はじめやすい"ぶどう"の仕組みづくり
2021.06. 7
今の地域に赴任してから、『ぶどうをつくってみたい』という相談をよく受けます。
雨の多い九州では、ぶどうを栽培するために雨を避ける『屋根(施設)』が必要です。施設投資が必要なため、簡単にはじめられる作物ではない、というのが私のこれまでの認識でした。
しかし、ぶどうの担当である後輩のS技師から、
「使わなくなったハウスや野菜のハウスを改造し、器用にぶどうをつくっている人が多い」
という話を聞きました。実際、運転中に見かける小さなハウスの中に、ぶどうが育っています。実物を見ると、私の"ぶどう栽培かくあるべき"思い込みが、ぺろんと剥げ落ちました。
同時に、過去に見た『新潟県の水稲育苗ハウスを活用したブドウ栽培』が脳裏に浮かびました。目の前の地域の様子と新潟県の取組が重なって、はじめやすいぶどう栽培が、今の地域でも可能ではないかと考えはじめました。
そんな中、S技師は昨年、マニュアルの大元である新潟県に視察へ伺いました。新潟では、遠く九州からの来訪者を大変温かく迎えていただいたと聞いています。新潟県農業総合研究所園芸研究センター、新発田地域振興局、新潟地域振興局の皆様におかれましては、視察の際にはとてもお世話になりました。ありがとうございました。あの時見聞きし、受け取った種は、文字通り芽を伸ばしはじめたところです。
また、私たち果樹担当のアイデアを地域へ提案する際には、普通作の担当普及員との調整なしには進みません。一人でできることには限界があります。
"ぶどうをつくってみたい"と"ぶどうをはじめやすくする"のマッチングの中で、チームで仕事をすることの大事さも改めて考えました。
左 :育苗ハウスのぶどう / 右 :改造中の野菜ハウスに植えられたぶどう
「試してみて、もう少しできそうだと思えたら増やすのがいいですよね」
育苗ハウスや遊休ハウスにはじめてぶどうを植えた方へ、S技師がかけた言葉です。その言葉に、生産者がうなずいたり、来年は増やそうと話してくれます。S技師とぶどう栽培の提案や支援のため、地域を回っていると、生産者とのやりとりや説明の中で、ぶどう以上に伸びやかな成長を彼女に感じています。
今回のぶどうの取組は、市役所さんとともに地域へ広げていく予定です。収穫までにはまだまだ時間がかかりますが、実り多い季節が迎えられるよう、地域に寄り添った活動を続けていきます。