長崎県
尾崎哲郎
尾崎哲郎
長崎県壱岐地方局壱岐農業改良普及センターの技術課で野菜を担当しています尾崎哲郎といいます。離島ならではの普及活動や普及指導員としての苦労など紹介できれば幸いです。
2008.12.24
12月8日に壱岐農業改良普及センターの普及計画評価反省を実施しました。今回は助言者として農産園芸課技術普及班(旧:専門技術員班)から古賀班長を招き、第二期(8月~11月)までの活動および今後の展開について検討しました。
写真右 :所全体での普及計画評価反省。寺井所長の冒頭あいさつ
プロジェクト課題4つと専門課題5つの計9つについて討議し、活動が計画どおりに進行できたか、なぜ、進行できなかったのか、今後はどのように取り組んでいくのか等をチーフを中心に所全員で意見交換を行いました。また、助言者より指摘を受けながら、残りの4カ月でどこまで仕上げるのか等話し合いました。
農業現場は常に情勢が動き、なかなか計画通りには進みにくいのですが、その時の状況に応じた活動を展開し、計画を達成する必要があります。飛び込みの要請にも応えながらの活動はなかなか難しいものです。(反省!!)
12日には野菜班の活動評価を行いました。今回は農産園芸課技術普及班野菜担当(2名)と対馬普及センターの野菜担当(1名)の参加を得て、特に技術に重点をおきました。
午前中は壱岐島内での野菜現場(ブロッコリー、いちご、にんにく)を巡回し、午後は膝をつき合わせての活動反省と今後の展開、次年度の計画等について検討しました。
左 :野菜班の評価反省。いちごの新品種展示圃場を巡回 / 右 :大規模圃場における交信攪乱剤の効果について(ブロッコリーと大豆圃場にて)
普及活動においては技術が重要であり、このような評価反省(研修会)は、情報収集や野菜知識向上に役立ち、農家指導への原動力となります。
若い時は新しい技術情報等は良く頭に入ってましたが、40歳半ばになるとなかなか頭に入らず苦労します。年はとりたくありませんね・・・・
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2008.11.28
長崎県金子知事がいちご新品種「こいのか」を試食!
壱岐では2010年春に、長崎県立埋蔵文化財センター・壱岐市一支国博物館がオープンします。
そのプレイベントとして、11月15日~24日の期間、一支国弥生まつりが開催されました。
オープニングイベントで、長崎県知事金子原二郎氏が来島され、ご挨拶をいただきました。
その後、現地視察で農業現場を1箇所見学するということで、急遽、壱岐地方局総務課と普及センターで視察先を検討し、いちご新品種の展示圃を受けていただいている、市山いちご部会長宅を見ていただくことに決まりました。
左 :知事を囲んでの記念撮影。前列左より、市山いちご部会長、壱岐市長 白川氏、長崎県知事 金子氏
右 :いちごを試食される知事
早速、知事との対応方法等を市山部会長と打ち合わせし、当日は品種別の味くらべをしていただくことにしました。
前日には、知事が回るコースを関係者で下見し、粗相がないように、万全の体制で望まなければなりません。知事等偉い方が来るというだけで、現場は小さなパニック状態と言えます。
当日はあいにくの雨でしたが、市山部会長の計らいで、多くの部会員が集まり、笑顔で知事を迎えました。
最初に知事を囲んで、全員で記念写真をとりました。その後、知事は部会員と談笑し、いちご経営のことや品種等について質問されました。また、3品種(さちのか、とよのか、こいのか)を試食していただき、「こいのか」が一番おいしいと評価されました。 たった15分の視察でしたが、集まった部会員は約1時間ほど待ちました。本当にご苦労さまでした。
後日談ですが、11月20日~21日に、JA壱岐市いちご部会で島原地区へ視察研修に行きました。その時に、知事からのお礼として、宿泊先のホテルにお菓子が届きました。皆さん、ビックリされましたが、帰りのバスの中でおいしくいただきました。
*長崎県のいちごは、品種「さちのか」、「とよのか」が主流ですが、より高い消費者ニーズに対応するために、本年度より有望品種として、新品種「こいのか」(10月28日付官報第4942号にて出願公表済み)を県下5箇所の展示圃で、現地適応性等を確認するために調査を行っています。
いちご新品種「こいのか」。大阪市場へテスト販売を行っている。(11月10日より出荷開始)
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2008.11.10
11月5日にニラ部会の現地検討会および販売反省会が開催されました。
壱岐地域のニラはアムスメロンとの輪作が特徴です。また、山口部会長以外はすべて女性であり、やや年齢が高い方々が多いようです。
昨年は1月に中国産ぎょうざ事件により、一時的にびっくりするような高値があったもののその後は落ち着き、結果としては昨年より束(100g)あたり+10円で販売が終了しました。写真 右:熱心に質問される婦人たち
長崎県での標準的なニラハウス栽培は3月に種まきをし、6月には圃場に植え付け、10月末までに株養成(ニラの茎葉を増やす:分けつ数を多く確保する)し、10月末に茎葉を刈り取ってマルチ、その後、ハウスの保温(ビニル被覆)を行い、6月まで収穫を行います。
壱岐はメロンとの組み合わせにより、定植時期が7月と遅くなり、株養成期間が約1ヶ月ほど短くなります。株のでき具合を判断する方法として、分げつの数を参考にし、多い方で約40本程度、少ない方で約25本程度と開きがありました。
今年は梅雨明けが早く、夏場からの高温により「さび病」の発生が目立ちました。
1回刈り取って、その後伸びた茎葉にも発生が確認され、株養成中の防除不備が解りました。また、メロンとの組み合わせでハウス土壌中に肥料が溜まっており、恐らくニラにとっては肥料過多の条件になり、今年のように夏場の高温では、かん水を十分行っていないと、根が張らずに肥料が効いていない状態となり、さび病の発生、茎葉が軟弱になり倒伏してしまい、刈り捨て時期を早めなければならない状況に陥ったと思います。
左 :新しい葉にも発生しているさび病 / 右 :現地巡回結果による総評。 この後は酒を交えての意見交換
最後に、ごちそうを目の前にして、現地巡回で明らかになったことを確認し、次年度はメロン作付前とニラの定植前に土壌分析を実施し、適正施肥により病気を出さない、茎葉を倒さないようにすることで、品質および販売量のアップに努めることにしました。
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2008.10.27
全国的にメロンの作付けは減少しており、長崎県においても同様な傾向です。
壱岐は古くから春のアムスメロンを主力に、夏・秋作のアールスメロンと孤軍奮闘している産地です。
秋作のアールスメロンは植付時期が8月であり、台風被害にあう危険性が高い作型です。品種は「ベネチア」が主流ですが、より品質が高いネットメロンを求めて、今作より新品種の「ミラノ」を2戸の農家に試作してもらいました。
10月21日に、メロン部会長である深見氏圃場にて「ミラノ」の生育・収量調査を実施しました。今年は心配した台風襲来がなく、天候にも恵まれ、盆明けから順調に気温が低下したおかげで、着果状況も良く、果実が大玉になりすぎない、2L等の規格にあった、りっぱなメロンができました。
メロン担当の山中係長と、「ミラノ」と「ベネチア」の生育調査(葉数、着果節位:(果実がついている節数)、草丈、茎葉重)と果実調査(果実重、糖度)を実施しました。
写真でわかるように、「ベネチア」にくらべ「ミラノ」は茎葉がしっかりしており、果実も肥大し、ネットの盛りなどが良好でした。写真 右:ベネチア、右:ミラノ。 ベネチアは葉が黄化し、かなりくたびれた状態である
その日の午後には、壱岐地域の園芸担当者の会議がありましたので、2品種のメロンを紹介し、試食していただきました。
評価は「ミラノ」が外観がよく、食味は「ベネチア」よりコクがあるという評価でした。ちなみに糖度計では「ミラノ」は14.5%、「ベネチア」が14.3%という結果になりました。
写真 左:1左:ベネチア・右:ミラノ。ネットの盛り、緻密さがミラノがよい / 右:同左 果肉の状態
試作した2名の農家の評価は、管理がしやすく作りやすい、果実の品質が良いという結果を得ることができました。
10月下旬より販売が始まり、島内および福岡方面への出荷となります。
写真 :試食会の風景。奥がメロン担当の山中係長(腰のタオルが渋い)
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2008.10.16
イチゴの花芽検鏡(第1次腋果房:2番果)による栽培管理指導
20年産のイチゴの定植が9月5日から始まり、15日~20日をピークとして無事終了しました。
今年は植え付けてから定期的に降雨があり、活着(根づくこと)具合は良好で、初期生育は順調に推移しています。
10月6日と10日にイチゴの検鏡を実施し、1番果および2番果のすすみ具合および、栽培管理指導を行いました。
通常、10~11月に花が咲き、11月末から1月上旬(クリスマス時期がピーク)に皆さんが食べるイチゴが1番果、これ以降に店頭に並ぶイチゴは2番果、3番果と続いていきます。だいたい、九州の産地は6月中旬頃までイチゴを出荷し、恐らく5番果、6番果まで出ていると思います。
写真 右:実体顕微鏡によるイチゴ花芽検鏡。花芽は大変小さく、針の太さが大きく見えます。奥はJA壱岐市のイチゴ担当者。
イチゴの花芽検鏡は実体顕微鏡を使用し、イチゴの苗の葉を一枚ずつ取りながら、やすりで研いだ針で花芽までの葉をめくって剥いでいきます。これで花が出てくる出蕾(しゅつらい)までの葉数(内葉数)と、花芽ができあがっているか(花芽分化具合)を確認することで、定植して良い時期、並びに出蕾、開花、収穫の時期がおおよそ予想できます。
今回、検鏡した2番果は1番果の腋につくものであり、やや難しい作業です。恐らく全国の野菜技術者として、イチゴの花芽検鏡をマスターすることは大きな1歩であり、最初はかなり苦労すると思います。ある程度経験すれば慣れますが、それまでは失敗しながら習得するしかありません。これだけ科学が発達しているのですから、検鏡をせずに簡単な方法で花芽分化の確認ができる方法はないかと、ずーっと関係者で愚痴をこぼしてきました。
写真 左:1番果開花始めの圃場(10月10日時点)。マルチ被覆も終了し、これから交配のためにミツバチを導入、ハウスのビニル被覆作業が行われます。
2番果の検鏡結果をもとに、追肥施用量や時期、マルチ被覆などの作業工程等の指導、および1番果から2番果までの収穫にかかる期間(2番果までの内葉数)の予想もできます。農家の所得向上のためには、いかに1番果と2番果の間が開かずに連続して出荷出来るかが、大きな要因となります。
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