります。それは、稲作の機械がそのまま使えることです。
左 :天候を心配しながら、フェリーに乗船。隠岐の島影が見えて来たところです
右 :収穫調製研修会の様子。実証圃担当農家から説明を受けました
隠岐諸島は、古くから放牧を中心とした繁殖牛経営が盛んな地域ですが、離島のため、購入飼料価格は本土よりも幾分高くなってしまいます。そこで、今まで栽培されたことがないWCS用イネの実証圃を隠岐の島町に設置し、収穫調製の研修会を実施しました。
研修会に参加された繁殖農家からは、大きな期待の声が聞かれました。
左 :後継者である娘さんも指導を受けながら収穫機で実演
右 :実証圃担当農家が考案したクレーンを利用したベールクリッパー
餌の大半を輸入穀物に頼っているため、日本の畜産物の国内自給率は低いのですが、今後はいろいろな場面で、お米を食べさせた畜産物にお目にかかれるようになると思います。
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2009.10. 8
和牛の肥育経営では、肉質による価格差が大きく、一般的な肥育農家においては、上質肉生産を目指した飼養管理が行われています。
一方で、肥育牛の肉質は、枝肉にしてみないと分からないとも言われており、様々な方法で肉質を予測する技術や手法が現場で実施されています。
私達、畜産技術普及グループでは、「肥育牛外貌記載評価表」を活用しています。これは、肥育牛の生体について、8項目の数値や外観を点数化し、50点中40点以上あるかどうかで、上質肉になるかどうかの境目であると判断するものです。チェック項目が8項目と少ないので、1頭あたり、ほんの数分で点数がつけられるという利点があります。
実際、今夏に行われた県の枝肉共進会では、40点以上と評価した牛の76%が「上物(肉質が4・5等級と優れたもの)」であったのに対し、40点以下では20%の上物となっており、大きな差がありました。
40点以上に評価される牛を選ぶことで、上質肉の割合が高まるとともに、肥育農家がそのような牛を育てることを目標として取組むことで、技術向上にもつながるよう期待されます。
和牛肉は、柔らかさと風味の豊かさが特徴であり、消費者は上質な肉を求めています。そのための一助として、引き続き「肥育牛外貌記載評価表」を活用しながら、その精度を高めるとともに、肥育農家がより上質肉を生産できるよう、アドバイスをしていきたいと思います。
肥育農家が丹精込めて育てた「しまね和牛肉」を、是非ご賞味下さい。
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右上 :県内肥育農家の牛舎の様子。いつも清潔な状態で管理されている。
左下 :肥育の審査に使う”外貌記載評価表”
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2009.09. 8
時代は、自給粗飼料生産 ~牛が食べる漬物づくり~
飼料(餌)価格の高騰が畜産農家の大きな悩みであることは、以前紹介しましたが、その対応策として、道路脇の刈草の飼料利用の他、水田や畑を活用した飼料作物の生産にも取組んでいます。
飼料用トウモロコシやソルゴーといった飼料作物は、栄養価が高く、飼料代の低減に役立つものと期待されています。
前回の記事では、「ロールベールサイレージ」という、ちょっと一般の方には分かり難い専門的用語で紹介しました。
「ロールベールサイレージ」とは、ロール(円筒形)にベール(食品用ラップフィルムの大きなもので巻き付けて密封)したサイレージ(乳酸発酵させて貯蔵性を高めた飼料で、いわゆる漬物の一種)のことです。
冬場には草ができないので、畜産農家は春から秋に草を作り、冬場に使う分は腐らないように漬物にするという訳です。
左 :「ロールベールサイレージ」の実演・研修会。当日は、地方局の取材もありました
右 :農家や関係者を集めて、栽培から給与までの技術等について研修しました
山陰地方は梅雨明けが大幅に遅れ、日照時間が短い夏でしたが、農家が丹精込めて育てた飼料作物は立派に生長し、収穫時期を迎えています。
島根県では、比較的新しい技術体系である「ロールベールサイレージ」の普及を目指して、今年度県下4箇所の実証圃を設置しました。その実証圃で、収穫調製の実演・研修会が開催されました。
広い畑の中に、白いロールベールがある風景は、どこか心和む牧歌的な田園風景だと思いませんか?
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2009.07.13
昨今の畜産農家には、経営上の大きな悩みがあります。その最大の原因は、家畜に食べさせる飼料(餌)価格の高騰です。
昨年以降、ガソリンや各種食料品等多くの品物が値上がりしたことは記憶に新しいと思います。
畜産物の中では、牛乳等の乳製品で若干の値上げがありましたが、繁殖農家の子牛価格や、肥育農家が収入を得る枝肉価格は、逆に値下がりしています。
畜産農家の危機に対して、少しでも役に立つことを進めようと、昨年度から、島根県の畜産関係者約60名で、その名も「飼料価格高騰に対する何かできないか研究会」を立ち上げました。様々な発案やその実践に向けて、取組んでいます。
その取組みの一つが、夏場を中心に刈取り、処分されていた、道路脇の刈草の飼料利用です。
今年度は、モデル的に2つの地区で取組みます。畜産農家が利用しやすいように、土木業者にロールベールサイレージへ処理をしてもらうための研修会を開催しました。
今までは焼却等で処理料がかかっていたものを、ロールベールサイレージにすることで、新たな利用価値が生まれるのです。また、畜産農家は、ロールベールサイレージが集積されている場所に取りに行くだけ。料金は無料の予定で、正に一石二鳥の効果が期待されます。
7月から作業が始まり、秋以降に牛への給与が始まる予定です。
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右上 :ロールベーラーなどの使い方に熱心に聞き入る業者作業員及び関係者
左下 :研修会のために集草した刈草をラッピング
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