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blog_hukyu_kasahara2_f.jpg青森県
笠原 均

笠原 均

青森県の農業改良普及指導員(普及員)です。普及員歴はすでに20数年となるのですが、お話し好きが高じて、農業の担い手育成を担当していることが多いです。 プライベートでは、「気分はプロフェッショナルカメラマン」、「YouTube再生回数が伸びないけど作曲家とウインドシンセサイザー奏者」です。 加えていうと、15年前から音楽の秘められた力をフル活用して地域おこしをやっています。そんな活動のお陰で町内会役員から目をつけられ(勧誘され)、町内会の理事なんかやっています。もちろん、町内の草刈りやしめ縄づくりも、町内会最年少として参加しています。

老眼!?普及指導員お薦めツール(その3)

2014.11.28

【前回あらすじ】 ▼前回ブログはこちら
 普及指導業務のスマート化が進むなか、スマホ顕微鏡レンズを試しているうちに、すっかりハマッテしまう普及指導員の私。
 今回は、自宅で撮影したものも含めて紹介します。というか、全部、私の部屋で撮影したものになってしまいました。ここまでくれば、単なる趣味です。


【まずは撮影風景・・・私の机の上は、こんな感じ】


kasahara_12_1.jpg


1 メインLEDライト
 被写体を浮かび上がらせ、陰影を付けるために使用しています。かなり明るいライトです。


2 補助LEDライト
 メインLEDだけだと、陰の部分がつぶれてしまうので、16個のLEDを補助光として使っています。LEDというのがポイントで、熱を持たないことが撮影の際に必須条件となります。


3 顕微鏡を付けたスマホ
 前回ご紹介した顕微鏡を付けた、「どこにでもありそうな」スマホです。


4 被写体
 撮影する対象です。


5 スマホ用三脚
 写真がブレないために、スマホを固定する三脚を使用しています。ただ、思ったより自由度が低く、改良が必要と思われます。


6 黒い板
 ホームセンターで購入したプラスチックの板を使用しています。これで、背景に変なモノが写りません。右手に見えるプラスチックのクリップは、ホームセンターなんかで売っているPOPクリップです。ブックエンドを併用すれば、自由に角度を変えて、さまざまな背景が設置できます。


7 第三の手
 銀細工等のクラフトコーナーにあります。かなり重宝しています。今では、これなしに撮影できません。


8 花瓶
 切り花を撮影するときに使用しています。色のない花瓶がお薦めです。被写体の色に影響を与えないからです。


9 保冷剤
 昆虫を撮影する際は、もっと大きな保冷剤を使って机の上全体を冷やしています。昆虫が動き回って、写真がブレるのを防止するためです。小さな虫なら、小さな保冷剤の上をはわせるだけで、かなり動きが鈍くなります。


 ・・・おやつのアイスは、どうでもいいですね。
 

【マクロ撮影の問題】
 マクロ撮影は、ブレと浅い被写界深度(ピントが合う範囲が極端に狭くなる)との戦いです。
 ブレは、手ブレと被写体ブレに分けられます。
 手ブレは、三脚に固定することと、音声認識シャッター(前回のブログ参照)で、ほぼ防げます。やっかいなのは、被写体ブレという、撮影する対象自体が動いてしまうことです。


kasahara_12_2.jpg
触角が不鮮明なのは「被写体ブレ」、写真全体が動いて見えるのは「手ブレ」。
マクロ撮影では、ピントの合う範囲が極めて狭くなりやすく、頭部以外はボケています


【被写体ブレを防ぐ】
 植物の場合は動きませんので、普通に花瓶に挿しておけばOKなのですが、思い通りのアングルで撮影しようと思ったら、「第三の手」が便利です。手にピンセットを持って作業する場合に比べて格段に自由度が増し、しかも被写体ブレが生じません。


 問題は、昆虫です。危ないので、始めはスズメバチに殺虫剤をかけて撮影していました。しかし、触覚が下がってしまう、足が折りたたまれてしまう、なんか体の向きが不自然になる・・・等々、さまざまな不具合が発生しました。

 さらに、自分のお気に入りのクワガタに殺虫剤をかけるわけにはいきません。
 そこで試したのが昆虫の冷却です。夏場にいる昆虫は、ちょっと涼しくするだけで、ほとんど動きを止めてくれます。ライトにLEDを使うのも、被写体の温度を上げないためです。


 ちょっと意外だったのはカメムシで、保冷剤でしばらく冷やしても暴れまくりました。ピンセットで何度も押さえたので、部屋の中は、きゅうりのようなニオイで充満しました。
 やむを得ず、青年自然の家の合宿で覚えたガムテープでカメムシをはさむという、「科学的技術及び知識の普及指導を行う」はずの普及指導員としては、極めて地味な方法をとりました。しかし、これが意外にも効果絶大だったのでした。


 さぁ、作品の紹介にかかりますか・・・「え!?」Σ(゚д゚;) ヌオォ!?

 「ブログだから、あんまり長文は困るって!?」


・・・・仕方がないので、次回・・・

ヤレヤレ┐( ̄ヘ ̄)┌マイッタネ・・・.

老眼!?普及指導員お薦めツール(その2)

2014.11. 7

【前回あらすじ】 ▼前回ブログはこちら
 普及指導業務のスマート化が進むなか、なにか便利なものがないかな~と探してるシーンで前回は幕切れ。今回は、しっかり紹介します。近くが見えなくなったな~と気になる皆さんは、必見です。


【意外にあっさり見つかるもので】
 『求めよ、さらば与えられん』
 ビジネス書には、たびたび引用される聖書の言葉ですが、パソコン雑誌を読んでいたら、あっさりと見つけました。
 「スマホが顕微鏡に!」と、銘打って、スマホに簡単にくっつくマクロレンズが数千円で売っているのです。調べてみると、いろんなメーカーが、いろんなタイプのスマホ用マクロレンズを作っているではありませんか!


【さっそく購入しました】
 せっかくなので、写真のプロでもなんでもない私の感想を書きます。

 私の購入したのは、直径2cmほどのスマホ用マクロレンズで、マグネットで取り付けるタイプなので簡単です。重さは、5g程度と非常に軽いので、スマホのアクセサリーとして付けておいてもまったく気になりません。


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 画質は、A3サイズの講習会の資料にデカデカと使えるくらいのレベルです。画像周辺のゆがみはわずかにありますが、ほとんど気にならない程度です。


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 使ってみて、私的に普及指導員アイテムとして活用するポイントは、次の3つです。


(1)明るいところで撮影
 直射日光が当たらない、柔らかい光に包まれる場所で撮影すると良いです。ピントが手前から奥までしっかり合いますし、陰ができなくて講習会資料に使いやすいです。


(2)両脇をしっかり締めて撮影、シャッターは音声認識にする
 高倍率なので、ブレやすいです。両脇をしっかり締めるだけで、ぐっと写真が鮮やかになります。シャッターは、音声認識にしましょう! ブレが格段に減らせます。
 でも、誰もいないと思っていた静かなビニールハウスの中で、

 「(音声認識シャッターの)はい、チーズ!」
を連発しているとき、突然、後ろから農家の方に

 「何してら~?(何をしているの?)」
 と声をかけられると、悪いこともしていないのに、ものすごく困ります。


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イメージ


ヤレヤレ┐( ̄ヘ ̄)┌マイッタネ・・・.


(3)レンズをきれいにして、カメラのレンズの真ん中にぴったり付ける
 どんなに良い道具でも、使い方が悪いと本来の性能が発揮できないものです。ちょっと写りが悪いな~と思ったら、レンズを清掃する、レンズ保護フィルムを新品と交換する、光の軸がずれないように、スマホのカメラの中心と、マクロレンズの中心がずれないようにぴったりとはめる。といった当たり前のことをやると、きれいに撮れます。

 現場で病害虫を確認するのには、まだまだ一般のルーペの方が便利ですが、記録したり、別の部署の人に問い合わせたりするには、このスマホの顕微鏡レンズがなかなか使えます。おすすめです。


 今回はここまでしか書きませんが、実は私の悪い癖で、この後、すっかりこのスマホ顕微鏡にハマッテしまうのです! 

 ということで次回!

老眼!?普及指導員お薦めツール(その1)

2014.10.31

【近くが見えにくくなってませんか?】
 最近、近くのものが見えにくくなった・・・小さい文字が見えにくくなった・・・コナダニどころか、ハダニさえ見えなくなった・・・花を叩いたとき、花の中から出てきた黄色い粉が、ゴミなのか、花粉なのか、いやいや・・・害虫なのか?

 はたまた自分の目からおちた「目ヤニ」なのか「鱗(うろこ)」なのかさえ区別できない!
 ・・・というのは別にして、見えないのは本当に困りますね。


kasahara_10_1.jpg
花の中から出てきた害虫「アザミウマ」


【見えないと仕事になりません】
 私も人並みに、小さなものが次第に見えなくなりました。
 現場で生産者から作物の被害を相談されたら、これまでの経緯や症状から速やかに原因を特定し、対策をとらなくてはなりません。
 よく武術の世界では、「五感を研ぎ澄ませ!」とかいいますが、ダイコンの軟腐病の臭(くさ)いニオイをかいでみることはあっても、味覚で味わってみるはずもなく、植物を悩ます病害虫を判定する場合の多くは視覚からの情報に頼らざるを得ません。


 でも、よく見えません。


 これは、普及指導員の資質にも関わるものではないかと、だんだん心配になってきます。
 もちろん、普及指導員ですから、こんなものを使ってますが・・・ 


kasahara_10_2.jpg
ルーペの類


 とにかく、よく見えなければ不便だし、オフィスのスマート化が進む昨今、他の事務所にいる仲間達に相談しようにも、写真がなければなかなか話が進みません。
 さて、どうしましょう?


 次回は、知る人ぞ知る「今時の普及指導員」らしいアイテムをご紹介します。

スクーターで駆け抜ける男~ねぶたの地より②

2014.10.14

【前編あらすじ】 ▼前回ブログはこちら

 現在もスクーターで農園を巡回する、有限会社 『石田・農園(※)』の代表 石田定伊(さだよし)氏。露地栽培しかなかった標高約400m、八甲田山系中腹の開拓地の通称、厚目内地区に、施設栽培のほうれんそうを持ち込んだ男である。
 当時の農協指導員の後押しを得て、ほうれんそう栽培を始めるものの・・・


【ほうれんそうと雇用と】
 石田氏は、平成11年、さっそく100坪、3棟のハウスを立てた。もちろん、ほうれんそうを作るためだ。

 1年目。彼の読みは当たった。冬期に2mの積雪に覆われるこの地区でも、品質の良いほうれんそうが、年5回も収穫できたのだ。さらに、夏の暑さを嫌うほうれんそうにとって、この地区は、まさに適地であった。
 彼は、補助事業を活用しながら、年数棟というペースでハウスを増やした。しかし、家族労働には限界がある・・・。彼は、順次雇用を増やしていった。


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石田・農園ハウスと、その周辺


 そして、平成18年、安定した雇用と社会的な信用の確保、継続的な事業運営のため、家族経営から法人へとシフトした。ここで、石田・農園は、「有限会社 石田・農園」となった。


【通年雇用の壁を破る】
 人を雇う者なら必ず考えるのが、熟練した作業員の継続雇用だ。しかし、1年の3分の1近くが雪に包まれるこの地域で通年雇用は極めて困難だ。そこで、石田は考えた。

 「農産物を運んだあと、空になったトラックをうまく使えないか?」

 平成23年2月、(有)石田・農園は、運送事業認可を得た。こうして、空になったトラックで荷物を運送できるようになり、それは、そのまま年間雇用を実現させた。


【強まる組織の力】
 現在、有限会社石田・農園では、代表の定伊さんを筆頭に、妻と、両親、さらに7人の正社員、19名の季節雇用社員がいる。多くの農業青年が、彼のほ場で汗を流しているのだ。石田氏の指導は情熱的で、次代の経営者を育てているのがよくわかる。また、今年の春から定伊氏の娘、裕香(ゆか)さんが石田・農園の役員として加わり、組織としての力がますます強まっている。


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人材育成に、当然、力が入る


【高品質ほうれんそうのヒミツ】
 最後に、せっかく聞いてきた高品質ほうれんそうの秘密を一つ紹介したい。
 収穫されたほうれんそうを洗うのは、県の名水百選に選ばれた地元の名水「寒水(ひやみず)」である。この「寒水」で締められたほうれんそうは、そのまま速やかに自社の冷蔵庫へ運ばれ、予冷される。高い品質の保持には、収穫後の「この一手間」が欠かせないそうである。

 そんな高い技術と品質に裏付けされた石田・農園ブランドほうれんそうは、今後もさらに引き合いが強まっていくだろうと、取材しながら強く感じたのである。


 ・・・という感じで紹介させていただきました。

 「石田社長! 冬になったら、また、手弁当でゆっくり話をしましょう!」

 普及指導員の仕事は、魅力が尽きません!


社名について
 『石田農園ではなく、「石田・農園」なのはなんでですか?』
 と、多くの方から聞かれました。筆者もわからないので、直接本人に聞いてみました。

 社長の話によると、たまたま、出先で出会ったある篆刻師からのアドバイスだそうです。「石田農園」に、あと一文字加えることで、「会社がみんなで力を合わせて伸びていく会社に変わる!」ということで、社名を「石田・農園」に変えたそうです。
 確かに、作業風景を見ているだけでも、みんなで力を合わせている雰囲気がとても伝わってきてます。いい会社だと思います。

スクーターで駆け抜ける男~ねぶたの地より①

2014.10. 9

 「こんにちは、私、普及指導員です」を読まれている全国各地の皆さん、お元気でしょうか? 青森県は、すっかり秋めいて、山々の紅葉が、そろそろと街にも降りてくるような今日この頃です。
 そんな中、「普及指導員をやっていて良かったな~」と思えるお仕事が舞い込んできました。ある業務の資料として、ある農家さんの経営状況をまとめるというものでした。
 もちろん、この資料は、栽培面積や経営概況を書いて、すでに提出しているのですが、せっかく魅力的な農家さんから楽しい話を聞いたのですから、紹介しないわけがありません。今回は、その農家さんの了解を得て、資料にならなかったお話をドキュメンタリータッチで紹介させていただきます。

 かつてNHKで放送されていたドキュメンタリー番組『プロジェクトX』の田口トモロヲさん風の語りをイメージして読んでくださいね。

 タイトルは、「自社ブランドほうれんそうと、収穫後の一手間」って感じで、今回の主人公は、「有限会社 石田・農園 代表取締役 石田定伊(さだよし)さん」です。では、どうぞ!


【越えた一つめの壁】
 平成24年2月中旬、有限会社 『石田・農園(※)』の代表 石田定伊氏が、黒石市役所2階の市長室へ招き入れられた。平成23年度の石田・農園の売上がついに1億円に達し、市長を表敬訪問することになったのだ。


【スクーターで駆け抜ける男】
 標高約400m、八甲田山系中腹の開拓地の通称、厚目内地区。夏の強い日差しの下、頭にハチマキ、腹に白いさらしを巻いて、農道を50ccのバイクで駆け抜ける男がいる。そう、彼こそが、「石田定伊(53才)」有限会社 石田・農園の代表なのである。
 彼が管理するハウスの棟数は、実に50棟、総面積で4,200坪にも上る。そして、そのハウスの約9割で、ほうれんそうが栽培されているのだ。


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厚目内全景・まさに山奥である


【にんじん産地に、緑の葉が茂る】
 石田定伊氏は、今から30年ほど前、数年の会社勤めのあと、厚目内へ戻り、祖父の代から続く農業に就いたという。当時の地区の主力作物は、露地にんじんだった。石田氏も当然のこととして、にんじん栽培を引き継ぐことになった。

 平成5年、この地区に転機が訪れる。黒石市の実験ほ場という名目で、8棟のビニールハウスが建設されたのだ。このハウスの夏秋トマトを見て、以前、出稼ぎ先で見た岐阜県飛騨地方の「ハウスほうれんそう」を、石田氏は思い出していた。飛騨地方は、昭和30年代から続くほうれんそうの産地だが、昭和40年代に雨よけハウス栽培を導入してから、急速に販売額を伸ばし一大産地となった・・・と、石田氏は親しかった当時のガソリンスタンドの店員の話を思い出していた。


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予冷庫へ慎重に搬入する


 ・・・彼は思った。
 「飛騨地方と気候が似た厚目内なら、真夏に最高のほうれんそうが作れるんじゃないか!?」・・・と。
 彼は、信頼のおける当時の農協の指導員、山内氏に、その思いを打ち明けた。山内氏は、静かに一言だけ語った。
 「いい・・・やってみなが(やってみないか)!」


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4月上旬の厚目内地区


【後編予告】
 さっそく、ほうれんそう栽培に取り組む石田氏。ほうれんそうは順調に生育し、順調に栽培面積を増やしていった。誰もが彼の判断は正しかったと言った。
 しかし、このあと、雪国ならではの落とし穴が待っていたのだ。


社名について
 『「石田・農園」ではなく「石田農園」の間違いでは?』
 と何回も指摘を受けましたが、間違いなく、「石田・農園」です。
 実は「石田・農園」という社名には、社長の知られざる仲間たちへの思いがあったのです(続きは次回へ)。

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