普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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笠原 均

笠原 均

青森県の農業改良普及指導員(普及員)です。普及員歴はすでに20数年となるのですが、お話し好きが高じて、農業の担い手育成を担当していることが多いです。 プライベートでは、「気分はプロフェッショナルカメラマン」、「YouTube再生回数が伸びないけど作曲家とウインドシンセサイザー奏者」です。 加えていうと、15年前から音楽の秘められた力をフル活用して地域おこしをやっています。そんな活動のお陰で町内会役員から目をつけられ(勧誘され)、町内会の理事なんかやっています。もちろん、町内の草刈りやしめ縄づくりも、町内会最年少として参加しています。

北国でも暑さ対策してるのです(その1)

2014.05.29

 全国の皆さん! 青森県の夏は涼しいと思っていませんか?


 夏の暑さで有名な埼玉県熊谷市近くで生まれ育った私は、初めて青森で過ごした夏の宵の口、電車の中で体をガタガタと震わせていました。
 あんまり寒いので駅員さんに「スミマセン! もう少しエアコン・・・弱くできませんか?」というと、ものすごく驚いた顔をしてました。なんと、この電車、エアコンが付いていなかったのです! 私もたまげました。


 時は流れ、私が青森に移り住んで四半世紀、地球温暖化は青森県も例外ではなく、夏は確実に暑くなり、私が担当している花農家さんと、本気で夏場の高温対策に乗り出さなくてはならなくなりました。


 要は、夏の暑さで地面から花芽を出さなくなったアルストロメリアという花に、地面からどうにか「顔」を出してもらい、「お金」になってもらう必要があるのです。


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左 :咲き誇るアルストロメリア / 右 :高温だと花芽が減って・・・


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葉っぱだけ(葉芽)になります


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なんか花が少ない・・・


 と、なると当然、地中冷却の定番、農業用チラー(電気の力で冷却する装置)が頭に浮かぶのですが、チラーの効果はとても高いもののお値段もそれなりに高いので、農家さんに、
「ちょっと、お試しに入れてみません?」
と勧めてみても、そう簡単には受け入れてくれそうにありません。


 そこで、目を付けたのが井戸水です。私が担当している地域は、地下水の水質が比較的よく、これまでも農業用水として使われてきました。夏の暑い中で井戸水の水温を測ってみても、12℃と、かなり冷たい。


 これは、

「いける!」

と、思い数名の農家さんに、
「畝の中さ、井戸水のしゃっこい水とば流して地温を下げたいんだばって、どうだべ?」
(注釈:畝の中に井戸水の冷たい水を流して地温を下げたいのだけど、いかがですか?)

と聞いてみると、みんなが揃って


「井戸水だば、ひと月ずっぱと(ずっと)使っても、(10aで)1万円もかからねーべさ」


という話になり、ポンプの能力と、代表的な農家さんの契約電気料で、電卓をはじいてみると、なかなか農家の皆さんに受け入れてもらえそうなお値段です。


 「よし、塩ビパイプの継ぎ手でポンプの吐水口を分岐して、ゲートバルブ(という蛇口)で、かん水用と冷却用に分ければいいんだ!」


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農家さんが使っているポンプ(左)に・・・こんな分岐を付けてみる感じ(右)
 

 と、ポンプを分岐して、畝にパイプをつなぐまでのお値段を調べてみると、これまた、農家さんが受け入れてくれそうなお値段!


 ウキウキしながら、家庭用に使っている散水用合成ビニールホースのお値段を一般的なアルストロメリア農家の施設、75坪、3畝に2本ずつ入れることを想定して計算すると、またまた、「お手頃!」。
 農家さんが示していた75坪ハウスの予算範囲(3万円)にどうやら収まりそうです。
「これはいい!」と、さっそく、試験をしてくれそうな農家さんに話してみました。
 すると、


「普及員さん、そりゃあ、まねや~(ダメだよ)」
と、予想外にも険しい顔をされることになるのです。


えっ!いったい何がいけないの?Σ(゚д゚;) ヌオォ!?


ということで、次回に続きます。


【お断り】
 このブログは、ノンフィクションですが、普及指導員である私の私見に基づいて書かれています。
 技術導入に当たっては、各県の試験研究機関や普及指導機関が実施している内容に基づいて行われることをお勧めします。各県によって、気象条件、価格等、かなり変動があると思いますのでご注意を!

普及指導員は測ってます!

2014.04.15

 先日、子供から、「お父さんのお仕事はなに?」と聞かれました。
 どうやら小学校の社会の宿題らしいです。
 公務員と言ってもピンとこないし、試しに農業改良普及指導員と説明しても、さらに「なにそれ?」と返される次第です。

 でも、よくよく考えてみると、一番接しているはずの農家さんでさえ、現地講習会や、パソコンに向かっている普及指導員の姿は見ていても、ほかにどんな業務をしているのか、ほとんど知られていないように思います。


 そこで、今回は多岐に渡る普及指導員の業務の一つ、「測る」にテーマを絞って、ご紹介したいと思います。


 普及指導員の活動根拠は「農業改良助長法」という法律です。この法律には、「科学的技術及び知識の普及指導を行う」という、普及指導員は「科学的」な技術と知識をもって活動することが明記されてます。

 例えば、「高冷地の種まき準備の目安となる、今年の雪解けは早いのか遅いのか?」
 科学的な根拠を持って活動しなくてはならない私達は、あいまいな事は言えないので、
「○月○日現在の△△地点の積雪が、□cmなので、昨年より雪解けが早く、平年並の5月○日頃から播種作業が始まると予想される」というような回答をしなくてはなりません。


 そんなわけで、実際に現場に測りに来て、現場でタブレットの画面に書き込んでみましょう(寒いです)。


 「ここは、八甲田山麓、標高750mの農業開拓地です。4月10日時点の積雪は140cmです。大雪と言われた昨年より積雪は59cm少なく、雪解けの進みは、平年並みと言えます(公式発表ではありません。あくまでブログの中での話ですよ)」


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 計測しているのは、私と同じく普及指導員の仲間です。


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 一見晴れていて気持ちよさそうに見えますが、気温は2℃。風まで吹いてきて、体感温度は氷点下です。


 この八甲田山麓の畑は、年によっては4月上旬でも250cm以上積雪があり、時に調査棒の回収に苦労することさえある豪雪地帯です。雪解けが遅ければ播種できる面積が変わってくるから、雪解けの進み具合は、重要な意味を持つのです。
 

 さて、調査しているのは積雪だけではありません。ほかにも普及指導員は、正確なデータをもって生産指導活動ができるよう、さまざまな作物の生育を調べています。
 青森県の場合は、米、りんごの生育は当然ですが・・・


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 寒風にあおられながら、にんにくや・・・・


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 将来的に普及すべき技術を施した、いちごの生育を測ったりもしています。


 科学的根拠に基づいた、正確で有益な情報を伝えるため、農家の皆さんの目に触れないところでも「正確に測っている」のです。
 多くの皆さんに、こんな地道な普及指導員の活動を知っていただけるとうれしいです。


 ということで、標高750m、春の八甲田山麓からの実況レポートを送信します。
 

「黒石4Hクラブ」企画のお見合いパーティ

2014.03.25

 3月15日、「黒石4Hクラブ」企画のお見合いパーティが行われました。
 これは、地区の農業委員会連絡協議会と協力して、4Hクラブが開催したもので、カッコイイ農業青年と、近隣のステキな女性達、計36名がトキメキの時間を過ごしました。


 お見合いパーティを4Hクラブが企画することには、非常に大きな意味があります。
 それは、企画、広告、お金の管理、運営、各団体との連絡調整等々、まさに農業青年らが将来「農家という会社」を経営するためのノウハウがすべて詰まっているからです。
 また、お見合いパーティは、人の人生を大きく左右します。そう思えば4Hクラブ員も、それを支援する普及指導員も当然力が入ってしまうわけで、企画する4Hクラブ員は、何度となく台本を書き直すことになるのです。


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企画会議のようす。
難しい問題にさしかかると自然と菓子の消費量が増える・・・禁煙だから!?


 そんな会議をしているうちに、あっという間に「お見合いパーティ」の当日になります。
準備も当然、みんなでやります。


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左 :協力して会場づくり / 右 :司会は、直前まで台本をひたすら暗記・・・・


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さて、本番です。スタッフの緊張も一気に高まります。「かんぱ~い!」


参加者が、楽しく歓談している間も・・・
イベントを盛り上げる「裏方」は大忙しです。


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パーティグッズを運び・・・(左)、ウエイターまで、こなします!(右)


「さて、閉会まであと30分、カップルは成立するか!?」


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無事、2組のカップルが成立しました


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カップルにならなかった人も、スマホのコミュニケーションアプリ「Lineでふるふる」してお友達を追加したり・・・


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こっちでも、メールアドレスを交換してたりしています


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最後に記念撮影!大成功です


【追記】
 農業後継者向けのお見合いパーティは、30年後の農業後継者を確保する上で、とても大きな意味があります。
 自宅と畑の往復に終始する農業青年は意外に多く、出会いがとても少ないそうです。
また、はじめにも書きましたが、4Hクラブが企画、運営を行うのは、将来、農業経営者としてのスキルを磨く上で非常に良い機会だと思います。大変だけどね!


 さて、このブログを読んで、
「よし、うちの4Hクラブや職員にお見合いパーティを企画させよう!」
と思ったとしたら、ちょっと待ってくださいとお伝えしたいです。

 これまで何度となく、4Hクラブ員とお見合いパーティを企画した中で気がついたことがあります。それは、お見合いパーティ成功の鍵は、「9割が人集め」、「1割が運営」ということです。


 もしも、「お見合いパーティを企画させよう!」と思ったら、まずは、あなた自身が参加者を募ってください。
 そして、参加者が集まったら、既存のお見合いパーティを紹介するか、レストランを借り切って食事会を行うのが良いと思います。
 結婚に前向きな男女を集められれば、自然とカップルは成立するのです。逆に結婚に前向きな男女を集められなければ、どんなに良いパーティでもカップルが成立しないのです。


 「大事なことは、パーティを行うことでなく、カップルを成立させること、結婚につなぐことです」


 最後にもう一言・・・
 先日、昨年のパーティに参加した男性から、連絡がありました。
「私達、結婚しました! 近く、父になります。本当にありがとうございました」


 公務員をしていて、こんなにも深く感謝される仕事は、なかなかないと思います。
 4Hクラブのメンバーや、協力してくれた多くの人々に、私こそ心から「ありがとうございます。」と頭を下げたいくらいです。

雪は残れど、ハウスの中は春満開です

2014.03.10

 青森県で普及指導員をしている笠原と申します。
 今回からしばらくこちらのコーナーへ投稿させていただくことになりました。どうぞ、よろしくお付き合いください。


 まずは、自己紹介を兼ねて地域の状況をお伝えしたいと思います。
 私が4年前から勤務している「中南地域県民局地域農林水産部農業普及振興室黒石分室」という、とても一度では覚えきれない長い名前の事務所は、桜で有名な弘前城のある弘前市から、東へ10kmほど向かった場所にあります。

 私がおもに巡回している黒石市近辺は、青森の特産物で一番先に頭に浮かぶ「リンゴ」以外にも、米、ニンニク、アスパラがあり、八甲田山を750mくらい登れば、ニンジン、ダイコン、レタス、ハクサイなどの高冷地野菜畑が広がっています。もちろん、夏秋トマトを中心とした施設栽培も盛んです。


 私は普及指導員歴16年。おもに野菜栽培を担当してきました。
 現在は、県の花き振興と、農家の若者達の活動支援をしています。そして仕事では、「答えは必ず現場にある!」という普及指導の大先輩の教えを素直に受け継ぎ、普及指導員七つ道具(?)と誰がいったか知りませんが、メジャーから温度計、ルーペ、ピンセット、ビニール袋等々、さまざまな小物を実装して現地活動に勤しんでます。
 

 さて、そんな私が、今月の青森の旬はこれ! とあげるとすれば、ストックという花でしょう。
 9月にタネをまいたストックの花がまさに今、出荷の最盛期です。ストックは、ダイコンやハクサイと同じくアブラナ科の仲間で、幾重にも重なった小さな花びらと、無分枝系のまっすぐな姿がとても愛らしくもすがすがしいです。


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ハウスの外は、こんな感じ(左)ですが、ハウスの中は、ストックが満開!


 青森の長い雪の期間、じめじめした空気で花が悪くならないよう、農家さんがずっと見守ってきた花です。ストックの開花は青森の農家さんにも、花担当普及指導員にとっても、まさに「春を告げる花」なのです。
 この花は、どちらかというとつつましやかな花なので、他の花とも合わせやすく、同じく中南地域で生産されるアルストロメリアのような大きめの花と合わせると、一気に豪華な花束が完成です(さりげなくセールストークも交えてみました)。


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ストックの学名は「マッティオラ・インカナ」。
マッティオラは植物学者「マッティオリ」の名前から、インカナは「灰白色の」の意味で、写真のように細かい毛が生えて、確かに灰白色に見えます。


 ストックの花言葉は、「愛の絆」、「永遠の愛」・・・。ストックにお好きなお花を合わせて、ご家族にストックの花のような「まっすぐな愛」、「永遠の愛」を伝えてみてはどうでしょう。

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