普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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blog_hukyu_kasahara2_f.jpg青森県
笠原 均

笠原 均

青森県の農業改良普及指導員(普及員)です。普及員歴はすでに20数年となるのですが、お話し好きが高じて、農業の担い手育成を担当していることが多いです。 プライベートでは、「気分はプロフェッショナルカメラマン」、「YouTube再生回数が伸びないけど作曲家とウインドシンセサイザー奏者」です。 加えていうと、15年前から音楽の秘められた力をフル活用して地域おこしをやっています。そんな活動のお陰で町内会役員から目をつけられ(勧誘され)、町内会の理事なんかやっています。もちろん、町内の草刈りやしめ縄づくりも、町内会最年少として参加しています。

話の行方を「固唾を飲んで」私は見守る

2024.03.18

 真夏のジャズイベントの興奮冷めやらぬ令和4年9月、五所川原市三好地区における住民座談会は、青森の夜なのに「激しい熱気」に包まれていました。

 座談会参加者から「次はどんなイベントやるか!?」って感じの思いが、波のように押し寄せてきます。


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座談会のイメージ...。さすがにオーバーだ


 ただ時代は、コロナ禍。行動制限下にあります。次のイベントをいつやるかワクワクしている雰囲気の中で、一つの冷静な声が上がります。八戸さん(仮名)です。


「毎年11月にやってた三好地区住民協議会祭りの中止が決定している中で、ワダヂミタイナ(津軽弁:私達のような)一塊の集まりがイベントを勝手にやっていいもんか!? 住民協議会の決定に反旗を翻すようなもんだぞ。」


 その言葉に会場はシーンと静まり返えりました。まるで水をうったかのようです。本人曰く「穏やかな話し方」の八戸さんですが、毎回、極めて鋭いのです。


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座談会に水を打つ八戸さんイメージ


 普及指導員の私は、息を飲んで見守ります。ゴクリ(ツバを飲む音)。
お喋りの私も、ここは我慢です。


 この状況で口火を切ったのは、几帳面かつ行動力満点なK子さん(仮名)です。
「だったら、住民協議会の二日間の祭りを復活させればいいんじゃないの!?」


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口火を切るK子さん(あくまでもイメージです)


 普及指導員の私は、さらに座談会の行方を見守ります。


 ・・・・それはいい考えだ! やろう!
 自分達で、決定をひっくり返そう!

 K子さんに賛成する声が、会場の各方面からあがります。


 そんな訳で、この日に参加した数名で、協議会の役員に直談判することになりました。
(本当にやるの? すごい! その時の筆者の感想)

 
 その数日後、「三好地区住民協議会祭りの中止決定は覆った」という連絡が、私の元にも入ります。
 二日間ではないけど、一日だけやることになったらしいのです。


To be continued.


<次回予告>
 三好まつりは、11月上旬。あと40日で本当に開催できるのか!? 大丈夫?


※画像は、AIで作成しています。

やってみれば楽しいのです!

2024.02.16

 令和4年の8月と言えば、まだコロナ禍の真っ最中です。
 そんな訳で周辺から「コロナ禍でイベントをやっていいの?」みたいな「不安のくすぶり」を感じながらも、五所川原市三好地区においてジャズライブを「本当(マジ)に」開催することになりました。

 ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、「ジャズライブを行うこと」が、私達の目的ではないということです。
 普及指導員や中間支援組織の真の目的は、
①集められた住民が主人公となって、結束力を高めること
②三好地区において、地域おこしに向けた活動がスタートしたことを地域住民に伝えることなのです。

 さらに、面白い仕掛けがあります。
 実は、イベント開催に向け座談会に集まってくれた「意識の高い住民」の皆さんと普及指導員の間では、密約を交わしていたのです。それは・・・


「一見、ジャズライブをやると見せかけて地域の住民を集め、そのまま座談会に誘導する(ひきずりこむ)こと」です。


 と言っても、
「少子高齢化対策に向け座談会で議論したいので、参加してください!」と言った真正面からの誘い方はしません。

 ここは、
「わざわざ三好地区で演奏してくれたジャズオーケストラに、皆さんから労いの言葉をかけてもらえませんか。演奏が終わったらコミュニティセンターで、楽器の片付けをするので、皆さんも一緒にセンターへ入ってもらえませんか。」

 ・・・そうやって地域住民を誘うことを、私達は、固く、堅く、硬く約束しました。


 そんな訳で、写真でご紹介しましょう。


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<会場準備のための草刈>

 基本的に、普及指導員がやるのではなく、住民がみんなでやります。達成感を一緒に味わうためです。
 当然、地元農家の方が、私よりも草刈の手際が良いです。


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<ジャズオーケストラの演奏>

 8月21日、いよいよ演奏当日!
 しばらくコロナ禍での行動制限がかかっていたので、久しぶりに体をスイングすれば、スカッとします。


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<三好地区住民協議会会長からの挨拶>

 このイベントをやることになった経緯を会長から説明。
「行動制限が続く中ですが、やはり地域住民が交流する場が、私は必要だと思うのです!今日は集まってくれて本当にありがとう!」
 拍手!拍手!


・・・私は、この時、あることを思い出していました。
 「会長!あなたは、コロナから住民を守るためと、最後まで開催に反対してませんでしたか!?真面目に怒ってましたよね!?」・・・今は良き思い出(´∀`*)


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<マスクこそしていますが、会場の皆さん、大盛り上がり!>


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<消防団から地元の若手も参加!>


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<平均年齢が一気に下がった座談会>


 地域おこしのための集まりであることは最後まで明かしませんでしたが、「三好地区で何かが動き出している」そう皆さんは、感じたみたいです。

 ちなみに中央で立ち上がって自己紹介する地元の青年は、この1年後、三好地区のために多大なる貢献をするのです。
 ただこの時、まだ誰もその大きな変化の胎動に気づいていませんでした。

 この日は、玉のような汗が噴き出す真夏の暑い日でしたね。
 でもこの日を境に、急速に県(普及指導員)とNPO、住民間のワダカマリが解けて流れたのです。


 ということで、普及指導員としては一つ目の壁は越えたな~というぐらいの思いでしたが、「地域おこし」という転がり始めた大きな石は、この後、急激に加速していくのです。


To be considered.


※肖像権保護のため、写真は画像処理をしております。

そう簡単な話ってないよね

2024.01.11

※前回の投稿はこちら


「どうして三好地区に県職員が来るんだ?」
「モデル集落なんて、勝手に決めないでくれ。」
「あんたらは金をもらって仕事で来ているのかも知れないけど、うちらには一銭もでないんだよ? なのに、なんで俺たちは座談会に集められているんだ?」


 令和4年度に入って前任者から引き継いで出席した五所川原市三好地区の住民座談会は、震える程の緊張感からスタートしました。
 もちろん前任者にも言い分があって、「コロナ禍であって、人を集めることができずコミュニケーションも全く取れなかったんだ。」とのこと。

 それはもっともな意見で、おそらく自分が担当していたとしても、令和3年度に「みんなで集まってコミュニケーションを図りましょう!」と言ったら袋叩きにあっていたかも知れません。


 少なくともすぐに気付いたのは・・・
・我々は招かざる客である。
・この事業をこの地区でやることになった理由が全く理解されていない。

 そもそも、三好地区の人達は我々を必要としていない・・・それが良く伝わってきました。
 まるで、よく切れないチェーンソーで金属板を切り裂くような声で、さらに直立して怒りをぶちまける住民・・・。


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 この時、私が頭の中で考えていたのは、「あー、このシーン。写真に撮っておきたいな~」ということでした。
 実は、私はシナリオどおりの静かな意見交換会や座談会が大嫌いで、こういう本気炸裂の意見交換会がやりたかったのです。
 そして、この場で、我々普及指導員にとっての盾、住民の的になったのは、中間支援組織「NPOジャズネットワーク」です。歓迎されると思いきや、打たれまくりです。・・・まさに「忌憚のないご意見」のパンチ炸裂です。


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「今まで色んな人が来て、地域おこしや地域再生の話があったんだ。でも全部ダメだった。全部ダメ! もう今さらダメなんだよ。」 


 だが、ここで中間支援組織の代表の川端氏が勢いよく立ち上がりました。
「村木さん(仮名)! もう出来ないっていうのはやめましょう! これまではできなかった。でも、今度こそやるんです!」


 あまりの迫力に、会場は静けさを取り戻しました。
 私は心の中でつぶやきました。
「あー、やっぱりこのNPOに頼んで良かった。」
 住民に怒鳴られて怯むようなNPOなら、最初から一緒に仕事したくなかったのです。


 そして、沈黙を守っていた普及指導員である私も流石に発言!

「なぜ三好が選ばれたのか、今さら理由を話しても仕方がないでしょう。今、ここに集まった我々は偶然集まったのではないと思っています。私達は偶然ではなく、必然として今日ここに集まったんです。20年後の地域の子供達が、きっと今日からの我々の活動を評価してくれるはずです。一緒にやってみませんか。もう一度(倒置法引用)。」


・・・きまった。d(゚∀゚*)


 座談会は多少の火種は残しながらも、心を許しあった者同士が見せる穏やかな表情で終えることができました。たぶん。


 座談会終了後、中間支援組織代表の川端氏が言いました。
「笠原さん(私)、ごめん・・・。怒るつもりはなかったんだけど、できない理由ばかり挙げるから頭に来ちゃって・・・」

 私は、こんな中間支援組織と一緒に仕事がやれて、本当に幸せだなと思いました。


to be continued.


<追記>
 この文章は、文字数の制限で3回の座談会での出来事を短縮して記載しています。よってフィクションぽさが出ていますが、これが「現実」です。なお、個人名も今後の運営に差し支えないよう配慮していますが、実在しています。これが現実です。

夜の出会いは地域を変えるか!?

2023.12.19

 この度、このコーナーを書かせて頂くことになりました青森県の普及指導員(普及員)です。


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 私の主たる業務は、通称「地域経営」と呼ばれる、一言で言えば「農業サイドからアプローチする地域おこし」という感じでしょうか。農村なので農家が多いですが、農家だけで構成される地区というものは現実にはありません。そんな訳で、農家だけでなく地域の自営業者やサラリーマンなんかも巻き込んで、


 「俺たちの苦労は、20年後の子供達がきっと評価してくれる。過疎化にも少子高齢化にもめげず、みんなで素敵な未来を築こう!」


と、煽っています。

 しかし普及員一人が集落座談会に入ってそんな事を言っても、「あいつ何しにきたんだ?」「お役所がなにか夢みたいなこと言ってるぜ」と冷ややかな目で見られるだけです。

 そこで青森県では、県(普及員)と住民の間に入って双方を調整する「中間支援組織」という団体を挟んでいます。だいたいは、地域おこしを得意とするNPOとかが担っています。


 さて、令和4年の4月に私が「地域経営」なる業務を担当し、まず取りかかったのは、中間支援を引き受けてくれるNPOを探すことです。それまでも様々なところから、そのような団体を紹介されたのですが、どうも私のイメージに合いません。どの団体も、真面目でおとなしいのです。地域おこしに必要なのは、夏の夜空を焦がす立佞武多のような熱い男です(女性も大歓迎)。


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 ここは大事なところなので、そう簡単に妥協せず、事業の趣旨を方々で説明して歩き、多くの人々に「こんな人を探しているんだよー」と「人捜し、団体探し」をお願いして歩きました。
・・・すると、いるじゃないですか!やっぱり!


 その団体の名は、NPOジャズネットワーク(音楽を活用した地域おこし団体)。初めて会ったリーダー河端氏の風貌は、一発で「タダモノデハナイ」と私に直感させました。無精ひげを生やし、鋭い目と貫禄バッチリなお腹をした男性です。
 その夜は、彼や彼を慕うメンバーと時間を忘れて「地域とは・・・」「町とは・・・」「生まれ来る子供達のために、俺たちは今何をするべきなのか・・・」なんて話していると、なんとメチャクチャに目標が一致しているじゃないですか!


 夜なので当然のごとく委託契約どころか、直属の上司の了解さえとっていないのですが、私は彼にいいました。

 「河端さん、俺は絶対にあんたと組みたい。」
そして、河端さんも
 「俺も、変わった県職員のあんたとなら一緒にやる!」
と、まるで青春ドラマのような熱いシーンを経て、青森県のおっさん二人は「地域おこし」のために、何も知らず一緒に五所川原市のある集落座談会に飛び込むことになるのです。
※もちろん、委託契約等、真面目な手続きを踏んだ後ですよ。


 しかし、座談会で待っていたのは、大人の社会でいう「現実」だったのです。


to be continued.


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お祭りには、情報がいっぱい!(その4)

2015.03.31

▼前回ブログはこちら

【似顔絵を描く】
 はっきり言って、私は絵を描くのが苦手です。でも、私はプロではありませんから、堂々と下手くそな絵を描こうと思います。どうせ自分しか見ない備忘録なのですから。
 正しい似顔絵の描き方は、書店にいって「美術コーナー」なんかで勉強してもらうと良いと思うのですが、私的には、ざっくりと、輪郭、目、鼻、口とイメージだけ合っていれば、それでヨシとしてます。これなら、10秒で似顔絵が描けます。
テーブルの下で私がコソコソやっているのは、似顔絵を描いていることが多いのです
( ̄∇ ̄;)A


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いつも朗らかな上司、工藤幸宗さん


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黒石4Hクラブで大人気の成田祐一会長


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自分を描くとこんな感じ・・・
*もっといい写真なかったのかよ~( ̄∇ ̄;)A


【こうやって相手の記憶に「自分を」残す】
 せっかく人と出会ったのです。しっかりと相手の記憶に残ってもらう必要があります。
別の機会にどこかの集会所へ行った際、みんなが私をみながら、どこかで見たことあるな~って、顔をしてたら、比較的短時間に、その組織にすんなり溶け込めます。ホントです。


「そういえば、おめ(君は)、この前、スコップ三味線、やってなかった?」
と聞かれたら、
「そうです!スコップ三味線やってたのは、私です!」
ってやるだけで、もう、いきなり、その集落の仲間です。


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スコップ三味線をやってる私と4Hクラブのメンバーら


*スコップ三味線 :津軽三味線の演奏をバックに、栓抜きでスコップを叩く、津軽の「新」人気芸能の一つ。
一見、簡単そうに見えるが、上手く演奏しているようにみせるには、かなりの練習が必要。
「スコップ三味線のプロ」となると、昇華された神業とも言えるパフォーマンスを見せてくれる。
「後光が差しているのが本当に見える!」と、酔ったあるお爺さまが話していました。


【さて、見つかったものは・・・】
 さぁ、JAのお祭り、納涼会がどれほど情報の宝庫であるかお分かりいただけたでしょうか?
 実は、この話、ある年の8月に実際に行われた、ある農協の納涼会を元に書いています。
この時、出会った50才代の男性は、その1カ月後、地域の担い手として、普及として深くかかわりを持つ人となり、それほど遠くなく、集落の半分近くの水田を担う人ととなるのです。

 また、別のテーブルに座っていた親戚グループの男性リーダーは、実は別の場面で良く知っている元気なお母さんの旦那さんだとわかり、一気に信頼関係を築くことができました。

 さらに、その場にいた20代の青年は、その2カ月後、4Hクラブのメンバーになり、その上、近くお嫁さんになる自分の彼女まで4Hのメンバーに引き込んでくるという、ものすごい活躍をしてくれるのです。

 どうですか? JAの納涼会へ参加したくなりましたか? ちょっとの勇気とやり方で、そこは、情報の宝庫になるのです。


【ブログの最後に】
 普及指導員は、とても良い仕事です。いろんな人に会えるし、地域の人と共にさまざまな課題を解決できるのですから。
 一年間、私のつたない文章にお付き合いいただきました皆様、ありがとうございました。m(_"_)m
 楽しいブログ生活でした。


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 前回に引き続き、とてもステキなイラストを提供してくれたのは、青森県が誇る人気コラムニスト、山田スイッチ先生です。


●山田スイッチ ホームページ
青森県在住コラムニスト。ゆるキャラである「土偶のOLドグ子」の発案者。著書に「しあわせスイッチ」などがある。


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筆者が趣味で撮影したOLドグ子さん近影

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