大分県
後藤美智子
後藤美智子
大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。
2023.06. 7
ご報告が遅くなりましたが、今年の5月より、普及現場を離れ、県庁勤務となりました。この場所で、執筆・投稿できたことは、自身の普及活動を考える一助となりました。事務局、他の投稿者、閲覧しているみなさまにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
私の普及活動のはじまりは、先輩から「あなたは、普及活動をよくわかっていない」という言葉を投げかけられたところからです。当時、試験研究機関に勤務しており、はじめて普及員試験を受験するためのOJT時のやりとりでした。
そんなわたしなので、1回目の試験は不合格でした。2回目で合格しましたが、その後もずっと「よくわかっていない」と言われた言葉が胸の中にあります。
本を読み、諸先輩や地域のみなさんの話を聴く中で得たものを、言語化するようつとめてきました。"生産者の所得向上のため、相手のやる気を引き出し(よくよく聴き取り)、自主的な経営者となるよう提案・改善を繰り返し、一緒に取り組んでいくこと"。現在の地域で仕事をする中で、さらに"聴くこと"の重要性を感じています。役割は変わりますが、普及活動で得たものを胸に日々の仕事に励みます。
写真を4枚掲載します。
手のひらにのる子犬が成犬になるほどの日々でした。飼い主の生産者には、山間地の農業とやりたい仕事をつくりだすことを学ばせてもらいました。
花の写真は『ベニドウダン』です。5月、最後に出会った、これまで見たことがなかった植物です。いくつになっても新たな発見や学びがあります。
草が刈られた風景は、私の実家の畑の様子です。他者へ草管理の提案をする際に、自分自身のことをいつも反省しています。栽培管理とは、草管理とのたたかいです。
最後の写真は、講習会の様子です。いつも、参加するみなさんの"技術や経営の改善"を目指す姿に支えられてきました。
ちなみに、私に「よくわかっていない」と言葉を投げかけた先輩は、今年の春、ご退職されました。お会いした際に、「もう一度、同じ職場で仕事をしてみたかった」と言っていただいたので、私もちゃんと成長しているのだろうと感じています。
日々、健康に気をつけながら、またこの場所に帰ってこられるよう、努めます。ありがとうございました。
2023.03.22
せん定の季節です。今年は、昨年秋の少雨にはじまり、1月下旬の寒波の影響で、樹が弱っているため、4月以降に花を見てからせん定(間引きせん定中心)しましょうと、巡回と講習会時にお話ししています。
樹勢の弱った樹では、せん定はまだまだ先ですが、ぶどうの時と同じく、生産者にお話しし、園地の様子を見ながら、営農指導員1年生と普及員1年生とで、実際の圃場でカボスのせん定を行っています。2人とも結果習性(花がつきそうな枝があるのか)を確認し、間引き中心で行うせん定が身についてきているように感じています。
ハウス栽培では、もうつぼみがふくらみ、一足早い春がやってきています。
私自身、今年は去年よりもせん定がわかるようになっていると感じています。早道、抜け道はありません。
今回の投稿の最後に、過去の大先輩の技術習得の道を照らしてくれる言葉を引用し、これからもせん定を続けたいと思います。
"せん定は一種の技術であって、熟練を要することはもちろんであるが、カンキツ樹自体がおのずと教えるのに従うのが最もよい。自然を無視してせん定整枝をすると、本来の性質が乱れてせん定の方法もむずかしくなる。往々特殊なせん定法が案出され、栽培家を迷わせているが、極端な方法は避けなければならない。それゆえカンキツをせん定するにあたってはまずその性質を十分に知得し、さらにせん定の本来の目的に反しないように心がけることが肝要である。しかし一応のせん定はだれでも容易にできるのであるから、あまりむずかしいものと考えないで、他人まかせにせず、枯枝を切るとか、光線が樹内にはいるように密生した枝を間引くなど、わかりやすい所から入門しおいおいと要領を習得するのが最良の道である。"
出典:改訂新版『カンキツ栽培法』農学博士 岩崎藤助 朝倉書店
2023.03.13
視察研修のその後、みなさんはどうしているでしょうか。
私は、実は視察が苦手です。視察は視察先の方の先駆的な取組を聞かせてもらえる貴重な時間です。そのため、必ず1つ以上、自分の産地に持って帰った種(アイデア)を根付かせるぞと、視察前も視察後も自分の肩に力が入ります。準備段階の調査も念入りに行い、エネルギーを使うという意味で、視察は緊張するし、苦手です。
かけた熱量の分、得るものはとても大きいです。参加したメンバー同士で意見交換を行う良いきっかけにもなります。
昨年度の笠間市のクリの取組の視察では、"地域課題解決手法の習得"を目的にお伺いし、たくさんのきっかけと気づきを持ち帰らせてもらいました。
今年は、お聴きしたお話、いただいた資料、実際の取組をお手本にしながら、私たちの地域でも種を蒔くことができました(わたしはブドウ、後輩はクリ)。
過大評価ではなく、できた、と私は感じています。これをゆっくりと笠間市のみなさんのような取組に、地域のみなさんと関係機関一緒に育てていくところです。
視察を受け入れる側の場合、あのときの皆さんは今、どうしているだろうかと考えることがあります。
伺う側だった場合は、その後を伝える機会があればと思います。
しばらく時間が経ちましたが、笠間市役所様、JA常陸様、笠間地区栗部会、そして視察をコーディネートしてくださった笠間地域農業改良普及センター、園芸研究所、何より生産者の皆様、あのときは本当にありがとうございました。
悩む度に、あの日お聴きした皆さんのお話と顔を思い出します。よちよち歩きの私たちの取組を励ましてくださったことが、いつも背中を押してくれます。
左上 :担当地域で貯蔵試験をしたクリを焼き栗に
右下 :貯蔵クリの腐敗調査
視察に苦手意識はあります。でも、視察は実りの多い活動です。
次の良い機会に巡り合ったとき、しっかり種をつかめるよう、日々、自分自身という土を育てていきたいです。
2022.12.12
普及指導の中で、"経営"は重要な観点です。私の管内では、生産者が独自で作る簿記の勉強グループがあります。その会に参加し、それぞれの経営の課題を聞きとり、改善の取組に繋げるようにしています。昨年より引き続き、経費の増加がみなさんの経営を悩ませています。
今回は、簿記グループから『インボイス制度』について学びたいと要望があり、普及1年生が資料と図を用いながら説明を行いました。
1年生は自分も簿記の基礎研修を受けている最中です。その時の講師の先生の話し方や内容を一生懸命聞き取って、整理し、みなさんの前で話しをしました。
結果は、「わかりやすかった」、「やっと(インボイス制度が)わかった」、「(今回の内容を踏まえ)取引先に確認してみる」と大変好評でした。
まずは、生産者からの要望に丁寧に応えるところから信用が生まれ、信頼関係がつくっていけると考えています。このことを改めて、技術と普及12月号の『普及方法とは何か(P49~53)』を読みながらも感じています。
今回の経験が1年生の自信にも繋がると、日頃の研修にもいっそう力が入ると想像しています。蛇足として、1年生の説明の後の私の説明がわかりにくかったこと(わからんと感想いただきました)を書き残します。先輩も勉強しつづけます。
2022.11.10
前回、OJTの取組として実施したぶどうのその後です。
生産者の園地でぶどうを収穫する時期(10月)がやってきました。
生産者と私とJAの1年生の3人で、出来を確認します。
房の形、房の重さ、1粒の大きさ、糖度.........(持ち帰ってから確認した項目もあります)。
JAの1年生に目標通りの果実か尋ねると、経過観察と同様に「粒の肥大や房のバランスを良くするためにもう少し摘粒が必要だった」との感想でした。そのためには、次作はどうするのか意見を聴きます。
今回は実施した作業は摘粒のみでしたが、花穂の調整からするとつくりやすくなります。"ぶどう"は1年1作です。1回で得た経験を、次の栽培に活かすことがとても重要です。
生産者からは、「みんな上出来」とのお褒めの言葉をいただきました。
せん定講習会の場所とすることも調整できたので、次は『せん定』でお会いしましょう。